編集長が語る!講義の見どころ
江戸史と古代ローマ史で読み解く国家の盛衰/本村凌二先生×中村彰彦先生【テンミニッツTV】

2024/05/14

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

異なる文化を比較することで、物事の本質がグッと見えてくることがあります。

その点、まことに興味深いのが「江戸時代の江戸」と「古代ローマ」との比較です。本日は、本村凌二先生(東京大学名誉教授)と中村彰彦先生(歴史作家)のご対談で、江戸時代と古代ローマの比較を縦横無尽に論じていただいた講義を紹介いたします。

◆本村凌二×中村彰彦:ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(全8話)
(1)父祖の遺風
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3105&referer=push_mm_rcm1

徳川幕府も古代ローマも「長く続いた」統治機構でした。徳川幕府が260年もの平和な時代を築いたことは、皆さま知ってのとおり。「庶民が(当時の世界で比較した場合)世界一幸せだった社会」だともいわれます。

一方、古代ローマも「共和制」が500年も続き、しかも、あれだけ広大な版図を築き上げ、長期間にわたり維持し続けています。

両者とも、世界史上で特筆すべき「素晴らしい社会」だったことは間違いないでしょう。果たして、両者に共通するものとは何なのか。

本村凌二先生のローマ史は、俯瞰的な視点から歴史の流れの面白さや、歴史の因果応報の核心をみごとに描いていく絶品のもの。

また、中村彰彦先生は『二つの山河』で第111回(1994年上半期)直木賞を受賞されていますが、資料を丹念に読み込んで人物や事件の本質を真摯に描き出していく作風で、多くの歴史ファンの支持を集めています。

そんな両先生が語り合った本講義から、江戸とローマは想像以上に共通するものが多いことが見えてきます。「父祖の遺風」に代表される精神性の背骨、インフラ整備、庶民を楽しませる工夫、いかに権力の腐敗を防止するか、人材登用の知恵……。

江戸と古代ローマを並べて論じることで、日本人にとっては、古代ローマの本質が身近なものになってきます。「なるほど、ここが共通なのか」と思わず膝を打つことばかり。

古代ローマも江戸時代も、さまざまな「知」や「文化」が育まれた、とても興味深い時代ですが、なぜ、そのような社会が実現したのかが腑に落ちます。

ちなみに、各講義のタイトルは以下のようになっています。

■ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(全8話)

◆第1話:父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか

◆第2話:インフラ整備
「水へのこだわり」から生まれたアッピア水道と玉川上水

◆第3話:剣闘士と花見
ローマの剣闘士と江戸の花見は庶民の生活を楽しませるため

◆第4話:法とリテラシー
江戸幕府が260年続いた理由…平和な世に暴君をつくらず

◆第5話:人材登用制度
江戸時代、少年期に出世を振り分けた「御番入り」とは

◆第6話:衰退の原因
日本が「外交下手」といわれる理由を幕末から読み解く

◆第7話:敗者と人材
古代ローマの敗戦将軍の扱いに通じる幕末期の敗者の処遇

◆第8話:現代日本の問題
江戸史でいえば「文化・文政」時代のような現代日本

たとえば、第5話で語られる「人材登用」。封建制・身分制の「弊害」ばかりが強調されがちな「江戸時代」ですが、実は、長期政権を維持するために、様々な見事な制度が導入されていたのです。

北町奉行と南町奉行に象徴されるように、重要な役職に複数を任命する相互監視と牽制のあり方も行なわれていました。

また、優秀な人材を少年期から確保し教育するために「御番入り」という仕組みもありました。少年期に一種の知能検査を行なって、見どころのある者は、書院番組や御小姓番組などの組織に入れ、官僚教育を始めたのです。

番入りのなかでも、上記の書院番組と御小姓番組はベスト2でした。それぞれで一生懸命にやると、やがて数千石以上の収入が約束されるポストに就ける可能性が高まるとのこと。

10歳そこそこの年齢で、その選抜が行なわれるわけですが、中村彰彦先生によれば選ばれる条件は、次のようなことだったようです。

《頭がいい、気が利く、腹が据わっている、武芸に練達している。あと、書道がうまいのも大事だし、挙措動作が優美である。踊りなども身につけておいたほうが「風情のいい」少年になるとか、いろいろあります》

現代に通じる項目も多々ありますが、いやはや、なかなかに大変です。

このような興味深い話が、各話で次々にテンポよく繰り出されるのは、まことに圧巻です。

江戸とローマの「成功の本質」は、現代社会に対しても多くのヒントを投げかけます。本村先生、中村先生の「知の蓄積」が惜しげもなく飛び交い、知的好奇心が大いに刺激される名講義。ぜひご覧いただければ幸いです。

なお、本講義で興味を持たれた方は、本村先生が別途「江戸とローマ」という全10シリーズの講義を展開されていますので、そちらもぜひご覧ください。

■江戸とローマ

◆花見と剣闘士
◆テルマエと浮世風呂
◆諷刺詩と川柳・狂歌
◆図書館と貸本屋
◆日本酒とワイン
◆「父祖の遺風」と武士道
◆娼婦と遊女
◆アッピア街道と東海道
◆下水道と肥溜め
◆哲人と俳人

※「江戸とローマ」の各話は、本村凌二先生の講師ページからご覧ください。
https://10mtv.jp/pc/content/lecturer_detail.php?lecturer_id=121&referer=push_mm_rcm2


----------------------------------------
編集部#tanka
----------------------------------------

この世界で肥満なる人20億その数を想い御三時をとる

世界で20億人以上の人が肥満とのこと。その膨大な数を聞くと、思わず安心してしまいますが、しかし、自分の身体に響いてくるのは間違いないこと。対策を、ぜひ堀江重郎先生の講義で。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5040&referer=push_mm_tanka


----------------------------------------
今週の人気講義
----------------------------------------

地球儀を俯瞰する!?国際政治を読むために重要な地図の見方
小原雅博(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5352&referer=push_mm_rank

法曹界の『人間観』は間違い?脳の働きから考える「善悪」
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5258&referer=push_mm_rank

全ては運か!?良い運を引っ張ってくるために心がけること
山内昌之(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5334&referer=push_mm_rank

グローバル・ウエスト対中露、努力むなしい日本の現実
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5307&referer=push_mm_rank

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇(東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5283&referer=push_mm_rank