『江戸名所図会』で歩く東京~吉原
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
江戸文化を育んだ吉原遊郭…版元・蔦屋重三郎の功績とは
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(2)「公界」としての吉原
堀口茉純(歴史作家/江戸風俗研究家)
江戸時代の吉原を語る上で欠かせない人物が、吉原で生まれ育ち、出版界で名を馳せた蔦屋重三郎だ。蔦屋の活躍によって様々な身分の人々の交流の拠点となり、観光地としても人気だった公界(くがい)としての吉原の一面を掘り下げよう。講義後半ではロケにも出向き、江戸時代の痕跡が残る現在の吉原を巡る。(全2話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分44秒
収録日:2024年6月5日
追加日:2024年11月25日
≪全文≫

●吉原で生まれ育ち、版元として大出世した蔦屋重三郎


―― 前回、吉原がいかに江戸の中で高いステータスがあったかということをお話しいただきました。そして、ある意味では江戸文化が育まれた場所でもあり、その地形的な特色についてもご解説いただきましたが、今回はどのようなお話になりますか。

堀口 今回も、江戸の遊郭の吉原が公に開かれた世界である、公界(くがい)であったという側面を取り上げたいと思います。

―― 苦しくなくて、公という公界ですね。

堀口 はい。公界・吉原を語る上で外せないのが、蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)という人物です。

―― 蔦屋というと、いまもそういう書店さんのグループがあったりしますけれど、当時もすごい江戸文化を切り開いた方ですよね。

堀口 はい。蔦屋重三郎、通称蔦重(つたじゅう)は、江戸時代中期に活躍した版元です。喜多川歌麿、東洲斎写楽などをプロデュースしたことでも知られておりますが、彼は吉原で生まれて、吉原で育って、吉原の公界的な側面を利用して出版業界で大出世した人なのです。

―― はい。

堀口 こちらは「江戸名所図会 新吉原町」ですが、蔦重はまさにここに描かれている新吉原遊郭の中で生まれて、7歳のときに蔦屋という屋号の家の養子に入ったのです。遊郭の中は妓楼(ぎろう)だけではなくて、妓楼に客を案内する引手茶屋(ひきてぢゃや)とか、お茶屋さんはもちろんですが、八百屋さんがあったり、髪結い床とか、人々が生活するためのさまざまな商売の店が立ち並んでいたわけです。蔦屋もこの中で商売をやっていた家でして、一族が引手茶屋の経営も行っていたようなのです。蔦屋はそこで、『吉原細見』という吉原のガイドブックとか、遊女の評判記を販売する版元としてキャリアをスタートさせます。

―― やはり最初から、そのような出版物を出していた版元ではあったわけですね。

堀口 そうですね、小売店というような感じでスタートをさせるのですけれども、やがて独立して、吉原の出入り口にある大門前の五十間道(ごじっけんみち)というところに店を出します。

―― はい。

堀口 拡大するとこちらです。

―― はい。

堀口 手前側が日本堤で、吉原への出入り口となるランドマークの見返り柳があります。その横のスロープ、衣紋坂を下って、大門...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
金融政策正常化の難しさ(2)今後の可能性と日本への影響
欧米で高まる金融政策正常化の背景と今後の可能性
植田和男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将