プラトン『ポリテイア(国家)』を読む
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
理想的なポリスから劣悪な社会への堕落が起こる過程で、最も重要なのは「民主制」を経て最後の「僭主制」に移行する段階である。なぜ最も重要なのかというと、そもそも『ポリテイア』の問題提起が「僭主制が一番いい」という議論から始まっていたからである。民主制と僭主制は一見、正反対のように思えるが、じつは民主制の悪い部分に光が当たることで僭主制へと転換する。プラトンはそれを最後の一線とし、「リュカイオス・ゼウス神殿で人肉を食べる」伝説になぞらえる。(全16話中第14話)
時間:12分22秒
収録日:2022年9月27日
追加日:2023年3月17日
≪全文≫

●民主制から僭主制へ――自由が隷属に転換するメカニズム


 最善のポリスからどうやって堕落が起こり、劣悪な社会へ、もっというと不正な社会へと転落していくのかというプロセスを描く第8巻、第9巻の議論です。「優秀者支配制」から「名誉支配制」、「寡頭制」(一部の人が権力を持つ体制)、「民主制」と下りてきました。ここから最後の段階に行くステップが一番重要です。なぜかというと、そもそも『ポリテイア』の問題提起というのは、「僭主制が一番いいのだ」という議論から始まっていたからです。

 「僭主」は、普段あまり使わないかもしれませんが、「テュラノス」という単語です。「ティラノサウルス」の語源でもあり、「非合法的に権力を得た者」という意味です。親から継いだような形でなく、自分で権力を取ってしまった者を指します。実際には、ペイシストラトスのようにそれなりにいい政治家もいました。基本は、「非合法的に権力を取ってしまった人」という意味の単語です。現代的にいえば、専制君主や独裁者と訳しても構わないと思います。専制君主にしても独裁者にしても、どの社会にもありましたし、現代でも存在します。

 では、民主制から僭主制へという正反対の流れが、どうやって起こるのでしょうか。市民全員に参政権があり、みんなが自由な生活を謳歌して、やりたいことを発揮し、「自分は自由であり、それを謳歌している」ということと、一人の独裁者が全てをコントロールして、言うことを聞かせているということは、正反対に見えますよね。でも、歴史の教訓がいうように、この2つは裏と表です。プラトンが言う次のせりふは非常に示唆的です。こう言っています。

 「過度の自由が過度の隷属に転換する」(第8巻 564A)

 極端な自由は極端な隷属に一気に転換するということです。これは例えば20世紀の歴史でいうと、ワイマール憲法からナチス・ドイツに、その制度を使いながら行ってしまったところ、あるいは大正デモクラシーからそのまま戦前日本の軍国主義に突入してしまったところで、私たちもかなり経験のあるところだと思います。つまり正反対の位置ではなく、民主制と呼ばれながらも悪い面が発揮されたとき、その指導者は僭主(テュラノス)に変身するということです。テュラノスは、今から説明するように、狼に喩えられます。


●民主制の指導者と僭主の間に横たわる大きな一線


 民...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
本番に向けた「心と身体の整え方」(1)ディテールにこだわる
集中のスイッチを入れる方法は意識からと身体からの2通り
為末大
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政
「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(2)吉田昌郎所長の機転と決断
なぜ部下たちは「吉田昌郎所長となら死ねる」と語ったのか
門田隆将
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
インフレの行方…歴史から将来を予測する(3)戦後の日本経済と海外のインフレ率
オイルショック、バブル…過去と現在の環境の共通点は?
養田功一郎
こどもと学ぶ戦争と平和(3)「小さな外交官」と少年兵の問題
外国が攻めてきたらどうすればいい?戦争と少年兵の問題
小原雅博
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
『三国志』から見た卑弥呼(1)『魏志倭人伝』の邪馬台国
異民族の記述としては異例な『魏志倭人伝』と邪馬台国
渡邉義浩
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二