編集長が語る!講義の見どころ
躍進するインドの可能性と課題/島田晴雄先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/08/26
皆さまこんにちは。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
「これからはインドの時代」。そんな声を聞くこともあります。インドのイメージは一昔前とは一変しています。とくにIT産業でインドの存在感は極めて大きくなり、シリコンバレーなどでも、中国系とインド系の人材が圧倒的多数を占めています。米中対立のなかで、今後、さらにますますインドの重要性が増すかもしれません。
日本もインドとの関係構築を積極的に進めています。地下鉄や新幹線のプロジェクトが進んでいることは、よく報道などでも取り上げられるところですし、外交的にも対中戦略などの見地から関係強化が図られています。
果たして、インドとはどのような国で、どのような可能性と課題があるのか。それを島田晴雄先生(東京都公立大学法人理事長/テンミニッツTV副座長)が、実際にインドに足を運んだうえで講義してくださいました。膨大な下調べをされたうえで実際に現地を歩かれた島田先生の講義内容は、最新のビジネス状況から宗教、歴史まで多岐にわたります。この講義を視聴しただけで、インドの現況が手に取るようにわかる名講義です。
◆島田晴雄:躍進するインドIT産業の可能性と課題(全8話)
(1)下請けから世界の中心へ
インドはなぜ世界有数のIT産業の拠点へと成長したのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3413&referer=push_mm_rcm1
島田先生がインドを訪問されたのは2020年1月末から2月上旬にかけてのこと。島田先生にとって4回目のインド訪問とのことですが、講義の冒頭で「これまでの訪問と比較しても、インドは飛躍的に発展していました。米中に次ぐ超大国になる可能性が、そろそろ現実味を帯びてきたと思うほどでした」とおっしゃいます。インドでIT産業といえばバンガロールが高名ですが、島田先生は「近年では、インド全土に点在する主要都市にIT産業が集積しつつあり、インドのIT立国化ともいうべき現象が進んでいます」とおっしゃいます。
インドのIT業界の規模は、直接雇用だけでも約370万人(日本は約90万人)。インド工科大学(IIT)や国立工科大(NIT)など、コンピュータ科学の分野で世界有数の大学をはじめ理工系の大学新卒が毎年100万人以上輩出され、そのうち20万人がIT業界に就職しているとのこと。IT人材的にもインドは極めて有望です。
スタートアップ企業も目覚ましく増えているとのこと。2010年には480社だったものが、2016年には4800社となり、2020年には1万社を超えるといわれているそうです。
よく知られているように、インドのIT産業はアメリカの下請け的に発展していきました。時差が13時間あるので、アメリカで終業時間までにインドの会社に仕事を振ると、翌朝には出来上がっていて効率がいい。そのようなかたちで下請け的に仕事をするなかでノウハウを蓄積し、徐々に上流の業務に取り組むようになり、リープフロッグ(カエル跳び)のように先進国を追い越していくイノベーションも見られるようになりました。
島田先生が「インド人が世界で大活躍する理由」として挙げられるのは、「インドという非常に多様な社会の特殊性」です。インド社会は、多民族・多言語・多宗教で、さまざまな地域特性があり、厳しいカースト格差もあるなど、世界でも類を見ない社会です。さまざまな問題が山積した複雑な社会の激しい選抜競争を生き抜かなければ、出世する道がない。そのことを島田先生は次のように印象深く語ります。
「インドは通常の一つの国というよりも、それ自体複雑で容赦のない超国家、あるいはサブ世界といえる社会だと思います。そのなかで激しい競争を生き抜いて、勝ち抜いていくことは、ワールドカップの最も激しい世界予選を勝ち抜くことに似ていると思うのです。ですから、インド社会の選抜競争を生き抜いた人材は、世界競争のなかでも出世する確率が非常に高いといえると思います」
島田先生は、その複雑なインドを読み解くべく、宗教問題やイギリスからの独立の歴史など、まさにインドを知るべき基本を、本講義でていねいにご紹介くださいます。
たとえば、インドの強みは「イギリスの植民地だったので、英語人材が多いこと」などといわれますが、島田先生によれば、「英語を第1言語とする人は、国勢調査では0.02パーセントで、23万人にすぎません」。第2、第3言語として、英語を用いる人を含めても、人口の10パーセント強、約1.2億人程度で、このうち流暢(りゅうちょう)に話せるのは4パーセント前後。英語はエリートの共通語なので、子どもを出世させようと思う家庭では、英語教育の学校に通わせるのがブームだそうです。
また、インドには相続税がないことや、さらにITのような新しい産業は旧来のカースト制度の枠ではとらえられないために、かつて低いカーストといわれた階層の優秀な人たちが努力を重ねて激しい競争のなかで勝ち抜いていく姿なども、次々と紹介されます。
このような事実の指摘は、まさに現地をご覧になった島田先生ならではのものでしょう。
島田先生は、「インドには大変な可能性があることは、周知のところなのですが、インドの経済発展の経緯を回顧すると、中国より約15年遅れて、中国の明日を追っていると専門家は見ています」とおっしゃいます。まさにこれから伸びゆくインドの姿を知るために、ぜひご受講いただきたい講義です。
(※アドレス再掲)
◆島田晴雄:躍進するインドIT産業の可能性と課題(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3413&referer=push_mm_rcm2
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レッツトライ! 10秒クイズ
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答えは以下にてご確認ください。
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1999&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。
今回のメルマガ、いかがでしたか。視野を世界に広げると、興味深い、学ぶとなる国、事柄、人物はまだまだたくさんいるということではないでしょうか。
さて、ここで報告がございます。突然ですが、毎週水曜日配信の当メルマガ、おかげさまで好評につき、来月9月から毎週火曜日と金曜日の週2回配信となることが決まりました。つまり、学びのヒント、あるいは知的好奇心をくすぐるツボの刺激が2倍にアップするということです。いや、2倍ではなく、2乗といえるかもしれません。
ということで、次回の配信日は9月1日(火)です。今度はどんな面白い講義を紹介してくれるのでしょうか。お楽しみに。
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