編集長が語る!講義の見どころ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像/岡本浩氏【テンミニッツTV】

2024/06/25

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

日本の電力料金が、こんなに高くていいのか! そう感じている方も多いと思います。さらにいえば、円安も進行しているなか、現在のような輸入依存度の高いエネルギー構造のママで本当に大丈夫なのかも大いに心配です。

一方で、山林などを切り崩していく太陽光発電設置については、様々な問題も指摘されています。

日本はいま、様々な社会課題に直面していますが、エネルギー問題は極めて重大なものの1つといえましょう。

当然ながら、太陽光発電など再生可能エネルギーを大規模に導入するためには、システム全体の見直しが必須になります。しかし、そのあたりの議論は本当に進んでいるのでしょうか。そもそも、エネルギーの未来像について、しっかりと考えられているのでしょうか。

本日は、その点について岡本浩氏(東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者/スマートレジリエンスネットワーク代表幹事)にお話しいただいた講義を紹介いたします。

岡本氏は、東京大学大学院博士課程(工学部電気工学科)修了後、1993年に東京電力に入社。主に電力系統やスマートグリッドに関わる技術開発や技術戦略を担当してこられました。

専門家の目にどのような景色が見えているのか。エネルギー戦略の真実はどこにあるのか。様々なヒントが得られる、目からウロコの講義です。

◆岡本浩:日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(全9話)
(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5322&referer=push_mm_rcm1

《日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像》という講義タイトルからもわかるとおり、本講義は大きく変化していくエネルギー戦略を、デジタル化によって有効に制御していくことを説くものです。とはいえ、非常にわかりやすく解説いただいているので、イメージを膨らませていくことができます。

最初に、講義の全体像を示しましょう。

(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの

(2)電力の需給バランス
カーボンニュートラル社会に必要な「発想の逆転」とは

(3)電力の部分最適と全体最適
日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

(4)エネルギーにおける「神経と血管」
生成AIの規模拡大で急増する世界的エネルギー事情

(5)デジタルインフラと電力のこれから
時空間を自由に移動!分散化で期待される電力消費の冗長性

(6)モビリティとエネルギーの融合
EVが電気を運ぶ…モビリティの変化と非常時のレジリエンス

(7)電力供給の「3つの階層」
地域間の不均衡解消、電力移動を可能にする「3つの階層」

(8)グローバル連携と洋上、地熱
地熱、洋上、潮汐…地理的特性を生かした発電方法の可能性

(9)農業と太陽光発電
営農型太陽光発電…これからの電力と農業のあり方を考える

まず第1話で岡本氏が語るのは、「電動化」がもたらすインパクトです。エネルギー源の変更は、当然、産業革命にも密接に結びつくものです。第1次産業革命は、蒸気機関と石炭によってもたらされました。

その時代の工場は、当然、蒸気機関によって動かされていたわけです。しかし、電気の時代になると、工場のあり方も一変します。

1か所の蒸気機関の駆動力をあちこちに配分するあり方から、多くのモーターを各所で動かしていく姿になる。フォードが自動車の大量生産を実現したベルトコンベアが張り巡らされた工場の姿は、実は電気の普及と表裏一体のものだったのです。

同じことが、これから自動車など個々のモビリティについても起きてきます。これまでは1つのエンジンを搭載してその駆動力で走る自動車が圧倒的主流でした。しかし、各車輪をモーターで動かすようになると(インホイールモーター)、機械そのものが分散型に変わり、自由度がグンと増します。

カンブリア爆発といえば、古生代のカンブリア紀に様々な種類の生物が爆発的に登場したことを指しますが、それに匹敵する機械の進化や変化が起きるのではないかと岡本氏はいうのです。

ただし、そうなると社会の電力使用量も当然のごとく増えることになります。加えていえば、AIの進歩により、その部門での電力使用量も劇的に増えている。とりわけ東日本大震災での原発停止以降、厳しい電力事情が続いている日本で、どのように対応できるのか。

第2話で岡本氏は、日本の電力需給の現状のあらましを解説くださいます。しかも、電力は足りないと困るだけではなく、余っても困るのです。であるならば、消費に合わせて生産を調整するのではなく、逆に生産に合わせて消費を可変していく姿にしていく必要があるのではないか……。

そのあたりの機微は、ぜひ講義本編をご覧ください。

第3話では、再生可能エネルギーの比率が高い国と、日本の相違点が語られます。ただ、太陽光発電や風力発電などを増やせば再生可能エネルギーの比率を高められるというものでもありません。そのような変動電源の比率が高くなると、全体の需給バランス大きな難しさが生まれるのです。では、なぜ欧州などでは、それができているのか。ここも必見です。

第4話では、AIの進展により、いかにデータセンターが増えて、電力需要が増えていくのかが示されます。AI導入の動きは不可逆的でしょうが、ますますしっかりしたエネルギー戦略が不可欠になるということです。

ここで岡本氏が語るのが、人間の神経と血管の関係との類比です。人間は全身に張り巡らせた神経で、身体情報をしっかりと取得しながら、各部署に最適になるように血管で酸素やエネルギーを運びます。社会も同様に、情報革命で各場所のエネルギー需要を的確に把握しつつ、そこに的確に電力を届けることができないか、というのです。

これが進むとどうなるか。空間と時間を自由に行き来するサイバー空間の電力供給&消費の姿が可能になるというのですが……。しかも電気自動車(EV)やヒートポンプがそのような電力調整の一翼を担う可能性も指摘されます。これらの点については、ぜひ講義の第5話から第7話をご参照ください。

第8話と第9話では、地熱発電、洋上風力発電、洋上原子力発電、潮汐発電、営農型太陽光発電など、様々なエネルギーの現状と可能性が語られます。それぞれの課題も明確に見えてきます。ぜひいま知っておくべき情報といえましょう。

個々別々に対策を考えていくのではなく、いかにビジョンと全体像を描き、そこに向けて全体的な戦略を構築していくか。そのことの重要性が痛感される講義です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆岡本浩:日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5322&referer=push_mm_rcm1


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