編集長が語る!講義の見どころ
なぜ日本は対米戦争に突入したのか…渋沢栄一の「悔し涙演説」/渡部昇一先生【テンミニッツTV】
2024/12/03
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
かつてほどではなくなってきましたが、やはり12月に入ると、先の大戦にまつわる報道なども増えるものです。もちろん、日本の真珠湾奇襲が昭和16年(1941)12月8日であったためです。
日本は、なぜあの戦争に突入したのか。そのことを考えるうえで、忘れてはならない演説を、実は現在の一万円札の肖像画にもなっている渋沢栄一がしています。
渋沢栄一が日本とアメリカの交流強化のために、自身、いくどもアメリカに足を運び、民間外交に力を尽くしたことは有名です。しかし、その渋沢が「悔し涙」を流して演説したといわれる機会があったのです。
それは、大正13年(1924年)、アメリカで「排日移民法」が成立したときに行なわれた演説です。
このとき渋沢は、「あまりに馬鹿らしく思われ、社会が嫌になるくらいになって、神も仏もないのかというような愚痴さえ出したくなる」とさえ語りました。また幕末に自分自身が攘夷運動に燃えていたことを振り返りつつ「七十年前にアメリカ排斥をした当時の考えを、思い続けていたほうがよかったかというような考えを起こさざるをえないのであります」とも述べたのです。
本日はこの演説について、渡部昇一先生(上智大学名誉教授)の講義で紹介いたします。
◆渡部昇一:本当のことがわかる昭和史《6》人種差別を打破せんと日本人は奮い立った(全14話)
(3)渋沢栄一の「悔し涙」演説
アメリカの排日移民法…なぜ渋沢栄一は悔し涙を流したか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=986&referer=push_mm_rcm1
渡部昇一先生のこの講義シリーズは、とある勉強会を収録したもので、その後、その講義録に大幅に加筆して、単行本となりました。講義のテキスト(動画の下に文章が掲載されています)には、その加筆後の文章を掲載しています。
そのため、講義の動画のなかでは渡部先生は、渋沢が悔し涙を流して語った部分についてのみ言及しておられますが、テキストでは、渋沢の演説がかなり長い引用で紹介されています。
ぜひ本講義は「テキスト」もご覧ください。渋沢がいかに日米の関係改善のために骨を折ったのか、そしてアメリカの排日移民法にいかなる衝撃を受けたのかが、演説の文章から、具体的にまっすぐ伝わってきます。
以下、講義テキストをベースに紹介いたしましょう。
渋沢栄一は、この演説の引用部分で、まず自身の若き日々を回顧します。なぜ攘夷運動に身を投じたのかについての話は、自分自身の思いも含めて語っているだけに、幕末の日本人が、アヘン戦争などの動きにいかに怒りを沸騰させたかがよく伝わってきます。
続いて渋沢は、フランスに留学して攘夷論の夢から醒め、アメリカとの交流にも力を尽くしたことを語っています。当時、多くの日本人がアメリカに移民しました。
しかし、日露戦争のあと、カリフォルニア州をはじめ各州で、日本人排斥運動が起きます。
その動きを知ったときの感情について、渋沢は《なぜに白人は外国人を嫌うのか。東洋人だから嫌うのか、日本人だから嫌うのかと思うと、再び昔時の感想を思い起こさざるをえないのでありました》と振り返っています。やはり、自分たちに向けられた「人種差別」に大きな怒りを覚えたのです。
とはいえ渋沢は挫けず、関係改善に向けて、なお努めます。自身でアメリカにも赴き、日米の実業家を中心に「日米関係委員会」という団体も設立しました。
ところがなおも日本人排斥は続き、遂に排日移民法が可決。このメールで最初に紹介した「悔し涙演説」の部分に至るのです。しかし、その箇所のあとで、なお渋沢は希望を述べて、演説を締めくくっています。
当時の日米関係の経緯が、とてもよくわかる名演説です。
この演説が行なわれたのは、日米開戦の17年前。その後も渋沢は、「青い目の人形」で知られる日米の人形交換の取り組みを大いに支援するなど、日米関係の改善に力を尽くしますが、昭和6年(1931年)に満91歳で逝去。それから10年で日米開戦を迎えることになるのです。
この渋沢の演説を読むと、多くのことを考えさせられます。渡部昇一先生のご指摘のとおり、当時の日本人が抱いていた「人種差別」「排斥」への怒りがわからないと、当時の日本人の想いも理解できないのでしょう。ぜひご一読ください。
なお、この講義シリーズでは、渋沢栄一が日本の資本主義確立に果たした役割の大きさから、「ガッツ」の必要性、さらに戦時中に日本人が抱いた思いまで、多くのことを語っていただいています。ぜひ本シリーズのほかの講義もお目通しいただければ幸いです(PCでご覧の場合は講義テキストの右横に、スマホでご覧の場合には講義テキストの下に、この講義シリーズのほかの話へのリンクが置かれています)。
(※アドレス再掲)
◆渡部昇一:本当のことがわかる昭和史(6-3)渋沢栄一の「悔し涙」演説
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=986&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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毎月の世界の祭りをみな招き賑やかにせん師走のごとくに
いよいよクリスマスの光と音があふれる師走。世界の祭をとり入れて楽しむのは日本人の良いところですが、併せて、その背景も知っておきたいもの。ぜひ渡部玄一先生の講義で。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4218&referer=push_mm_tanka
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