編集長が語る!講義の見どころ
パワハラ、セクハラ…その本質と対処法とは?/特集&青島未佳先生【テンミニッツTV】

2023/08/25

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、ケアハラ……。昨今、「ハラスメント」について、様々な指摘や議論がなされています。

実は最近、労働基準監督署への「ハラスメント」の相談件数も、うなぎのぼりとのこと。

実際には、過去のほうがハラスメントが激しかった部分もあろうかと思いますが、相談件数がそれだけ増えているということは、社会全体でも働く場でも、それだけ意識が先鋭化しているということでしょう。

このようなとき、単なるスキル的な「対処法」だけを知っても、ほとんど意味はありません。この問題をより本質的に考えるとどうなるのか。さらに、コンプライアンスなど、様々な「働く場」のリスクをどう考えるべきか。

これらの「働く場のリスク」は、ともすると後ろ向きなテーマだと思われがちですが、むしろ「攻め」の姿勢でリスクを管理していくことが必要ではないでしょうか。

今回の特集では、社会のあり方から働く場のリスクまで、深く考えることができる講義を集めてみました。


■特集:組織を活性化する「攻めのリスク管理」

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=209&referer=push_mm_feat

・青島美佳:増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴

・青島美佳:なぜ今「心理的安全性」なのか、注目を集める背景に迫る

・国廣正:「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質

・国廣正:なぜ企業はコンプライアンスの本質から外れてしまうのか?

・田村潤:オーバーアナリシス、オーバープランニングを「直観」で破る

・楠木建:『逆・タイムマシン経営論』が訴える「同時代性の罠」とは

・河合弘之:株主代表訴訟とは?…なぜ東電は13兆円賠償判決となったか

・岡田有策:現場に疲弊感が押し付けられる日本の安全管理の実態


■講座のみどころ:ハラスメント防止に向けて大切なこととは?(青島未佳先生)

特集のなかから、青島美佳先生(一般社団法人チーム力開発研究所理事)に、パワハラやセクハラなどの「ハラスメント」の現状と、その本質的な対処法について教えていただいた講義をピックアップします。

上でも書いたように、パワハラなどの「ハラスメント」について、労働基準監督署への相談件数も激増しているとのこと。

2020年6月に「パワハラ防止法」が施行されて、各企業には、ハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが義務化されましたし、2022年4月には中小企業にも防止措置が義務化されています。

このような状況下、ハラスメントについて本質をしっかりと理解し、手を打っていくにはどうしたらいいのか。その点について青島先生は、真正面からお話しくださいました。

◆青島美佳:ハラスメント防止に向けた風土づくり(全5話)
(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5024&referer=push_mm_rcm1

青島先生は、ハラスメントを助長している組織風土には、次のような特徴があるとおっしゃいます。

1:全体主義
2:無関心風土
3:属人思考風土
4:圧力的雰囲気
5:心理的安全性の欠如

たとえば、1つめ「全体主義」についての分析で青島先生が指摘されるのが、ナチスのホロコーストの罪でイスラエルのモサドに逮捕され、1961年に死刑判決が下されたアイヒマンです。

青島先生は、ハンナ・アーレントの『エルサレムのアイヒマン』での分析を引きます。あのような残忍な事件を起こしているにもかかわらず、アイヒマンは一般的なサラリーマンの中でも気の弱いようなタイプの人だった。そういう人間が、なぜ残忍な事件の首謀者ではなく責任者となったのか。

青島先生はこうおっしゃいます。

《書籍にも書いていますが、どんなに普通の人間であっても、または善意を持った人だとしても、こうした権威への服従が起こってしまうと。そんなところが人間の弱さではないかと考えられていて、そのように権威への服従をさせてしまうのが、全体主義の悪さです。

本人の善意や思想に関係なく、全体主義においては共同体が持つ思想に侵されていってしまう。どんなにいい思想や普通の考えを持っていた人間でも、悪の思想に侵されてしまう。そうした観点から、全体主義というものは、ハラスメントを助長しやすい文化にある根底といいますか、一つの要因になっていると考えられるかと思っています》

権威・権力に服従するあまりに、悪の思想に侵されてしまう。ホロコーストのような悲劇でなくとも、たとえば、一時期流行した「お酒の一気飲み」のような風潮、あるいは組織内での「いじめ」なども、同じ構図になりがちであろうことは、誰もが痛感することでしょう。

3つめの「属人思考風土」についてのご分析も、とても興味深いものです。

《属人風土は、社会学者・心理学者の岡本浩一氏が、いわゆる企業の不正や不祥事を研究する対象の概念として提唱してきた思考です。基本的には、意思決定や何かを決める際において、何のためにやっているのかということではなく、むしろ誰が言ったかということが基準となってしまうような風土のことをいっています》

これも、とりわけ上下関係やそれに伴う権力・権限が明確な企業社会では、まことに「ありがち」なことといえましょう。

このような分析のうえで、青島先生が詳述していくのが「心理的安全性」です。

「心理的安全性」とは、対人的なリスクのある行動を取っても、このチームは安全だとメンバーみんなが信じている状態、またはそういった信念が共有されている状態のことだと青島先生はおっしゃいます。

そのうえで、次のように指摘されます。

《ハラスメントが起きている組織の中では、当然心理的安全性もないわけです。それは、その中でご自身が無知・無能と思われたくない、ネガティブだと思われたらどうしようという不安が働いてしまっているところにあるかと思っています》

《一方で、やはり心理的安全性がないことによって、チームで見守りや予防するような環境下に置かれていないため、ご自身も言えないし、周りも見過ごすのです。結果的にハラスメント自体が抑止されることなく横行もしくは助長されていくところにつながってしまう》

これらも、まことに身に染みる話です。

第3話以降で青島先生は、スーパーマン上司のパワハラで自死を選んだ新入社員の事例、1割の従業員が休職してしまった工場の事例など具体例を挙げながら、わかりやすくハラスメントを引き起こすリーダーの行動や心理の特徴についてご説明くださいます。

そのうえで、心理的安全性を高める「セキュアベースリーダーシップ」について話が進んでいきます。

この「セキュアベースリーダーシップ」とは、「守られているという感覚と安心感を与え、思いやりを示すと同時に、ものごとに励み、冒険し、挑戦を求める意欲とエネルギーの源となる」リーダーシップのことです。

このことを考えるときに重要になるのが、ついつい自分が見たいように見てしまう「心理的バイアス」です。「あいつはこうだ」「こうに違いない」と臆断してしまう。これも誰しも陥りがちなところでしょう。

このようなバイアスに陥らないために、どうすればいいかも青島先生は第5話でご教示くださいます。

企業で行なわれるハラスメント研修などでは、「これはNGワード」とか「こういう態度はダメ」などといった対処療法的な指導が行なわれがちです。しかし、この講義を見ると、それがほとんど意味をなさないことがわかってきます。本質からしっかりと考える講義、ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:組織を活性化する「攻めのリスク管理」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=209&referer=push_mm_feat

◆青島美佳:ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5024&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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もし吾がプリゴジンならどうしたろうメフィストフェレスの刃の上で

幾人も殺す僭主の傍らでメフィストフェレスがほくそえむ夜

プリゴジン氏の墜落死。その報を聞いて脳裏に浮かんだのは、やはり納富信留先生が語る僭主の地獄図でした。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4714&referer=push_mm_tanka