編集長が語る!講義の見どころ
高市総裁誕生…いま松下幸之助の「無税国家」構想を考える/松下幸之助【テンミニッツ・アカデミー】
2025/10/07
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
10月4日の自民党総裁選挙で、高市早苗新総裁が誕生しました。
高市早苗さんについては、支持される方、懸念される方、それぞれいらっしゃることでしょう。しかし、高市早苗さんの勝利の瞬間、風景が何かガラリと変わったことは確かです。
現下の国の危機的な状況において、日本初の「女性総理」への道が開かれたこと自体に、日本の底力と不思議な運があるように思えてなりません。
よく知られているように、高市早苗さんは松下政経塾のご出身です。半世紀近くも前、まだ日本がここまでの危機に直面していないなかで、松下幸之助(パナソニック創業者)が早くもわが国の未来を深く憂いて設立した松下政経塾。
名を遂げた経営者が政治家を育てる塾をつくることは、ある意味では「一線を越えた」ことに他なりません。にもかかわらず、はたして、松下幸之助はいかなる思いを胸に政経塾を設立したのか。
本日のメルマガでは、松下幸之助が「理想の政治」のあり方と「無税国家」構想を語りかけている動画を紹介いたします。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、松下幸之助は、「無税国家」構想を真剣に希求していました。「経営の神様」とも呼ばれた松下幸之助は、なぜ「無税国家」を唱えたのでしょうか。
今から見ると、合理的な思考の持ち主である凄腕経営者が考えるようなものとは思えないかもしれません。しかし、松下幸之助は本気でした。
その本気度が伝わってくるのがが、今回紹介する講義シリーズです。
◆松下幸之助:松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(全6話)
(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1130&referer=push_mm_rcm1
音声がとても聞きづらい講義ですが、テンミニッツ・アカデミーでは語っている内容を文字起こしして整えたテキストもありますので、ぜひテキストをお読みいただき、耳を傾けていただければと思います。
そもそも無税国家というのはどのような構想か。松下幸之助は昭和53年(1978)7月号の月刊誌『Voice』で、次のような趣旨のことを書いています。
《かりに明治初年から国家予算で年々10%なら10%の剰余金を生み、それをこの百年あまりずっと積立て、複利でまわしていたら、(戦争もあったりして一概にいえないが)今の貨幣価値で考えて1千兆円ぐらいの蓄積ができていたのではないか。その1千兆円を政府が運用すると、金利を5%としても年に50兆円の収入になる。今年度(昭和53年度)の予算は34兆あまりだから、50兆円あればおツリがくる。もしこの百年間そういうことをやってきていたら、いまごろは、いわば無税国家というか、さらに一歩進んだ収益分配国家になっていたと考えられる》
金利が「あった」時代の発想ですが、しかし実際にシンガポールなどのように、この構想に近いことを実現しつつある国家もあります。
松下幸之助は、昭和51年(1976)に『私の夢・日本の夢 21世紀の日本』(PHP研究所)という本を発刊しています。これは「2010年に日本が理想国家となり、各国のリーダーや学者が日本に視察にやってきた」という設定で書かれた一種のユートピア小説ですが、この本でも松下幸之助は、たとえば税金について、次のような言葉を重ねていきます。
「納税を喜ばないというのは、やはり喜ばないだけの理由がある」
「いわゆる国事多端のときでも、国民の心情なり生活の実態を無視した重税は、これを決して課してはならない」
「人情というか、人間性に立脚した税制を究め、実現していくことが大切」
「国費というものは、これだけいるから国民から集めようというのではなく、国民の実力に応じて集まった税金を基にして、これを公共の福祉のために最も有効に使うものである」
一方、同書で、社会福祉についても次のように喝破しています。
「社会保障は国として大いに推進していかなければならない1つの聖なる仕事だが、国としての実力に相応した範囲でやらねば長続きしない」
「国民の勤労意欲を増進しつつ、しかも社会保障を充実していくという、その調和点を『人間性』にてらして考え、実施していく」
「『健康体にして働かざる者は食うべからず』とでもいった原則のもとに、老人も喜んで働き、お金を稼ぐ。『もうお年寄りは働かなくて結構です』というのは、老人に対する親切のようでいて、かえってある意味では老人虐待である」
半世紀近くも前から、「生涯働いたほうが幸せだ」と高らかに訴えていたことに、あらためて驚かされます。
たしかに、松下幸之助の主張は夢物語かもしれません。しかし、大胆な構想を「荒唐無稽」と笑ってしまったら、そこから先には一歩も進めません。
強く願わなければ何事も実現しないことを、そして、既成概念にとらわれていたら何の合理化も改革もできないことを、松下幸之助は長年の経営実践のなかで熟知していました。
松下幸之助は上述の『私の夢・日本の夢 21世紀の日本』を刊行するに当たり、PHP研究所の研究員と合宿まで行ない、一字一句、徹底的に吟味したといわれます。
今回紹介する講義では、この本での提言ほど詳細な内容は述べていませんが、第4話で次のように語りかけます。
《今は、日本に百年の計というような、国家百年の計がない。だから、今日の政治がもたもたしている。目標がないからどこをどう通って行ったらいいか足元が分からない》
《政治の面で、今このままいったら破綻してしまう。全然足りないから金が。増税、増税と、増税してもこれ以上できない。だから、無税国家をやれと》
その発話から、真剣さがひしひしと伝わってきます。
松下幸之助は、家電や電器の仕事でも、「設計を根本から見直すことで、大胆なコストカットを実現する」ことを、幾度も成功させてきました。日々の仕事のなかで澱(おり)のように沈殿してきた「当たり前」は、実は決して「当たり前」ではない。ただ考えることを怠けて、楽しているだけだ――そのことを、「経営の神様」の素直でまっすぐな視線が教えてくれます。
なお、この講義では、松下政経塾一期生の野田佳彦さんが、思い出を交えつつ解説されています。では、高市早苗さんは、この松下幸之助の「深い問題提起」にどのように答えられるのか。
そのようなことも想像しながら、ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆松下幸之助:松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1130&referer=push_mm_rcm2
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