編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》大河ドラマがもっと楽しくなる戦国時代の真実/黒田基樹先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】
2026/05/20
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
今年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』も、5月17日(日)放送で第19回。ドラマは天正5年(1577年)の手取川の戦い(上杉謙信と織田信長軍団の戦い)まで進みました。
主人公の羽柴秀長は、天文9年(1540年)に生まれ、天正19年(1591年)に亡くなっています。史実ではあと14年の命ということになりますが、これから中国攻め、本能寺の変……と山場がどんどん続いていきます。そこをドラマがどう描くか。史実とドラマのあいだで、まだまだ楽しみが続きそうです。
さて、多くのドラマで描かれてきた戦国時代。しかし近年の研究で、従来のイメージは一変しています。もはや、教科書で読んだ知識だけでは歴史の意味、本質には決してたどりつけません。
戦国大名とはいかなる存在だったのか? その外交や経済政策とは? 軍事行動の秘密とは? 激変しつつある名だたる武将の人物像とは……?
明らかになりつつある戦国時代の真実を知れば、これまでの見方がガラリと変わり、もっともっと歴史が楽しくなること、うけあいです。
今回の特集ではそのような講義を集めました。この機会にぜひご覧いただき、戦国時代への知見を深めてみてはいかがでしょうか?
■今を知る講義まとめ:大河がもっと楽しくなる戦国時代の真実
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=291&referer=push_mm_feat
◆黒田基樹先生:戦国大名と民衆の過酷な課題…飢饉の常態化をどう生き延びるか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2919&referer=push_mm_rcm1
◆柴裕之先生:織田信長の「天下」とは…最新研究で激変する人物像・時代像
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3477&referer=push_mm_rcm2
◆丸島和洋先生:戦国時代の「外交の舞台裏」…意外と知らない大名と国衆の関係
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3159&referer=push_mm_rcm3
◆小和田哲男先生:織田信長の資金源…楽市楽座だけではない経済力と軍事力の秘密
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3208&referer=push_mm_rcm4
◆中村彰彦先生:戦国時代の兵の動員とは?…無視できない農民の事情
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3123&referer=push_mm_rcm5
◆黒田基樹先生:織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=6051&referer=push_mm_rcm6
◆小和田哲男先生:明智光秀は「主殺しの悪人」か?…諸説入り乱れる人物像の謎
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3135&referer=push_mm_rcm7
◆片山杜秀先生:徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…カリスマ性の理由
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4726&referer=push_mm_rcm8
■ピックアップ講義:令和も五公五民?~百姓からみた戦国大名/黒田基樹先生
「令和の五公五民」なる言葉が使われるようになって久しくなりました。
昭和45年(1970年)の国民負担率(国民所得に対する「税金」と「社会保険料」の合計負担割合)は、24.3%でした。しかし、平成12年(2000年)には、35.4%。そして令和8年(2026年)は45.7%といわれます。
「いまや『五公五民』であり、まるで戦国時代や江戸時代に戻ったかのようだ」などという声も挙がっているのです。
ではそもそも、戦国から江戸時代にかけて、どのような政治が行なわれ、農民はどのような動機で年貢を納めていたのでしょうか。
そのことについて、戦国時代の状況を教えてくださった黒田基樹先生(駿河台大学法学部教授/日本史学博士)の講義を紹介します。
政治はいかに民衆を守り、いかに国家意識が形成されていったのか。
黒田先生は、百姓から見た戦国大名について、戦国時代に関東一円を支配下に置いた北条家の研究から読み解いてくださいます。
◆黒田基樹先生:百姓からみた戦国大名(全8話)
(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国大名と民衆の過酷な課題…飢饉の常態化をどう生き延びるか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2919&referer=push_mm_rcm9
