●フィンランドで始まった新しい方法
―― 最後に、これは一般のレベルで行うというよりは、おそらく治療現場での話になると思うのですが、一つの参考事例として、先生がおっしゃっている「オープンダイアローグ」のお話を(うかがいたいと思います)。今、どういうような形で、治療や復帰への道が変わってきているかというところで、ぜひご紹介いただければと思います。オープンダイアローグというのは具体的にはどういう手法になるのでしょうか。
斎藤 これは、フィンランドの西ラップランドというところで始まった方法です。もともとは統合失調症という幻聴や妄想の生じる疾患の急性期、一番症状が激しいときに、対話によってアプローチをして回復を促すという方法です。これが非常に有効で、今までは薬と入院しか治療法のなかった疾患が、対話するだけで回復してしまうということが分かってきたので、全世界に非常にショックを与えました。この手法を日本でも広げていこうということで、今、私は活動しています。
ここで行うのは、本当に普通の対話です。ただ、細かい話をすると、その人の主観を掘り下げるということをするわけです。さらに言うと、対話というのは「主観と主観の交換」としてとらえますので、相手が主観的に話してくれたら、こちらも主観的に話すことで、お互いの主観を共有し合うということをします。
そのときに、意見が違っていたり、価値観が違っているのは全然構わない。「polyphony(ポリフォニー)」といいますが、そういういろいろな意見を共有する状態のポリフォニーが出てくると、そこには隙間がある。その隙間において、クライアントさんが自分の主体性を見つけていくといわれています。
ですから、対話によってポリフォニーを作っていき、そのポリフォニーの中で本人の主体性が芽生えてくるという回復過程であるといわれています。それが、この手法の大きなメリットと考えられています。
●本人を含めたチームによるオープンな対話
斎藤 具体的には、2、3人の治療チームで行って、それで、クライアントと家族のチームで、(つまり)チーム対チームで話し合うようにするという手法です。これをそのまま企業で実践するのは難しいでしょうから、使えるものだけ使うことを考えると、いくつかエッセンスとして有効なものがあると思います。
具体的には、まず一つに「本人がい...