編集長が語る!講義の見どころ
鎌田東二先生のご逝去を悼んで【テンミニッツTV】

2025/06/03

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。

鎌田東二先生が、5月30日にご逝去されました。心より哀悼の意を表しますとともに、謹んでご冥福をお祈りいたします。

テンミニッツTVでは、現在配信中の《おもしろき『法華経』の世界》も含め、これまで14シリーズの講義をお話しいただいてまいりました。さらにこの後、今年の3月3日に収録させていただいた鼎談講義がございますが、こちらも現在の法華経講義の後に、配信させていただければと思っております。

2021年末にがんに罹患されてからも、大国主神の講義、空海の講義、法華経の講義、さらに空海の現代的意味を問う鼎談講義へと収録は進みました。がんで大変なご状況であるはずなのに、鎌田先生は驚くほど精力的に活動を続けられ、全国を飛び回っておられました。ご自身で「ガン遊詩人」と名乗っておられたとおりでした(そのお姿は、鎌田先生ご自身のYouTubeチャンネルにも遺されています)。

テンミニッツTVでの「大国主神講義」は、がんの転移がわかりステージ4と告知されてから半年後の収録でした。このとき鎌田先生は、大国主神――生と死を往来し、周りから助けられながら国づくりを進めいてった最弱にして最強の神、さらに縁結びの神――をテーマとしつつ、壮大なスケールで「ケア」や「生きることの意味」についてお話しくださいました。ご自身の「大国主神」についての長編詩の朗読も、胸に深く響くものでした。

◆鎌田東二:大国主神に学ぶ日本人の生き方(全9話)
(1)大国主神のメッセージを現代に生かす
がんの告知を受けて大国主神のケアと自己回復力に共感した
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5170&referer=push_mm_rcm1

そして、現在配信している「法華経」講義。ご自身のご病状を率直にお話しくださいつつ、法華経の世界を描いてくださいましたが、そのあまりに透徹した境地に、私もインタビューをしつつ泣きそうになりました(もちろん務めて明るくしておりましたが)。しかし鎌田先生はどこまでもポジティブで、どこまでも飄々(ひょうひょう)とされておいででした。

これらの講義で鎌田先生は、病を得てからの、素晴らしい心の持ちよう、生き方のありようを、身をもって教えてくださいました。本当にありがたいことでした。

本日は、現在配信中の《おもしろき『法華経』の世界》をあらためて紹介させていただきますが、鎌田先生の講義は日本神話、世界神話を縦横無尽に比較していくシリーズから、宮沢賢治についての講義まで、さまざまございます。ぜひ、諸々ご覧いただければ幸いです。

◆鎌田東二先生の講師ページ(講義一覧)
https://10mtv.jp/pc/content/lecturer_detail.php?lecturer_id=273&referer=push_mm_rcm3


■『法華経』はSFだ~なぜ日本人に大きな影響を与えたか/鎌田東二先生

日本では、最澄が開いた天台宗をはじめ、多くの宗派で『法華経』が重要な経典として重んじられてきました。

一方で『法華経』の講義というと、「『法華経』か……う~ん」「なんか難しそうだし……」という声も挙がることでしょう。しかし、この鎌田先生の講義は、そのような方にこそ、ぜひ一度ご覧いただきたい内容です。

鎌田先生のとても明朗かつ清澄で、とても生き生きした講義は、自分自身の人生を考えるうえでも本当に必見の講義です。

◆鎌田東二:おもしろき『法華経』の世界(全10話予定)
(1)法華経はSFだ!
「法華経はSFだ!」というナラティブの神秘的体験
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5764&referer=push_mm_rcm5

鎌田先生の講義がどのようなスタンスで語られたものか。第1話で鎌田先生が次のようにお話しくださいます。

《フィジカルには間違いなく末期がんに近づいているらしいのです。これは気にし始めると、けっこうつらいものです。それなのに、全然つらくないどころかむしろ愉快なのです。「ああ、僕はがんなのだなあ。(がんが)一緒に働いてくれているのだなぁ」と逆に私が活性化している》

