編集長が語る!講義の見どころ
日本の「昭和の戦争」の真実を知る/小澤俊夫先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/12/08
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
今日は12月8日。太平洋戦争の開戦から79年目の日となります。
日本人はどうして、あの戦争に突入したのか。そして、なぜ敗北したのか。そのことを考えるにあたっては、太平洋戦争の10年前に起きた満洲事変、さらに満洲事変から6年後に起きた日中戦争を振り返ることが、とても重要です。実はそこには、多くの複雑な事情や、さまざまな理想があり、そして挫折の芽もすでに潜んでいたのです。
本日は、その大きな参考となる講義を紹介いたします。指揮者・小澤征爾さんの実兄である小澤俊夫先生(小澤昔ばなし研究所所長/筑波大学名誉教授)に、父・小澤開作の満洲事変や支那事変(日中戦争)時の活動について語っていただいたものです。小澤開作は知名度は低いですが、実は両事変において大きな役割を果たしていました。またその活動は、当時の日本人の心意気や理想を体現したものでもありました。
小澤俊夫先生の洒脱な語り口に魅了されながら、当時の真実が学べる講義です。
◆小澤俊夫:小澤開作と満洲事変・日中戦争(全10話)
(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
「五族協和」に命を懸けた小澤俊夫・征爾・幹雄兄弟の父
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3606&referer=push_mm_rcm1
小澤征爾さんの「征爾」の字が、満洲事変を主導した板垣征四郎と石原莞爾の名前から取られていることをご存じの方もいらっしゃるかもしれません。小澤俊夫先生、小澤征爾さん、そして俳優の小澤幹雄さんの父・小澤開作は、満洲事変の当時、長春(満洲国時代は新京)で歯科医を営みつつ、満洲在住の日本人の集まりである「満洲青年連盟」の一員として活動をしており、満洲事変や日中戦争で重要な役割を担っていたのです。
満洲事変直前の1931年7月、長春近郊で「万宝山事件」が起こります。これは朝鮮人農民が開拓していた農地や用水路を、中国人の官憲が破壊しようとしたことに端を発するものでした。実は当時、満洲で日本人は厳しい排斥運動に直面していました。満洲を支配していた張学良政権は、「日本人や朝鮮人に土地を貸したり売ったりした者は、国土を盗売した者として処罰する」という「盗売国土懲罰令」まで制定していました。
当時、満洲に日本人が居住していたのは、日露戦争後、日露間で結ばれたポーツマス条約と、日清間で結ばれた満洲善後条約(満洲ニ關スル条約)に基づくものでした。にもかかわらず、いわば国際法違反のような形で、迫害・排斥が続きます。とりわけ、立場の弱い朝鮮人(朝鮮併合後、日本国民として扱われていました)に対する攻撃が激しく、満洲各地で土地を奪われたり、追放されたり、監獄に入れられるケースが続出します。
万宝山事件に直面した朝鮮人農民たちは、当時、満洲青年連盟長春支部の中心人物であった小澤開作に救いを求めます。義憤にかられた小澤開作は、満洲青年連盟を突き動かし、万宝山事件に対する抗議活動を行うとともに、事実を広く知らせるべく演説会や日本遊説などを行って世論を喚起していきました。
当時、日本の外務大臣は幣原喜重郎。「平和外交」を標榜する幣原は、満洲での排日運動に有効な手を打ちません。繰り返される迫害に、在満邦人の怒りと不満は高まっていました。この大きな怒りと不満が、満洲事変の大きな背景となっていくのです。
満洲事変が勃発すると、小澤開作や満洲青年連盟は積極的に支援活動を展開します。小澤開作は私費を投じて、なんと長春に飛行場を建設。さらに満洲青年連盟のメンバーとともに、満洲人や漢人への宣撫工作に当たります。
小澤開作はじめ満洲青年連盟のメンバーたちは「五族協和」という理想を真剣に掲げ、権益主義を排し、満洲に住まうすべての人々のための独立国を建国すべく奔走。満洲国協和会の結成に至ります。しかし、やがてその理想は挫折していくことになるのです。
小澤開作はその後、北京に移り、日中友好の実現を夢見て、中国農民の生活向上のために村々に合作社(一種の協同組合)を建設していく活動に邁進します。しかし、それもやがて軍の方針と衝突することになり、昭和18年に日本に帰国します。
小澤開作の中国での活動のエピソードや、昭和史を彩る多くの軍人たちや小林秀雄をはじめとする有識者たちとの交友から、当時の雰囲気や日本人の想いが手に取るように伝わってきます。また、帰国後に奔走した和平工作や、終戦の日に語った「日本人は長いこと涙を忘れてきた。これで涙を知ることはいいことだ」という言葉、さらに戦後の小澤俊夫・小澤征爾兄弟との逸話などから、小澤開作の魅力的な人柄をうかがい知ることができます。
「日本は世界の五大国の1つ」とされた時代に生きた日本人は、いかなる理想を掲げ、いかに行動したのか。そしてそれは、なぜ挫折したのか。満洲における岸信介の姿などをつぶさに見て、さまざまな現場を経験してきた小澤開作の姿から、今こそ多くを学ぶべきではないでしょうか。
(※アドレス再掲)
◆小澤俊夫:小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3606&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「“絶対差”の中で勝負しろ」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=675&referer=push_mm_hitokoto
当たり前のことを徹底してやった時、初めて人の心は動く
上甲晃(志ネットワーク代表)
「“相対差”の中で競争するな。相対差の世界は抜きつ抜かれつ、今日勝っても明日は負ける。そういうレベルで競争していると、おちおちしていられない。“絶対差”の中で勝負しろ。“絶対差”は、この世界では絶対に追いつかれないという差である」
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて今月12月のプレゼント本ですが、今週の人気講義でも取り上げている頼住光子先生の著書『正法眼蔵入門』(角川ソフィア文庫)です。
この本は「死の直前まで20年にわたって書き継がれた大著『正法眼蔵』の核心を描いた」もので、鎌倉時代初期の禅僧・道元を理解するにはもってこいの一冊です。しかも、後日配信予定の「道元編」講義の参考文献としても最適な書ということで、ご応募がまだという方はぜひ。
<ご応募がまだという方はサイトトップの右のほうをご覧ください>
https://10mtv.jp/
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