世界の語り方、日本の語り方
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知識を知性に変えるために必要な「変容」とは
世界の語り方、日本の語り方(9)質疑応答
哲学と生き方
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
知識を知性に変える「変容」とは、どのようなことを指すのか。また、世阿弥の記した「初心」とは。講演後に上がったいくつかの質問をもとに、思考と見識の共同体験がより深められていった。(2019年2月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「世界の語り方、日本の語り方」より、全9話中第9話)
時間:7分20秒
収録日:2019年2月14日
追加日:2019年8月27日
≪全文≫

●知性を働かせるのに必要な「変容」とは?


質問 変容について先生のお考えをうかがいたい。それは行動や思考、価値観なども含めた変化を指すものなのか、それとも「色即是空」のように次元を超えたものなのか。

中島 変容することは、いわゆるアバターではないと思っています。服を着替え、AからBに変わるというのではなく、その人とその人を含む世界自体が変容していく。また、同時にその人が関わる人たちも変わっていく。そのようなダイナミックなものだと思っているわけです。

 例えば、英語で人間のことを“human being”といいます。“being”だから存在です。それに対して、私は実は“human becoming”であって、人間は人間になっていく存在ではないかと考えています。犬は終始犬なので、その点でずいぶん立派だと思いますが、人間というものは、人間的になっていく「変容」を経ないと、実はなかなか人間になれない。そのような面倒くさい存在だという気がするのです。

 人間が人間的なのは当たり前ではないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それほど簡単なことでもありません。人間が人間的になるためには、多分いろいろな努力をしなければいけない。例えば、お能の話をうかがいましたけれども、あのように舞ったりすることを通じて、やはり身体に対する感覚が変わってくるわけです。それによって、別の身体と別の世界との付き合い方を手に入れていくのだと思います。それによって、人間は自由になっていく。自由になること自体が、人間のある種の条件なのかという気がしています。

 そのように、深い変容が人間にはあるのではないか。しかも、それは“human co-becoming”で、ともに変化していくようなことが絶えずあるということです。そうでないと、心をともにすることも、言葉をともにすることもできないのではないかと思っています。


●会ったことのない「国家」の変容をどう捉えるか?


質問 個人的な変容だけでなく集団の変容もあるだろうと思う。コミュニティや社会、国家なども変容するといえるのだろうか。

中島:私は、どのレイヤーに関してもそれはいえると思っています。ただ、例えば国家となると、かなり規模が大きくなる。国家が変わるとは一体どういうことなのだろうと思うわけです。われわれは、国家に会ったことはないでしょう。ある種の集団的な想像力の中で、国家があるだけで...

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