世界の語り方、日本の語り方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
「本質主義」に陥らないよう、いかにして日本を語るのか
第2話へ進む
今後身に付けるべき知性として「新しい語り方」を考える
世界の語り方、日本の語り方(1)なぜ「語り方」なのか
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
時代の転換に伴い、日本哲学の復権が叫ばれている。AIの時代に直面する日本人が今後身に付けるべき知性としての「語り方」とは何だろうか。シリーズ第一話の今回は、中島隆博氏の近著『世界の語り方』と『日本を解き放つ』を紹介しながら、「新しい語り方」について考えていく。(2019年2月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「世界の語り方、日本の語り方」より、全9話中第1話)
時間:13分41秒
収録日:2019年2月14日
追加日:2019年7月25日
≪全文≫

●『世界の語り方』と『日本を解き放つ』という2冊の哲学書


 左の2冊は、2018年9月に出版した『世界の語り方』(東京大学出版会)という本です。副題が付いていて、1巻は「心と存在」、2巻は「言語と倫理」。読者にとって「語り方とは、いったいどういうことだろう」と不思議なタイトルだろうと思います。

 右側のもう1冊は『日本を解き放つ』(東京大学出版会)で、2019年2月に出ました。おかげさまで好評をいただいているようです。こちらは小林康夫氏との対談ですが、放談といった方がいいかもしれません。日本をめぐって、哲学者がいったいどういうアプローチをするのかということを皆さんと共有したいと思って、つくった本です。


●なぜ「語り方」なのか~“what question”を問うてみる~


 『世界の語り方』の本では何を考えているのでしょうか。私たちはしばしば「何であるのか」「これは何か」という、いわゆる“what question”を問うことがあります。特に、本質が大事だということになると、「そのものの本質とは何か」という問いを立てたくなります。

 問いといってもいろいろな問いが考えられますが、「何であるのか」というwhat questionの問いは、いったい何に対して有効な問いなのか。哲学では、こんなことを考えようとします。問いといっても全てに有効なわけではないだろう。問いがうまく働く分野はやはり限られるのではないかといったことです。

 簡単な例を挙げてみましょう。「GAFAとは何ですか」と問われると、「Google、Apple、Facebook、Amazonの略称です」と答える。この場合、単に定義のことを説明すればいいので、what questionは有効に働きます。でも、例えば「未来は何ですか」と問うときにも、what questionは利いてくるのだろうか。ここが疑問になります。

 例えば、ここにペットボトルがあります。「これは何ですか」「ミネラルウォーターです」。この問いかけは有効で、われわれに理解できます。この問いを可能にしているのは、ペットボトルと私の間の距離です。どなたがこれについて問うても、答えが一緒で変わらない。それは、お互いが適度な距離を取れているからです。

 GAFAの例もそうで、GAFAと私がそれほど深く関わっているわけではありません。もちろん日常的に検索をしたりAmazonで買...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