編集長が語る!講義の見どころ
第2の人生を明るくする労働市場改革/宮本弘曉先生【テンミニッツTV】
2025/02/04
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
人生百年時代をどう生きるのか。これはとても大きな課題です。
現在、多くの企業で定年は60歳。その後、65歳まで「継続雇用」が行なわれるケースも多くありますが、これは「高年齢者雇用安定法」の定めによるもの。
「高年齢者雇用安定法」によれば、定年を65歳まで引き上げるか、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)を設けるか、定年制を廃止するかが「義務」(2025年4月~)となっています。
また、同法律によれば、70歳まで同様の措置を取ったり業務委託などを導入することが「努力義務」とされています。
しかし、そのような「雇用延長」では多くの場合、給料も大きく下がり、仕事の権限もアルバイト的なものになることが多いようです。
なぜ、そうなってしまうのか。それは日本では、高齢者の「労働市場」がまったく十分に機能していないからでしょう。
たとえば、定年後に他の企業で働こうと思っても、あまり働き口が見つからないことが多いもの。であれば、たとえ多少待遇に不満であっても、これまで働いてきた企業で働かざるをえません。とすれば、企業側としては、労働条件を引き下げることは、まことに容易いこととなります。
一方、少子高齢化の進展によって人口が減り始めた日本では、2040年には、働き手不足が1100万人規模に達するという予測もされています。
どうにも「ちぐはぐ」な現在の日本の制度。本日は、どうしていくべきかを明快に論じていただいた宮本弘曉先生(一橋大学教授)の講義を紹介します。
◆宮本弘曉:第2の人生を明るくする労働市場改革(全7話)
(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5663&referer=push_mm_rcm1
講義の冒頭で、宮本先生はクイズを出されます。
1つ目が、「女の子は2人に1人、男の子は4人に1人」です。これはいったい何か。
2つ目は、「今から約60年前の1963年には153人だったが、2023年には9万人以上」になっている人たちがいます。これは何か。
この答えは、講義第1話をご覧ください。いずれも人生100年時代を象徴する数字です。
そのうえで、諸外国では「定年」がないケースが多いことも示されます。年齢で退職させることは、年齢差別になるのです。また、労働市場の問題点や課題も示されます。高齢者が働きにくい、低賃金、正規・非正規の格差、女性が仕事と家庭を両立しにくい、チャンスが一度しかない……。
この背景には、いうまでもなく「日本的雇用慣行」があります。かつてはうまく機能したそのような慣行も、いまでは前提が変わってしまったので、すっかり足かせになっている。これからは「躍動的な労働市場」へと改革していくことが必須なのです。
では、なぜ、どのように前提が変わってしまったのか。その点は第3話で語られます。現在の状況を理解するためにぜひ見ておくべきパートです。
ちなみに、65歳で退職して90歳まで生きたと仮定した場合、年金以外に2000万円が必要だとされます。一方で、健康寿命も延びているので、働きたい人は今後、もっと働いてもいい社会になったともいえます。
そのためにも、「流動的な労働市場」が必要になります。日本の転職率は年間5パーセントほどですが、アメリカは24パーセント。平均勤続年数は日本が約12年(パートなど含む)なのに対し、アメリカが4.1年です。
さらに宮本先生は、労働市場が流動的な国ほど、賃金の伸びが大きいことをデータでお示しくださいます。労働市場が流動的であれば、このメールの最初に書いたような「企業側に有利な面」もないわけですから、それはまことにうなずける話です。
なぜ、日本の労働市場が硬直してしまっているのか。それは、そのような仕組みになっているからです。退職金の優遇税制などの社会保障制度、「整理解雇の4要件」など裁判所の判例を元に運用されている不明瞭なルール、年収の壁……。
これは労働者の既得権益にもつながる話なので、なかなか改革が難しい話です。先の自民党総裁選で、小泉進次郎氏が「労働の自由化」を少し提示しただけで、大マスコミを中心に批判の集中攻撃を受けたことも記憶に新しいところです。
では、どう変えていくべきなのか。宮本先生はさまざまな具体策を打ち出してくださいます。ここは、皆さまそれぞれの問題関心と照らしあわせながら、ぜひともじっくり学び、考えるべきパートといえましょう。
講義の最後は、質疑応答編です。ジョブ型雇用、スウェーデンの制度との比較、日本の高齢者の貯蓄率の高さと若年層の低賃金、適正な人口など、多面的かつ率直な質問に宮本先生がお答えくださるパートですので、ここも必見です。
これから従来の常識を大きく変えていかなければならないことが、心の底から理解できるようになる講義です。
(※アドレス再掲)
◆宮本弘曉:第2の人生を明るくする労働市場改革(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5663&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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