編集長が語る!講義の見どころ
(今を知る)原発事故と東日本大震災から15年/門田隆将先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】
2026/02/27
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
東日本大震災、そして福島第一原発の事故が発生してから15年です。あのとき、皆さまはどのようなご状況だったでしょうか?
天災の多い日本に住まう一人として、けっして忘れてはならぬことですが、しかし、記憶は薄れてしまうことも確かです。
もちろん薄れて良い記憶もあります。しかし、あのとき何が起きたのか、誰がどのように危機に立ち向かったのか、日本人として何をしなければならないのか、そして天災をいかに受け止めるべきなのかなど、しっかりと考え続けていく必要があるでしょう。
「忘れないこと」のなかから、新たな希望の未来が芽吹いてくるはずです。今回は、そのような講義群を集めました。
■今を知る講義まとめ:原発事故と東日本大震災から15年
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=283&referer=push_mm_feat
◆門田隆将先生:福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6147&referer=push_mm_rcm1
◆梅野健先生:地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5656&referer=push_mm_rcm2
◆片田敏孝先生:東日本大震災の8年前から釜石で防災教育を行ってきた理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2682&referer=push_mm_rcm3
◆鎌田東二先生:スサノヲ神話は火山現象?…寺田虎彦の地球科学的な解釈
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4173&referer=push_mm_rcm4
◆津崎良典先生×五十嵐沙千子先生×板東洋介先生:天譴説という儒教の知恵――統治のあり方を点検するために
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6080&referer=push_mm_rcm5
■ピックアップ講義:「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(門田隆将先生)
本日は特集から、門田隆将先生(作家/ジャーナリスト)に、福島第一原発の事故の折に吉田昌郎さん(福島第一原発所長)はじめ現場のプラントエンジニアの方々が、いかに事態を収束すべく必死の苦闘をされたのかを克明に語っていただいた講義を紹介します。
東日本大震災で外部電源を喪失した後、想定の3倍を超える高さの津波に襲われて非常用発電機も破壊され、電源喪失に陥った福島第一原発。そのため冷却ポンプによる炉心の冷却がままならなくなり、炉心溶融によって発生した水素ガスや水蒸気によって原子炉格納容器の圧力が高まります。
もし、このまま圧力が高まって格納容器が爆発するような事態になったらどうなったか。
後に吉田昌郎さんは「チェルノブイリの10倍の危機に陥る可能性があった」と語りました。福島第一原発には原子炉が4つある。もし1つでも爆発すれば、人が近づいて対処できなくなる。すると次々に他の原子炉の状況も悪化して4つの原子炉全てがやられる可能性があった。加えて、近傍にある福島第二原発にも近づけなくなる。そうなれば、最大で10基の原発がやられることになり、最大でチェルノブイリの10倍の被害を及ぼしかねなかったというのです。
そうなったら日本は三分割にならざるをえなくなります。西日本と北海道だけが人が住める領域となり、東日本には誰も立ち入ることができなくなる……。
吉田昌郎さんと現場のプラントエンジニアの方々は、この重大な危機を明確に見据えていました。それを避けるために、何ができるのか。取れる手段がかぎられるなか、知恵と機転と勇気をふりしぼり、想像を絶する苦闘を続けていくのです。
あのとき、現場で何が起きていたのか。そのときの現場の人々の想いとは?
門田隆将先生は、吉田昌郎さんやプラントエンジニア、そしてそのご家族、協力会社員の方々から、菅直人総理、班目春樹氏(当時原子力安全委員会委員長)、さらに現場に急行した自衛官の方々まで100名近くを取材し、ノンフィクション作品として『死の淵を見た男』(PHP研究所)を2012年に発刊されました(2016年に角川文庫)。
今回は、実際にいろいろな方々を取材した折の光景がどのようなものだったのかということも含め、迫真のお話をいただいています。あのとき、何が起きていたのか。現場で人々は何を考えていたのか。まさに必見の講義です。
◆門田隆将先生:「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(全6話)
(1)なぜ日本人は突入できたのか?
