編集長が語る!講義の見どころ
ロケットと宇宙探査技術の「現在」を学ぶ/小泉宏之先生【テンミニッツTV】
2024/07/16
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
夏の夜風に当たりながら天体観測。そのようなご経験をされた方も多いのではないでしょうか。七夕などもあり、なんとなく夏は宇宙に心惹かれる季節でもあります。
また、今月1日にH3ロケット3号機の打ち上げが成功したことも記憶に新しいところです。
日本のロケット開発の草分けといえば「ペンシルロケット」。直径1.8cm、全長23cmの本当に小さな固体燃料ロケットでしたが、小さいだけに150機ほどが飛ばされ、ロケット飛行に欠かせない様々なデータが取られました。
そのペンシルロケットの公開発射実験が1955年のことですから、いまから約70年前ということになります。
ちなみに、「近代ロケットの父」と呼ばれるロバート・ゴダードが、世界で初めての液体燃料ロケットの打ち上げに成功したのが1926年といいますから、ほぼ100年前のこと。
では現在、宇宙探査の姿はどうなっているのか。今回は、そのことを教えてくれる小泉宏之先生(東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授)の講義を紹介します。
宇宙探査は、まさに人類の夢でした。では、実際に宇宙へ飛び立つには、どのようなことを考える必要があるのか。
小泉先生は、「はやぶさ」でも話題になった小型イオンエンジンなど世界最小クラス推進系開発のトップランナーでいらっしゃいます。
◆小泉宏之:宇宙探査の現在と可能性(全10話)
(1)ロケットと軌道の基礎-1
人工衛星や探査機のエンジンの最も重要な役割とは?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2737&referer=push_mm_rcm1
この講義で小泉先生は、火星への有人探査を例にとって、必要なことを教えてくださいます。
まず、地球を離れて太陽周りを回りながら火星に行くのに約260日かかるといいます。しかし、火星から地球に帰るためには、地球と火星の周期が違うために、タイミングを待たないといけません。そのためには、火星で約390日待たないといけないそうです。つまり往復520日+待機390日で、2年半ほどの時間が必要だというのです。
2年半の時間をすごすために6人のクルーで火星に行くとする。水と酸素は循環システムで入手することとする。その前提で考えると、水は100日分を持っていけばそれを循環させて使えるので、1人あたりだいたい2.3トンが必要となる。食料は、6人分で2年半を考えると3.5トン(1人あたり約0.6トン)が必要となる。
さらに居住区などの重さを考えていくと、6人を火星に運ぶのに約40トンが必要だといいます。これらをもとに、火星探査の宇宙船の重さを考えると、必要な質量は約100トンとなります。
ちなみに、アポロ着陸船は、総質量が約15トンでしたが、うちロケットの推進剤が約12トンでした。地球の周回軌道上から火星に向けて100トンのものを発射し、往復させるためには、地球出発時に秒速8キロメートルの加速が必要なことなども考えると、約1000トンの重さのロケット推進剤が必要になるといいます。
いまご紹介したように、これは地球の周回軌道上から出発するときの概算です。もし、地球からこの1000トンを地球周回軌道上に打ち上げようとすると、その費用だけで数千億円から1兆円ほどかかってしまう。プロジェクト全体で考えると、国際宇宙ステーションの費用などから考えて、数十兆円になる可能性も……。
では、これを少しでも安価にするためにはどうするか?
ここで小泉先生は、「はやぶさ」でも話題になったイオンエンジンの仕組みとその可能性、さらに月などから物資を調達するスペースマイニングの考え方なども紹介し、様々な可能性に言及されます。
この講義を受講すると、宇宙探査の実際の一端を知ることができるだけでなく、理系の理詰めのプロジェクト思考がどのようなものかも、よく理解できます。色々な意味で、大いに刺激を受けることができる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆小泉宏之:宇宙探査の現在と可能性(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2737&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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