世界の語り方、日本の語り方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「本質主義」に陥らないよう、いかにして日本を語るのか
世界の語り方、日本の語り方(2)日本の語り方
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
都合よく本質を立て物事を容易に理解する「本質主義」は、ここ半世紀の間、問い直されている。真に本質を捉えるために、われわれはどう語るべきなのか。(2019年2月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「世界の語り方、日本の語り方」より、全9話中第2話)
時間:12分57秒
収録日:2019年2月14日
追加日:2019年7月25日
≪全文≫

●「本質主義」を避け、対話の形式に賭けてみる


 では、日本の語り方から始めたいと思います。資料には「『本質主義』に陥らないように注意しながら、いかにして『日本』を語るのか?」と書きました。多くの場合、「日本とはこうだ」という本質を語る言説が多く、バリエーションが多様にあります。相いれるものもあれば、まったく相いれないものもあります。

 「本質主義」は、この50年ぐらいの間、繰り返し問い直されてきました。そんなに簡単に本質を立てるのはやめておいた方がいいのではないか。それはわれわれの思考の自由を奪ってしまうのではないか。それよりも、もっと思考を自由に解き放つために、本質を立てずにその事柄を考え、問うやり方がいいのではないかと論じられてきたわけです。

 われわれもそのラインに乗っているわけで、『日本を解き放つ』の本を作ったときに、何か決まった「日本」が前提されていたわけではありません。そうではなく、日本に対する私たちのイメージがいろいろとある。そういったものを取り上げながら、いかにして日本を語れば、日本に対するチャンスを開くことができるのか。日本の未来をもっと豊かなものにできるのかといったことを考えてみたわけです。

 この本は小林康夫氏との対話にしましたが、多くの本は一人の著者が語るmonologue形式です。著者の世界観が隅々まで表現されるのが、大体近代的な本の作り方です。それはそれで面白く、自分が隅々まで理解してその本を支配できているような感覚はあります。しかし、dialogue(対話)をしてみると、それはできないのです。

 小林氏と私はいろいろな話をしましたけれども、「まさか自分がこんなことを考えるとは」「まさか自分がこんなことを口にするとは」という局面がたくさん出てきました。まったく想像していなかったのに、相手の言葉に触発されて、その場で思考が駆動し始める。こういう感覚がdialogueにはあるわけで、それ自体が実は日本の語り方において極めて重要なのではないかと思いました。


●ことばとからだとこころは別ものではない


 目次はこのようになっているので、ざっとご覧いただければと思います。

 「世界の未来に向かって」というのが、小林氏の最初の「はじめに」です。私たちはある未来を開こう、考え...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