編集長が語る!講義の見どころ
「動くガンダム」に学ぶ工学と未来/橋本周司先生×市川紗椰氏【テンミニッツTV】

2025/01/28

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

工学という学問は、本来、「夢」と密接にかかわりあう部分があります。

何しろ工学は、科学技術を社会のために役立てたり、科学技術を活用してまったく新しい製品や製法を生み出す学問です。蒸気機関やコンピュータなどといった技術が社会をがらりと変えたことはいうまでもありませんが、常にそのような可能性に向き合っている学問といえましょう。

本日は、そのような「工学のおもしろさ」をリアルに実感できる橋本周司先生(早稲田大学名誉教授)と市川紗椰氏(モデル)の講義を紹介します。

2020年12月から2024年3月まで、横浜の山下埠頭に「動くガンダム(GUNDAM FACTORY YOKOHAMA)」がありました。ガンダムといえば、いうまでもなく大人気ロボット(モビルスーツ)アニメのキャラクターです。身長18メートルのモビルスーツに人間が乗り込んで戦う……という物語ですが、なんと、その18メートルの実物大で、実際に動くものをつくってしまったのです。

橋本周司先生は、そのプロジェクトのリーダー(技術監修)を務めていらっしゃいました。

今回の講義では、そのプロジェクトを事例の一つとしつつ、工学の素晴らしさ、学問の素晴らしさについて縦横無尽にお話しいただいています。「ガンダムを、よく知らない」という方であっても、見ないと「もったいない」内容です(映像で、実物大ガンダムの動きの一端を知ることもできます)。

◆橋本周司×市川紗椰:「動くガンダム」に学ぶロボット工学と未来(全6話)
(1)感動を創造する「動くガンダム」
18メートルの「動くガンダム」、感動を創造する開発秘話
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5574&referer=push_mm_rcm1

そもそも、なぜ橋本先生は「実物大のガンダムを動かす」という、途方もないプロジェクトに参加されたのでしょうか。

そのことについて、橋本先生は次のようにおっしゃいます。

《100号の絵は100号の絵の前で見るということによって得られる感動がある。という意味で、ガンダムもきっとそうに違いないと思ったのです》

さらに、橋本先生は「夢を押し上げる」とも言及されます(第2話)。

いま日本も世界も元気がないのは、夢と現実のギャップが少なすぎるからではないか。昔であれば、遠くの人と話したい、遠くが見たい、月へ行きたいなどといった夢があった。しかし、人間はそれをテクノロジーの発達で実現してきた。ドラえもんのマンガに出てくる夢の道具の機能でさえ、一部は実現化しつつある。

このような時代に、理工系は「夢をいかに高く掲げるか、持ち上げるか」ということを追求しなければいけない。やはり適正な量のギャップがないと、元気の素にはならない。……まことに、おっしゃるとおりでしょう。

さらに両者の対談のなかで、「最近、SF作品が下火」ということも指摘されます。最近は、SF作品を世に問うと「ここに設定の穴がある」「ここの技術は不可能だ」などの指摘がすぐにきてしまう。だからつくりづらくなって、異世界ものであったり、ファンタジー寄りになってしまっているというのです。

橋本先生は、それも「夢の種がない状況だ」とおっしゃいます。では、どうやって「夢の種」をつくるのか。

その点を踏まえて、実際に「実物大の動くガンダム」をつくるときに、どのような課題があったのかをお話しくださいます。

安全性を考えると、「こなれた技術」をいかにうまく組み合わせて使うかが課題になる。技術者は「このようなスペックのモノを設計しろ」といわれることは慣れているが、そのスペック自体を設計するところから始めなければならないことが大問題だった。いろいろな技術者が集まったプロジェクトで、お互いの言語が違う、常識が違うという壁もあった。だが、皆、ガンダムに対して夢を持っていたので、乗り越えられた……。

現場の状況が、いきいきと伝わってくるお話です。

橋本先生も、実際にガンダムのプラモデルにモーターなどを入れて、動かす実験をしてみたそう。その映像もご紹介くださいますが、橋本先生の遊び心とプロ魂を知ることができる、とても興味深いものです(第3話)。

そして橋本先生は、こうおっしゃいます。

《今の世の中、何かやろうというと、できない理由はたくさんある。できない理由を探すのを得意な人もたくさんいるのですけれど、そうではなくて、どうやったらできるか考える。とにかくできるようにしよう、やろうということがファイトの素だという気がするのです》

第4話からは、橋本先生のロボット研究史に迫ります。

ヒト型の機械をつくる意義がどこにあるか。心を持った機械ができるとすれば、その根源は「生きたいという種」をつくることだ。化学反応で動くロボットだって考えられる。心を持ったロボットをつくるためには、アシモフの「ロボット三原則」を超えないといけない。

このあたりも、実際に映像を示しながらお話しくださいますので、ぜひ講義本編をご覧ください。

最終第6話では、「自然科学、社会科学、人文学、工学の違い」も語られます。橋本先生は「それぞれがどう違うのか」を端的にお示しくださいます。また、橋本先生は、自分でやってみて、その面白さに気づくことが重要だと強調されます。たとえば橋本先生は、実際にピタゴラスの定理を自分で証明するようなことにも取り組むそう。

そのようなお話からも、とても多くの気づきをいただくことができます。

実は、本講義を収録するにあたって、私自身も横浜の「動くガンダム」を見に行きました。その折は、外国の方々も多く来場していたのですが、私のすぐ前に東欧系(?)の親子づれがいて、お子さんが目をキラキラさせていたことが、とても印象深い光景でした。

たしかに実物が動くのを見ると、得もいわれぬ感動を覚えました。実物大ガンダムは、大阪万博へ移設して展示されますが、今度は動かないそう。その点は、何とも残念なことです。


(※アドレス再掲)
◆橋本周司×市川紗椰:「動くガンダム」に学ぶロボット工学と未来(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5574&referer=push_mm_rcm2


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