さて、この講義はどのような構成になっているのか。まずここで、各話のタイトルを示しましょう。
戦国大名がいかなる存在で、どのような政治を行なっていたのか。また、戦乱と飢饉が続く過酷な環境のなかで民衆がいかにたくましく生きていたのか。その実像は、まさに目からうろこです。
(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国大名と民衆の過酷な課題…飢饉の常態化をどう生き延びるか
(2)「村」という組織の重要性
民衆にとって生命維持装置の役割を果たしていたのは「村」
(3)統治権力と城郭の新しい役割
戦国時代、城郭が恒常的に存在するようになった二つの意味
(4)家中の形成と村の役割
「給人も百姓も成り立つように」に表れる戦国大名の在り方
(5)「目安制」の導入
戦国大名と領国内の村との関係を大きく変えた「目安制」
(6)統一的な税制改革
国中諸郡退転という危機…北条氏康の天文19年の政治改革
(7)「御国」の論理の誕生
北条家と武田家の全面戦争で顕著になった「御国」の論理
(8)戦国社会の克服
羽柴秀吉の天下統一から始まった戦国社会の克服
さて、前提として、戦国時代は百姓にとって、どのような時代だったのか。黒田先生は、実は戦国時代には、江戸時代の天保の大飢饉と同じくらいの飢饉状況が慢性的に続いていたのだとおっしゃいます。有力な「家」も次々と断絶していくような状況でした。
そのため、民衆は「生命維持装置」として強力な「村」を形成していきます。当時の村は、徴税権、立法権、警察権、さらには対外的な戦争を行うための軍事力までを持った「国家的村落」でした。
実は、戦国時代の争いの原因として大きかったのが、このような村同士の権益(水資源や山林資源)をめぐる争いだったのです。
このような状況を克服していったのが「戦国大名」でした。戦国大名は、それまで日本列島に存在していた政治権力とは全く性格が異なる、新しい性格の権力でした。
では、どのような「権力」だったのか。
戦国大名は、統治下にある村々から戦争費用を徴発することによって成り立っていました。租税としての年貢はもちろん、城郭などの修繕のための労役である「普請役」や、戦場への物資の輸送や補給などの「陣夫役」などを取り立てていたのです。
しかし、武力まで持った存在であった「村」がなぜ、そのような戦国大名の徴発に応じたのでしょうか。
戦国大名が形成される以前は、村々が争う場合には、それぞれの領主たちがそれに加勢して戦っていました。しかし、戦国大名は、領国内に存在する領主たちを家来として編成していきます。すると当然のことながら、領内の家来(領主)たちの争いは禁止されることになりました。
また、領主たちは自分たちの裁量で徴税をしており、なかには当然、不正を行う者もいました。しかし戦国大名としては領内の徴税を安定させなければいけませんし、一揆や逃散が起きたら、他国につけこまれてしまいます。
そこで、たとえば北条家では、大名が直接、村々に納税通知書を送り、納税額を通知すると共に、万一、それに反する不正があった場合には大名に直訴できるように「目安」の制度が設けられたのです。
さらに地震や大水などの天災が起きた場合には、大名が税金の減免措置をはじめとした復興策を行います。さらに、それまでは城郭補修などのために動員されていた普請役などを河川改修など公共工事のために活用するようになります。
つまり、百姓からすると、戦国大名は領内の平和と安定を守ってくれる存在であると共に、生活の安定を保障し、繁栄の基を築いてくれる存在となったのです。徴税権から軍事力までを持っていた村々は、かくして大名に従うことになるのです。
もちろん戦国大名からすれば、他国との戦争に勝つためという要素はあったわけですが、やがて豊臣政権、徳川政権が確立し、大名同士の戦争も禁止されます。
また徳川幕府は、一揆を頻発させるような大名は失格と見なして、所領の没収や改易を行いましたので、ますます平和と繁栄のための領民政策が行われるようになり、百姓たちは飢饉の連続だった状況から脱していくことになるのです。
黒田先生は、「先に領民への保護があって、それが国家と領民との政治的な一体性をつくり出していった」ことを強調されます。
まず、構成員の平和と安定を高めることで、はじめて組織への忠誠や献身が発揮されるようになる。まさに、この姿こそがあらゆる組織の基本であることを、歴史の経緯が教えてくれます。
ここには「義務と権利」などといった絵空事ではない、組織や政治の本質があるように思われます。
逆に考えれば、危機に臨んで、多くの人びとを失望させ、信頼を失うような手しか打ちえなかったとすれば、その組織や国家は、根底から覆ることになるでしょう。その根本原理を痛感させてくれる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
■今を知る講義まとめ:大河がもっと楽しくなる戦国時代の真実
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=291&referer=push_mm_feat
◆黒田基樹先生:百姓からみた戦国大名(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2919&referer=push_mm_rcm10
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