編集長が語る!講義の見どころ
アメリカ大統領選挙はどうなる?日米同盟の行方は?/杉山晋輔先生【テンミニッツTV】

2024/08/02

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

アメリカの大統領選挙では、カマラ・ハリス副大統領が民主党候補として急浮上し、選挙の行方とその後の影響が、さらに読みづらくなっています。

はたして、今回の大統領選挙はどうなるのか。そして、その後の日米同盟や世界情勢のあり方とは?

本日は、そのことについて深く考えるためのヒントを教えてくださる、杉山晋輔先生の講義を紹介します。杉山先生は2016年から外務事務次官を、2018年からアメリカ合衆国駐箚特命全権大使を務められました。

実際にアメリカで見聞されたエピソードも交えながら、日米同盟が現在どのような姿で、アメリカはどこへ向かおうとしており、大統領選挙の勝敗を分けるものが何かをお話しくださいます。

◆杉山晋輔:「同盟の真髄」と日米関係の行方(全8話)
(1)日本を占う3つの選挙と軍事作戦
世界の紛争…アメリカの空母機動部隊は3正面で戦えるのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5365&referer=push_mm_rcm1

杉山先生が最初に言及されるのは、「空母機動部隊」を中心としたアメリカの軍事力の現状です。いわずもがな、現在、ウクライナ、中東で戦いの火の手が上がり、東アジアの緊張も高まっています。三正面で戦闘が起こったとき、アメリカは本当に対応できるのか。

アメリカは態勢は整えているものの、欧州や中東の戦火がより厳しくなったら、東アジアへの関心や戦力の投入が軽減される結果になってしまいかねません。日本として「それは非常に困る」とアメリカには主張しなければならない、と杉山先生はおっしゃいます。

第2話では、東アジアの同盟のあり方が大きく変わっていることをご解説くださいます。

最近「格子状(ラティスライク)」という言葉をお聞きになったことがある方も多いと思います。これは「ハブ・アンド・スポーク」との対比です。東アジアの安全保障が「ラティスライクになる」というのです。

杉山先生は講義中で図を用いてわかりやすく説明くださいますが、「ハブ・アンド・スポーク」というのは、ちょうど自転車の車輪とスポークのようなイメージです。中央にアメリカがいて、アメリカが日米、韓米、英米、豪米というように各国と同盟関係を結んでいる。それがちょうど、車輪の中心からスポークが伸びて円(車輪)になっているような関係だということです。

一方、ラティスライク(格子状)というのは、これまでの2国間の同盟に加えて、AUKUS(豪英米の軍事同盟)やQuad(日米豪印戦略対話)などがつくられることによって、単線的ではなく格子状の立体的な関係になることです。そして、その中心は日米になるというのですが……。

それぞれ、どのようなことかは、ぜひ講義の第2話をご覧ください。

第3話で紹介されるのは、日米同盟の現在地です。岸田総理は2024年4月に米国連邦議会上下両院合同会議で演説し、「You are not alone. We are with you(あなたたち〈アメリカ〉は1人ではない。私たち〈日本〉は常にあなたたちとあります)」と大見得を切りました。

ここで紹介されるのは、その直後、イランがイスラエルを直接攻撃した折の、日本の対応です。それは、4月にイスラエルがシリアにあるイラン大使館を攻撃してテロリストを殺害したことへの、イランによる報復攻撃でしたが、ここで日本は、これまでのイランとの友好関係もふまえ、非常にバランスの取れた対応をして、話をまとめたのだといいます。

日本とイランとの関係、アメリカとイランとの関係など、さまざまな思惑が交差するなかで、日本としてどのように発言していくか。その経緯から、外交のあり方を垣間見ることができます。

そのうえで、杉山先生はこうおっしゃいます。

《同盟というのは「ともに(一緒に)守らなければいけないものを、命を懸けてでも守ること。ともに戦って守ること」です。守るというのは、私たちが愛するわが国の領土、あるいは国民、愛する家族、日本を守るというのはもちろんです。しかし、アメリカと共有している民主主義や自由、人権、言論の自由、あるいは市場経済のシステムとか、そうしたある種の考え、理念というものをともに守るのだというのが、おそらく同盟の本旨だと思うのです》

そうおっしゃったうえで、さらに次のように指摘されます。

《同盟というのはそういうものを「ともに戦って守る」という原理原則を貫きながら、お互いに相手の言うこととアイデンティカルな、同一の政策を取るということは全く意味しません。今の同盟の本質を毀損しない、同盟の本質を見誤らない範囲で、「agree to disagree(合意しないことに合意する)」をすることこそ同盟だということを、強く皆様方に申し上げたいと思います》

ここは非常に重要な部分でしょう。そして、その例として、「血の同盟」といわれるイギリスとアメリカとの関係において、1949年の中華人民共和国誕生以降の英米の対応の違いを紹介くださいます。そのことが示す教訓がいかなるものかは、講義第4話をご覧ください。

講義第5話では、上述の「ラティスライク」の同盟は、「中国封じ込め」を意味するのかどうかを論じます。

杉山先生は「ラティスライクの同盟が、もし中国封じ込めを意味するなら、これまで日中両国で合意してきた『戦略的互恵関係』は成り立たないはずだ。また、現在の中国は冷戦当時のソ連よりも強く、地政学的な位置づけも違うので、封じ込めるということは考えもつかない」とおっしゃいます。ではどうすべきなのか。そこは第5話をご参照ください。

第6話からは、アメリカ大統領選挙をどう読むかという話です。アメリカ大統領選の制度は、日本人にはなかなかわかりづらいところです。杉山先生は、過去の大統領選挙分析の地図を示しながら、わかりやすくポイントを教えてくださいます。

さらに第7話では、杉山先生が実際に親しく接したアメリカの要人の発言などを引きながら、トランプ陣営の内幕も描かれます。

ここも、今回の大統領選挙を理解するためにも、ぜひ学んでおきたいところです。

第8話は質疑応答編。「トランプ氏が大統領になったら、日米同盟の見直しがなされるのかどうか」という質問に対し、杉山先生は安倍総理とトランプ大統領との関係や、アメリカ要人からの杉山先生への要望などを紹介しつつ、日米同盟の行方についてお話しくださいます。

これからの同盟のあり方、外交のあり方から、アメリカ大統領選挙の行方までがわかる、まさにいま必見の講義です。


(※アドレス再掲)
◆杉山晋輔:「同盟の真髄」と日米関係の行方(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5365&referer=push_mm_rcm2


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編集部#tanka
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血塗られたアントワネットの首歌う無残な国の平和の祭典

歴史と人の死の尊厳を軽んじた末に何があるかを、ふと考えたパリ五輪開会式。フランス革命とその後の戦争で、当時2700万のフランス人のうち200万人が犠牲になったといわれます…。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3595&referer=push_mm_tanka