メンタルヘルスの現在地とこれから
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昭和の常識は非常識…令和の世ではマイクロアグレッション
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なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
斎藤環(精神科医/筑波大学名誉教授)
組織のリーダーにとって、メンバーのメンタルヘルスは今や最重要課題になっている。組織として目標達成が大事であることは間違いないが、同時に一人ひとりの個性を見極め、適材適所で割り振っていく「合理的配慮」も求められている。そこで今回は、そうしたメンタルヘルスの現在地を把握するために、まずは「心を病む」ことの現代的定義を解説し、具体的な配慮の仕方に迫っていく。(全6話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分23秒
収録日:2024年4月17日
追加日:2024年6月15日
≪全文≫

●「心を病む」ことの現代的定義


―― 本日は斎藤環先生に「メンタルヘルスの現在地とこれから」、特に企業、職場での状況についてのお話をいただきたいと思っております。斎藤先生、どうぞよろしくお願いいたします。

斎藤 よろしくお願いします。

―― 斎藤先生は精神科医でいらっしゃって、お書きになっているご本も非常に多くおありですので、ご存じの皆さんも多いかと思います。今日は、(メンタルヘルスについて)実際に今どういう状況になっているかということを率直に聞いてまいりたいと思います。

 先生、非常に基礎的な質問からで申し訳ないのですが、そもそも「心を病む」というのはどういうことか。これはいったいどういうことなのでしょうか。

斎藤 かつては「心を病む」というのは脳に問題があって、さまざまな言動に異常が生じるという考え方が主流でした。しかし最近、その辺の見方が大幅に変わりました。最近の見方は、心の病というものは個人にも要因はあるかもしれないけれど、個人の要因と環境要因──社会、家族、人間関係など──の相互作用の中で起こってくる、さまざまな不都合を「心の病」と呼ぶという認識に変わりつつあります。

 ということは、環境がその人の個性を100パーセント全部許容していたら、どういう個性を持っていても、その人は病気とみなされないということです。逆に、それほど異常でなくても、周囲としょっちゅう軋轢を起こし、だんだんうつ気味になってくるようなことが起こった場合、それは心の病として扱わざるを得ない。(つまり)あくまでも個人の資質と環境との相互作用の中で決まってくるものが心の病というように考えられています。

―― そうしますと、昔であればいわゆる個性として普通に捉えられていたレベルのものが、周りとの関係、あるいは企業の中へ入って「働き方はこうだ」といわれる中で、そういうふうになってしまうことが、むしろ普通というか、自然になっているということなのですね。

斎藤 そうですね。かつては個性と思われていたものが今、もしそれが周囲の人と軋轢を起こしたり、日常生活や業務に支障を来したりするようなことが起こってくれば、それは病気として治療対象になってしまうこともあり得るという状況です。そういう意味では、昔よりも病気として検出されやすい人が増えたかもしれないという印象は持っています。

―― なるほど。...

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