福島第一原発事故…日本の危機と闘った吉田昌郎と現場の人々
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6147&referer=push_mm_rcm6
もちろん、あの事故について、そして原子力発電については、皆さま様々な考えをお持ちだと思います。しかし、門田先生はこうおっしゃいます。
《(本作は)原発賛成とも原発反対とも、どっちにも取られたくないので、それをものすごく意識して書きました。私は推進でも反対でもないですから。そのどちらかに取られることなく、「人間ドラマ」として、日本人の闘いや毅然とした生き様を描く作品です》
あのとき、あまりにも凄まじいバッシングが東京電力に対して向けられました。この門田先生の言葉どおり、反原発のイデオロギーから糾弾を重ねるメディアもありました。
もちろん、事故の責任が東電にあることは間違いありません。しかし私自身は当時から、厳しい事態に必死の対処を行ない、また今後も長期間にわたって事故対処をしていかなくてはならない方々を、ただただバッシングして貶めるようなことが「人の道としてどうなのか」という強い疑問を拭うことができませんでした。
事故の責任はどこにあり、どのように対処すべきか。そのことについて、原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)は、「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」には原子力事業者の責任に帰さないと定めています。
当時の民主党政権内部でも、東電に責任を課そうとする枝野幸男官房長官らと、原賠法の「異常に巨大な天災地変」に当たるものであって国と東電の両方に責任があると主張する与謝野馨経済財政政策担当大臣で激論がなされたことは、よく知られています。その結果、枝野氏や菅直人総理の強い意向もあり、現在の補償スキームになりました。
ただ、あの折の政府の対応が、凄まじいバッシングの背景となっていたことは間違いのないことでしょう。そのことを、あれから15年を経た今、あらためて思い起こしつつ、現場の状況を振り返ってみることも、より客観的に俯瞰できるぶん、意味あることと思われます。
門田先生の『死の淵を見た男』は、映画『Fukushima50』やNetflixドラマ『THE DAYS』の原作となったので、門田先生のところには海外の取材陣もよくやってくるとのこと。そのような場合、決まって「なぜ日本人は突入できたのか」と質問されるそうです。
もちろん、ベント作業のために現場の方々が原子炉に突入したことを指しての質問です。
現場のプラントエンジニアリングの方々は、どのような想いを胸に突入したのか。さらに現場メンバーは「吉田昌郎所長となら死ねる」と思ったそうですが、それはなぜなのか。
また、2014年5月20日には『朝日新聞』が「所長命令に違反 原発撤退」「福島第一 所員の9割」と一面トップで大見出しを打ち、「第一原発にいた所員の9割が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある」という誤報をしました。後に朝日新聞の社長が引責辞任する事態にまでなりますが、そのようなことがどうして起こったのか。
さらに、吉田昌郎所長が、事前に津波の被害を想定していたのに対処しなかったという言説が流されたこともありましたが、その真相はどのようなことだったのか。
そして何より、ベント突入のメンバーを決めるときの現場の状況や、実際に原子炉に突入した方々が見たものとは? その後、最小限の69人が現場に残ることになった光景とは?
最後に69人が残ることになった場面では、現場に残ろうとした若い人たちに、責任者がこう怒鳴ったといいます。
「馬鹿野郎! 俺たちが死んだら、次はお前が来るんだ。お前が死んだら、次はお前だ。何度でも闘って、この放射能被害の拡大を、俺たちで止めるんだ」
すべて取材に忠実なノンフィクションであるだけに、言葉の一つひとつが胸に響きます。
あらためて見えてくるのは、あのとき、あの場にいた方々は、本当にわれわれと同じような日本人だったということです。しかし現場のプロだった。現場のプロだけに、強烈な責任感を胸に、次々と機転を働かせて、必要な対処を次々と打っていった。そして幾度も幾度も、命の危険のある突入を繰り返した……。
その行動はわれわれの胸を打ってやみません。やはり人間としての底力が「肝」であることを痛感させられます。
これから事故復旧のためにも「人間の底力」「機転」「創意工夫」「粘り強さ」が必要不可欠であることは間違いありません。だからこそ、あの折の苛烈なバッシングや責任問題の帰結などについて、あらためて深く思いを巡らさざるをえなくなります。
あのときの危機対応を振り返りつつ、日本人の特性や可能性、さらに課題についても大きな気づきを得ることができる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
■今を知る講義まとめ:原発事故と東日本大震災から15年
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=283&referer=push_mm_feat
◆門田隆将先生:「Fukushima50」の真実…その素顔と誇り(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6147&referer=push_mm_rcm7
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テンミニッツ・アカデミー編集部