世界の語り方、日本の語り方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日本文化には歌や舞いで「からだ」が変容する瞬間がある
世界の語り方、日本の語り方(4)〈からだ〉を解き放つ
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
物質的アルゴリズムに支配される日常の「からだ」を解き放つ方法として、古来、歌や舞いはあったのではないか。今回は能の歩みや『荘子』を軸に、日本文化が伝える<からだ>を見直していく。(2019年2月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「世界の語り方、日本の語り方」より、全9話中第4話)
時間:5分29秒
収録日:2019年2月14日
追加日:2019年7月31日
≪全文≫

●日本文化には歌や舞いで「からだ」が変容を遂げる瞬間がある


 第2部は「〈からだ〉を解き放つ」です。われわれは、からだも一つの物体的なもの、他から切り離されているものとして考えます。でも、本当にそうなのか。からだというのは、そういう物質的・生物学的なアルゴリズムに支配されるだけの存在なのか。そうではないのではないか。からだは、もう少し広い広がりを持ってしまっているものではないかを問うていきます。

 例えば、歌うとか舞うということ。本書冒頭に、小林康夫氏がインドで踊らせた踊りが恐ろしいことを引き起こしたエピソードがあるとお話ししました。われわれは、「それはたまたまでしょう」「たまたまそういう天気だったからだ」と、すぐに考えます。でも、本当にそうなのでしょうか。

 私たちは古来、歌ったり舞ったりしてきました。あれは本当は何をしているのでしょうか。別に歌おうが舞おうが、このからだは一緒だと考えてもいいわけですが、歌ったり舞ったりすることによって、実はからだが、ある変容を遂げる瞬間があるのではないでしょうか。

 そういうことに意識的だった、あるいは気付いていたということが、日本の文化の中にはあるのではないでしょうか。


●彼岸を往来するからだが手に入れる「自由」


 例えば、お能がそうです。本書では観世清和氏の「檜垣」のお写真を頂戴しましたが、お能とは何をしているのでしょう。

 お能では、極めてゆっくり歩を進めていく。実はこれは、この世界からあの世界へ、渡っているわけです。もちろん能のことを何も知らない人は、「何かゆっくり動いているね」と思うだけですが、でも、そこにはこの世界の、身体を超えたものが織り込まれているわけです。

 そういう舞というものを、私たちは無意味な身体動作と考えていいのだろうか。そうではないのではないか。また逆に、からだをある仕方で変容させることによって、ある自由を私たちは手に入れることができるのではないか。生物学的なアルゴリズムに支配された身体から、一瞬でも解き放たれる瞬間があるのではないか。そういった議論を少し交わしてみました。


●穴を開けられた「混沌」と再生の可能性


 議論の中でたまたま出てきたのが、『荘子』の中に出てくる「渾沌」の物語です。

 渾沌という帝がシュクとコツ(忽)という北と南の帝をもてなした。喜んだ二人は、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉
『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治