《もう自然の状態で、いろいろなものがシャワーを浴びるようにサーッと出てくる。私が目で『法華経』を読むと、向こうからフワーッといろいろなものが見えてくるわけです》

《そういう状況でいろいろなものが見えるので、今、人生で一番冴えている。読書ができる。これまでは何を読んでも知識でした。知識というのは理性的なメカニズムで、いわば数学のようなものなのです。だから、どういうふうに辻褄(つじつま)を合わせると成立するのかが理性的に解釈できるでしょう。(今は)そういう理性的な理解のしかたを超えてしまっている》

《一挙に映像として世界のビジョンを見せられるような。絵巻のように見せられるから、分かりやすいことこの上ない……》

あまりに透徹した境地といわざるをえません。

この講義第1話のタイトルにもあるように、鎌田先生は「法華経はSFだ!」と喝破されます。

そこで鎌田先生が提起するのが、スタンリー・キューブリック監督が世に問うた不朽のSF映画『2001年宇宙の旅』です。そのラストシーンのようなスペクタクルなのだといいます。

《(※映画の主人公の)ボーマン船長が、木星の中にグーッと引き込まれていく。レインボーのカラーの中をガーッと色彩が…。ああいうふうに『法華経』が見えてきたわけです》

さらに、こうおっしゃいます。

《現実的には何を予言したかというと、「おまえは将来においてブッダになる」という予言なのです》

さらにたとえば、『法華経』の「従地涌出品(じゅうじ・ゆじゅっぽん )第十五」というパートでは、大地に無数の割れ目ができて、無数の菩薩が湧き出してくる光景が描かれます。これを鎌田先生は「菩薩ビッグバン」だとおっしゃいます。そのようなスペクタクルでSF的なイメージが具体的に次々と展開していくのです。

鎌田先生のご専門は「神道学」です。その鎌田先生が『法華経』に魅かれたのは、なぜなのでしょうか。

よく知られているように、明治以前の日本の宗教は、神道と仏教が融合した「神仏習合」がベースでした。鎌田先生は、実は『法華経』は「神道」と大いに共通しているとおっしゃいます。

鎌田先生にはこれまで、日本や世界の神話の世界を、様々にご紹介いただいてきました。そのなかで、北欧神話は本当に暗い物語で、ある意味では世界滅亡に向かうような深刻で悲観的な世界観が基調になっていることもお話しいただきました(《北欧神話の基本を知る(全2話)》)。

一方、日本神話は、大いに明るい世界観で貫かれています。天も地もきわまりなく続くという「天壌無窮」の考え方や、この世界をメンテナンスしながら次代に未来に受け継いでいこうという「修理固成」の考え方、さらに生きとし生けるものに産霊(ムスヒ)という生命力が宿っているとする考え方……。

そして『法華経』も楽天的で明るいのだと、鎌田先生はおっしゃいます。「もう大丈夫だよ」と言ってくれる。明るい未来や救済の未来を描き出してくれる。さらにいえば、一見、楽天的に見える『法華経』だが、それは大いなる苦悩をふまえて、これだけの救済の世界観を編み出したのだと。

「神道」と『法華経』に大いに共通する部分があるからこそ、『法華経』は日本人に広く受け入れられ、日本の精神史のなかでも重要な位置を占めるようになったということでもありましょう。

では、『法華経』では具体的にどのようなことが語られるのか。それについては、ぜひ講義本編をご覧ください。

鎌田先生のお姿、そして語り方から、「日本人の哲学のあり方」さらに「いかに生きるべきか」が、おのずと見えてくる講義です。


(※アドレス再掲)

◆鎌田東二:大国主神に学ぶ日本人の生き方(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5170&referer=push_mm_rcm2

◆鎌田東二:おもしろき『法華経』の世界(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5764&referer=push_mm_rcm6

◆鎌田東二:講師ページ(講義一覧)
https://10mtv.jp/pc/content/lecturer_detail.php?lecturer_id=273&referer=push_mm_rcm4


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