編集長が語る!講義の見どころ
AIを生物進化から考える/長谷川眞理子先生×松尾豊先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/11/10
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
AI(人工知能)について、さまざまな報道がなされています。いつかAIの能力が人間を抜くだろう、社会も大きく変わるだろう、なくなる職種も出てくるだろう……などという話を、お聞きになったことがある方も多いのではないでしょうか。
では、果たして人工知能の本質とはどのようなものなのか。それを、進化生物学を専門とする長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学長)と、AIおよびディープラーニングを専門とする松尾豊先生(東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター教授)が、縦横無尽に対談されて明らかにした講義を紹介します。日本の知性に集結いただいているテンミニッツTVならではの名講義です。
◆長谷川眞理子×松尾豊:知能と進化(全8話)
(1)知性と身体性
知能と身体性は不可分なのか?
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2241&referer=push_mm_rcm1
両先生がいかに人工知能の核心に迫っていくか。その白熱のやり取りのほんの一例を、このシリーズ講義の第1話、第2話から抜粋してご紹介しましょう。
《長谷川》 生物学者なので、どうしても人工知能というものが腑に落ちません。生物の知能は別に誰かが設計してつくったわけではなく、生きて繁殖していく中で情報処理が必要になり、それに合わせて進化してきたもので、身体性と不可分にあると思っています。大昔の漫画に、脳みそだけがホルマリン漬けになり、そこに電極があって、それで指令するというような話があったかと思いますが、そのようなことは絶対にないと考えていました。
《松尾》 知能を生存のための装置だと考えると、そもそも生存とひもづいていなければならないので、身体性とひもづいていない知能はあまり意味がないことになります。ですが、知能を複雑な要因が絡み合った現象をひもとく力であると考えると、自分が観測しているある現象に対して、何が作用してこうしたことが起きているのか、あるエージェントにとって何がコントローラブルで何がコントローラブルではないのか、ということをひもとくことさえできれば、必ずしも身体性は必要ないということになります。
《長谷川》 まだよく分かりません。身体性についてと、もう1つ私がいつも引っ掛かり、よく分からないのは、「意味」についてです。意味というものを、今のコンピューターは、分かっていないのでしょう? AIがどんなに学習し因果関係を推定したとしても、意味は分かっていないとすれば、ではどうするのか、ということが知りたいのです。
《松尾》 意味については、少し大胆な仮説があり、記号処理系RNN(Recurrent Neural Network)というものと、認知運動系RNNというものがあり、その相互作用だということです。(以下続く……)
また、第7話では、こんな対話もなさっています。
《長谷川》 それでは、それ(高度な人工知能)ができたときにどのような世界になり、そのときにどういう生き方になるかという将来像に関してはいかがでしょうか。
《松尾》 僕は、人間の生活はそんなに変わらないと思っています。例えば、今でも別に頭が良い人が一番偉いわけではありません。経営者は、自分よりも頭が良い人をお金で雇って使っているということでしょう。そういう感じだと思います。
《長谷川》 そうですか。私は「人間は全然変わらないだろう」というのは、とても人間を楽観的に見ていると思います。というのは、いろいろな技術が発達してきて、全体的に人間が楽な暮らしをするようになりました。それで、国家などによっては、昔の部族社会から急激に変わっていきました。(以下続く……)
これらの部分からだけでもご想像いただけるように、まさに知的刺激と発見に満ちた対談です。これからの社会と技術のあり方について深く知るためにも、ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆長谷川眞理子×松尾豊:知能と進化(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2241&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「一流の人間は決して弁解しない」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=370&referer=push_mm_hitokoto
54歳、裸一貫の男に突き刺さった三浦綾子氏の言葉
上甲晃(志ネットワーク代表)
一流企業に勤めるとか、一流の大学を出ることよりも、もっと大事なことは、人間として一流になるということが極めて大切だということを、そのとき、そのたった一つの見出しから教えられた気がいたしました。
人間には肉体の背骨というものがあります。肉体の背骨が曲がっていると、内臓に負担がかかって病気になります。ですが、もう一本の背骨が必要なのだということを、そのとき教えられました。それは、心の背骨です。
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今週の人気講義
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アメリカとは革命を基礎とした「発明」である
東秀敏(米国安全保障企画研究員)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3708&referer=push_mm_rank
リーダーが持つべきセンスとは何か
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3743&referer=push_mm_rank
独裁・共和政・民主政――繰り返されてきた世界の歴史
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3725&referer=push_mm_rank
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3644&referer=push_mm_rank
人口オーナス期の日本がいま行うべき「働き方改革」とは
小室淑恵(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1639&referer=push_mm_rank
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて今回は、本日(11/10)発売の本村凌二先生の新著『独裁の世界史』 (NHK出版新書) をご紹介いたします。
ご存じの方も多いと思いますが、この本は本村先生のシリーズ講義「独裁の世界史」の書籍版で、古代ギリシア、ローマから、フランス革命期のフランス、そして現代まで、支配者と抵抗者が織りなす2500年の相克の歴史が学べます。
『独裁の世界史』(本村凌二著、NHK出版新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/4140886382?pd_rd_w=dxIM2
また、この本は今月(11月)のプレゼント本でもあります。ご希望の方はサイトトップの右のほうをご覧ください。
https://10mtv.jp/
なお、今週の人気講義でも取り上げましたが、現在、本村先生のシリーズ講義「独裁の世界史」は現代編ともいえる「未来への提言編」の配信が始まっています。その後、時代を再び近代に戻し、ビスマルク編、ソ連編、ムッソリーニ編、ヒトラー編をお届けする予定です。ご期待ください。
(※アドレス再掲)
本村凌二:独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3725&referer=push_mm_edt
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「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
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