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文系と理系をごちゃ混ぜにしたことで共有できる「語り方」

世界の語り方、日本の語り方(7)「心と存在」の語り方

中島隆博
東京大学東洋文化研究所長・教授
概要・テキスト
『世界の語り方1:心と存在』
(東大EMP編集、中島隆博編集、東京大学出版会)
東大EMP(東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)に集う多彩な若手学者たちが学際的・文理融合的な対話を積み重ねていった『世界の語り方』。ここでは第1巻「心と存在」から一部を振り返る。(2019年2月14日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「世界の語り方、日本の語り方」より、全9話中第7話)
時間:07:50
収録日:2019/02/14
追加日:2019/08/14
キーワード:
≪全文≫

●文系と理系の壁を超えて共有できる「語り方」へ


 もう一つの取り組みは、世界の語り方ということです。ここでは「心、存在、言語、倫理」をどう語るのかということで、座談会をしました。

 なぜこんなことをしたかというと、いわゆる文系と理系をごちゃ混ぜにしたかったのです。例えば、素粒子を研究している先生がいますが、その先生に向けて私が「素粒子とは何ですか?」と聞いたところで、意味がないというか、つらくなってくると思います。きっと非常に難しいことを言われて、熱が出てしまうでしょう。それはもう対話ではなくなり、「教えるー教えられる」関係に入るからで、それでは面白くないと思ったのです。

 では、どうすれば違うジャンルの人たち同士が話ができるのかというと、やはり語り方次第なのです。

 素粒子について、私はよく知らない。素粒子が何なのかを言われても、よく分からない。でも、その先生が素粒子をどう語るのかは理解できるかもしれない。「素粒子とは、こう、こう、こうである」と語られる場合もありますが、「素粒子を語るのって難しいんだよね。ここに問題があるんだよね」と言われたら、それは分かります。素粒子が何なのか根本的には分からなくても、です。今どう語っていくのか。そこにどんなチャンス、あるいは限界があるのか。それらのことは分かるので、それをやってみようと思ったのです。

 そうすれば、学問の違いを超えて議論ができるではないか。「素粒子とは何か」となると、私などはお手上げで「そんなこと、知らんがね」となってしまいます。それには量子力学などを理解しなければいけないのだろうけれども、それは難しい。しかも量子力学には確率が大事であるらしく、その確率も、高校までに習った確率とはどうも違っているらしい。そのようになると、もう頭がついていかない。しかし、どうしてそういう発想をしているのか。どういうアプローチをしているのか。それは共有できます。それをやってみたいと思ったわけです。


●数学者が「心」を語ると、集団性が見えてきた


 まずは、心の語り方です。心について、皆さんはどういう語り方をなさいますか、ということを聞いていきました。

 ここに、合原一幸氏の例を出しました。合原氏は数学者ですが、非常に面白い発言...
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