編集長が語る!講義の見どころ
名経営者に学ぶ危機突破術…松下幸之助と熱海会談の真実/佐久間昇二先生【テンミニッツTV】
2024/07/09
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
いかに行動するべきか。どう判断するべきか。人生の行路では大いに迷うことばかりです。そういうときには、やはり歴史や先人の行動に学びたいものです。
本日は、松下幸之助の最大の危機の1つといわれる「熱海会談」の真実を明かしつつ、松下幸之助の「危機克服の方法」について、佐久間昇二先生(元松下電器産業副社長/WOWOW名誉相談役/ぴあ終身相談役)にお話しいただいた講義を紹介いたします。
熱海会談とは……。昭和39年(1964年)7月に松下電器(現・パナソニック)が熱海のホテルに全国の販売会社・代理店の社長を集めて開いた懇談会のことです。当時、不況の到来もあって、松下電器は大きな危機に直面していました。それは、松下幸之助が後に最大の危機と評したほどのものでした。
はたして、その危機を松下幸之助はいかに乗り切ったのでしょうか。
◆佐久間昇二:松下幸之助の危機克服~熱海会談の真実(全4話)
(1)最初の出会いでの衝撃
松下幸之助は聞き上手ではなく言わせ上手…素直な心で即断
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5378&referer=push_mm_rcm1
佐久間先生は、1931年のお生まれです。1956年に大阪市立大学大学院経営学研究科修了後、松下電器産業株式会社(現・パナソニックホールディングス株式会社)に入社されます。
欧州での乾電池販売などで大活躍された後、1983年に松下電器の取締役・経営企画室長、1986年に同社専務取締役、1987年に同社取締役副社長を務めておられます。その後、1993年より、経営危機に陥っていたWOWOW(当時は日本衛星放送)の代表取締役社長に就任。見事に同社の経営立て直しに成功しておられます。
松下幸之助の謦咳(けいがい)にふれつつ仕事を進めてこられた佐久間先生。もちろん、熱海会談のことも間近にご覧になっていました。
さて、松下電器が陥っていた危機とはどのようなものだったのでしょうか。
1958年から1961年まで「岩戸景気」といわれる好景気でした。それを背景に、松下電器も業績を伸ばしますが、松下幸之助が社長を退いて会長となった1961年頃から状況が変わっていき、1963年頃から不況に入ります。
一方、1950年代後半から、洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビが「三種の神器ブーム」といわれるほど爆発的に売れていました。しかし、1963年頃からの不況時には、その需要も落ち着いてきていました。
加えて、当時、重電会社と呼ばれていた東芝、日立、三菱電機などが家電業界に参入。過当競争の状況が生まれていたのです。
そのようななかで、松下電器でも数字のノルマを達成するために「押し込み販売」もなされるようになりました。上から販売実績を挙げることを厳しく求められて、販売会社に対して無理をする人たちも出てきていたのです。
実は危機が表面化する前に、当時若手社員だった佐久間氏は、若い社員たちとともに直接、松下幸之助に窮状を訴える手紙を書こうとしていたとおっしゃいます。しかしその行動は事前に露見し、上司から止められてしまうのでした。
そうこうしているうちに、松下幸之助自身が危機を察知することになります。
現場を重んじる松下幸之助は、会長になってからも時間があれば松下電器のショップ店や卸屋に直接出向いて、車から降りて「調子はどうですか?」などと聞いて回るのが常でした。1964年のある日、大阪の枚方の卸屋に行った折に、その社長から手形の山を見せられて、こういわれます。
「これは全部手形やな。これ、わし毎日見ているんだけど、10枚出せば必ず2枚くらい不渡り、延期手形が返ってくる。松下さん、あんたが知ってくれないと困る」
当時も表面上は、松下電器は好成績を維持していました。しかし、その裏側には、そのような実態があったのです。
元々、松下電器では現金の商売を重んじており、手形は不可とされていました。しかし、たとえば白黒テレビなどは、そのころのサラリーマンの月給の数カ月分もする価格でした。当時はクレジット制度もなかったので、販売店が顧客に「月賦販売」をする。そのために卸店への支払いを手形で行なうようになり、松下電器への支払いも手形に変わっていました。
それが一斉に不渡りになったらどうなるか。松下幸之助は、すぐに危機の本質を見抜きます。
しかし当時、松下幸之助は娘婿の松下正治に社長を譲っています。とりあえず松下幸之助は、営業現場の責任者を招集し、実態をつかもうとします。しかし、皆、実態を隠蔽しようとします。
このままでは埒(らち)があかない。そこで松下幸之助は全国の販売会社・代理店の社長を集めて懇談会を開くことにするのです。
松下幸之助の熱意と誠意により、最終日に全出席者が一丸となりました。しかも単に、人心をまとめただけでなく、松下幸之助は問題の本丸に的確な手を打ち、危機の再燃を起こしにくくします。それが再び松下電器が力強く発展する大きな契機となるのです。
なぜ、そのようなことが可能だったのか。松下幸之助は、いかに判断し、いかに決断して、どう動いたのか。そもそも、松下幸之助はどのような人だったのか。
直接、松下幸之助を知る佐久間先生が、とても詳細に教えてくださいます。
そのエピソードの数々から、とても多くの気づきを得られる講義です。ぜひご覧ください。
◆佐久間昇二:松下幸之助の危機克服~熱海会談の真実(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5378&referer=push_mm_rcm2
※佐久間昇二先生の「昇」は、実際は「昇」の異体字(日の下に舛の字。件名、本文いずれも)
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編集部#tanka
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