編集長が語る!講義の見どころ
今あらためてマルクスを学び、資本主義の未来を考える(テンミニッツTVメルマガ)
2021/03/05
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
皆さまは、「マルクス主義」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。いまから30年くらい前までは、マルクス主義のことを少しは知らないと、「知的」とは思われないような雰囲気さえありました。しかし、1989年の「ベルリンの壁崩壊」などを境にして、その雰囲気は少しずつ変わり、「マルクス主義は化石」などという見方もされるようになりました。
とはいえ、なかなかどうして現在においても、マルクス主義的な主張を背景にした著作は出版界でも何度もベストセラーになっています。ことに、世界的な危機が起きたり、資本主義の行方が不透明だったりするときには、マルクス主義は1つの視点として、常に社会に刺激を与え続けます。やはりそれだけ「巨大な力をもった理論」ということなのでしょう。
では、その「力」とはどのようなものなのか。そのことを橋爪大三郎先生(社会学者/東京工業大学名誉教授)に、とてもわかりやすくまとめていただいた講義を、本日は紹介いたします。橋爪先生のこれまでのテンミニッツTVの講義も、独自の視点から、とてもわかりやすく座標軸を描いてくださるものでしたが、今回のマルクス講義も、まさに絶品です。
また、後半ではマルクス主義の現代的な意義や課題についてもお答えいただいていますが、その切れ味たるや、さすがといわざるをえません。もし、「ある程度、マルクス主義のことは知っている……」という方がいらっしゃったら、前半をざっと飛ばし見していただいたうえで、第7話(【深掘り編】)からご覧いただいても良いかもしれません。
◆橋爪大三郎:マルクス入門と資本主義の未来(全10話)
(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3811&referer=push_mm_rcm1
まず、橋爪先生は、マルクスを理解するポイントとして、
(1)ユダヤ人であること
(2)ドイツで生まれ育ったドイツ出身の人だったこと
(3)ヘーゲルに強い影響を受けたこと
(4)時代を丸ごと全体的に認識しようとしたこと
の4つを挙げられます。
そのうえで、
●なぜヘーゲル哲学から経済の研究に進んだのか
●マルクスが立脚した「労働価値説」の意味とは
●マルクスが主張した「階級闘争」について
●マルクス主義のその後の展開について
お話しくださいます。
たとえば、マルクスが、なぜヘーゲル哲学から経済の研究に進んだのかについて、橋爪先生は次のようにおっしゃいます。
《革命家の予備軍といっても過言ではないヘーゲル左派の人々は、ヘーゲル哲学を用いて社会を分析しましたが、マルクスはそこに限界を感じました。現在の社会に問題を見いだした場合、富裕層や権力者など特定の対象を見つけ、彼らを追放すればいいというアナキストのような思想になりがちですが、マルクスの考えではそのような思想は安直なのです。彼らを追放した後にどのように社会を組織すればいいのか、そもそもなぜ彼らのような存在が出現したのか、このようなメカニズムが分からなければ、本当に問題を解決することにはならないと考えました》(第2話)
「社会問題のメカニズムの核心を探りだそうとしたマルクスの心意気。そしてマルクスは何を見つけていったのか?」――このお話からだけでも、マルクス主義がなぜ多くの人を魅了したのかが伝わってきます。ここから解説はさらに進んでいき、マルクスが何を考えたのかのエッセンスを明解に語ってくださいますので、ぜひご覧ください。
そして、さらに圧巻なのが、質疑応答編(【深掘り編】)での橋爪先生の視点です。以下のような質問について、的確にどんどんとお答えをいただいています。
●マルクスの予言で当たった部分、当たらなかった部分とは何か?
●金融経済がここまで大きくなった現在、「労働価値説」をどう捉えるべきか?
●グローバル化をどう考えるのか?
●「資本主義では需要をどんどん煽って商品を消費させていくので、それが環境問題などの元凶になっている」という議論もあるが、その是非は?
お聞きいただければ、現代社会への理解が深まり、自分自身の考えもどんどん広がっていくこと間違いありません。
マルクス主義による革命とその後の共産主義社会建設の過程で、結果的に世界中で何千万もの人々が非業の死を遂げることになるわけですが、歴史的にあそこまでの影響力を、なぜマルクス主義は持ちえたのか。そこまで人々を魅入らせ、熱狂させたものとは何だったのか。そのようなことを考えるうえでも、大きなヒントになる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆橋爪大三郎:マルクス入門と資本主義の未来(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3811&referer=push_mm_rcm2
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今週の「エピソードで読む○○」Vol.27
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今回の○○は、ご存じアップル社の創業者のひとり「スティーブ・ジョブズ」です。
ジョブズ氏は1979年、パロアルトの研究所に招待を受けて訪問しています。そこで当時、アルトという名前のパソコンの原型を見て、ジョブズ氏は驚きます。そして、これこそが未来のパソコンの姿だと確信したのです。
つまり、ジョブズ氏にはこの時点で構想が見えていました。その後、ジョブズ氏はパロアルト研究所の、例えば天才的な科学者だと言われていたアラン・ケイ氏らを引き抜いて、アップルを作ることになります。そして、今のマッキントッシュでも使われている、GUIを持ったコンピューターが発売されることになったのです。
ゼロックスとアップルを分けたのは、やはりジョブズ氏の目利きでしょう。研究所でアルトのデモ機を見た人は、もちろんジョブズ氏だけではありません。500人ほどの人が見たと言われています。しかし、その可能性を見抜いた人はジョブズ氏だけでした。
ゼロックスがブランド化に失敗した理由
田中洋(中央大学大学院戦略経営研究科 教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2086&referer=push_mm_episode
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レッツトライ! 10秒クイズ
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「科学技術(宇宙・天文)」ジャンルのクイズです。
小惑星探査機はやぶさで有名になった「〇〇〇エンジン」は、電気推進という方法を使ったロケットエンジンの一つ。
さて〇〇〇には何が入るでしょうか?
答えは以下にてご確認ください
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2747&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて今月3月のプレゼント本は童門冬二先生(作家)の著書『渋沢栄一 人間の礎』 (集英社文庫) 』です。
現在、渋沢栄一を主人公にしたNHK大河ドラマ「青天を衝け」が好評のようですが、多くの皆さんが渋沢栄一の実像、その功績を知る機会になっているのではないでしょうか。
テンミニッツTVでも先月2月に「日本資本主義の父・渋沢栄一の正義と危機感」というタイトルで特集を組みましたが、そのなかの一つ、童門先生のシリーズ講義<「近代日本をつくった男、渋沢栄一」の素顔(全4話)>も大変好評で、現在月間視聴ランキング1位(2021/3/4現在)です。
渋沢栄一が近代日本に与えた二つの大きな影響
「近代日本をつくった男、渋沢栄一」の素顔(1)若き日の渋沢栄一
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3868&referer=push_mm_edt
ご視聴前という方はぜひシリーズを通してご覧いただきたいのですが、3月のプレゼント本と合わせてご視聴になると、より理解が深まると思います。
著書の紹介文には「数々の業績を残して日本の資本主義を築いた渋沢栄一が、どのようにして偉人になりえたか、それを彼の前半生にさがして描き出す。短くて読みやすく、渋沢栄一の人物像を得るのに最適の書」とあります。こういわれるとますます気になりますよね。
ご興味があってご応募はまだという方は以下よりご応募ください。
https://10mtv.jp/
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