編集長が語る!講義の見どころ
崩れゆく組織で「危機感」「意識改革」を口にするのは負け(テンミニッツTVメルマガ)
2021/03/19
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
組織をどう立て直すのか。これは、本当に大きな課題です。けっして「人材がいないから、組織が崩れる」とばかりかぎりません。たとえば、幕末の江戸幕府を見ても、阿部正弘、井伊直弼、安藤信正のような老中格から、勝海舟、川路聖謨、小栗忠順、岩瀬忠震、大久保忠寛、永井尚志などまで、まさに多士済々。にもかかわらず、なぜ倒幕の憂き目に遭うことになったのか。ここは、大いに考えさせられるところです。
本日は、ターンアラウンド・スペシャリスト(事業再生専門家)として長年活躍され、ミスミグループの経営に当たられてきた三枝匡先生の講義を紹介いたします。
三枝先生は、大組織の場合、状況が悪くなりはじめても、地力があるので10年~数十年単位で持ってしまうといいます。そして、多くの人が事態の深刻さに気づいて火がついたときには、もう「終わり」。いかに優秀な人が、どれほど努力をしようと、もう立て直すことができない。これを三枝先生は「自然死的衰退への緩慢なプロセス」だとおっしゃいます。では、どうすればいいのでしょうか。
◆三枝匡:企業改革の核心は何か(全2話)
(1)組織の危機をいかに克服するか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3882&referer=push_mm_rcm1
三枝先生は、まず、リーダーたるもの「あれ、何かおかしいぞ?」ということがパッと現れたときに気づけるかどうかが「腕」だとおっしゃいます。その「変だぞ?」「おかしいぞ?」というのは、一瞬、顔をのぞかせるだけなので、そういう現象に気づいたときには、どんどん周りに声をかけて確認をしていく。
まだ組織が元気なうちに、つまり、選択肢がいろいろありうるときに、そういうことができるリーダーがいれば、早め早めに問題を直していくことができる。しかしそうでないと、どんどん組織は追い込まれていくことになります。
では、追い込まれてしまった組織を立て直すにはどうすればいいのか。ここで三枝先生は、痛烈な問題提起をされます。
《「危機感」「意識改革」「風土改革」、そういうことを口にされていませんか? これは、全部ダメです。「危機感」という言葉を口にする経営者は、私は負けだと思っているのです。そんなこといったって、何の効果もない。「危機だ、危機だと、聞き飽きた」とね》
これは多くの日本人にとって、耳の痛い話ではないでしょうか。三枝先生は、「危機感の構造とは、危機といわれても、自分のせいだと思ってないメンバーがほとんどだということ」とおっしゃいます。たしかにそうでしょう。それぞれの人が、「ちょっと、まずいかもしれない」「このままで大丈夫か」と頭ではわかっていたとしても、「まあ、これまでも大丈夫だったのだから」「自分が動いたところで、この組織が変わるはずがない」「トップ層の責任でしょ」という意識で、やりすごしてしまう。地力があるので、そのままズルズルと行くうちに、取り返しがつかないことになっていく……。そういうことは、まことに「ありがち」なことといえましょう。
三枝先生は、「『組織の危機』を『個人の痛み』に結びつけよ」とおっしゃいます。「組織の危機には反応しないくせに、個人の痛みには、たちまち反応する」というのですが、これはまさに言うは易く、行うは難しでしょう。では、どのようにして、それをやっていけばいいのか。
ここは、まさに覚悟が求められる部分です。ぜひ講義本編をご覧ください。
三枝先生はまた、「働き方改革は、亡国の論理」だとも指摘されます。日本人が働き過ぎなどというのは、もうとっくに嘘になっている。日本人は、いまや自分たちが実際には、他国と比べてどれほど「働いていない」のかを自覚していない。しかも、社会を率いるべきエリート層と、時間給で働く労働層とを「いっしょくた」にしてしまっている。それでは致命的なことになりかねない。
ここは、まことに鋭い問題提起といえましょう。日本の組織特性を考えた場合、なぜ、働き方改革が亡国の論理になってしまうのか。ぜひ講義の第2話をご視聴ください。
他人のことは気づくのに、自分のことは気づかない。ついつい、伝統や慣例に漬かって、改革機運を逃してしまう。あるいは、いざ改革する場合には、「変えてはいけない大切なところ」を壊してしまって、かえって酷い状況を招いてしまう。どうしても、そのようなことになりがちです。
だからこそ、「改革の定石」はしっかりと知っておくべきでしょう。この三枝先生の講義のような刺激を受けて、常にアンテナの感度を高めておくべきではないでしょうか。胸に刺さるところが必ずある講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆三枝匡:企業改革の核心は何か(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3882&referer=push_mm_rcm2
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今週の「エピソードで読む○○」Vol.29
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今回の○○は、平安時代の名僧「空海と最澄」です。
結局この後、天台宗では最澄の弟子たちが密教をどんどん取り入れていって、いわゆる天台密教、「台密(たいみつ)」と呼ばれるものが盛んになります。それでもやはり中心は天台宗で、それを盛んにするために密教を使っていくような位置づけでした。
しかし空海の捉え方は違います。密教の反対を「顕教」といって、釈迦が言葉で説いた教えを指します。天台宗も、言葉で説いた教えの一つにすぎない。だから顕教を否定はしないけれども、それを超えたところに密教があると考えています。何を最高と見て、最高の教えにするかというところで、二人はまったく違うことを考えていたので、やはり最終的には絶交することになってしまったのです。
空海と最澄の関係に大きな影響を与えた「密教」の位置づけ
頼住光子(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部倫理学研究室教授)※「頼」は実際には旧字体
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3912&referer=push_mm_episode
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レッツトライ! 10秒クイズ
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「哲学・思想(心理学)」ジャンルのクイズです。
ノーベル賞を獲得したダニエル・カーネマン氏によると、平均年収が日本円にして約〇〇〇万円を超えると、年収と幸せの間に相関が見られないという研究結果があるという。
さて〇〇〇にはどんな数字が入るでしょうか?
答えは以下にてご確認ください
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3528&referer=push_mm_quiz
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて、今年の桜の開花ですが、3月11日の広島を皮切りし、12日に福岡、14日には東京などと続きました。記録的な早さとなっているところも多く、東京では来週23日ごろに満開を迎えそうというニュースも出ています。
気になるお花見ですが、コロナ対策として混雑緩和のため事前予約制をとるところもあり、今後も新たなお花見のかたちが提示されるかもしれませんね。
ここでは桜にちなんで、大阪にある造幣局の花見「桜の通り抜け」についてのエピソードを少しお伝えしたいと思います。
遠藤謹助―造幣局をつくった「造幣の父」
山内昌之(東京大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=62&referer=push_mm_edt
<この通り抜けを始めたのが、明治16(1883)年で、当時の造幣局長の遠藤謹助の発議によるものでした。もともと造幣局の敷地内でしたから、局員たちが桜見物を楽しんでいました。今ならば、市民たちが「自分たちにも見せろ」と言うのでしょうが、当時はお上が偉かったので、そういうことも市民たちは公然とは言わなかったようです。しかし、遠藤は、「局員だけの花見ではもったいない」「市民とともに楽しもうではないか」という、まことにあっぱれな提案によって、構内の桜並木を一般の大阪市民に開放したという、大変素晴らしいことに由来するものなのです。>
ということで、毎年多くの方が訪れている造幣局の「桜の通り抜け」ですが、昨年は残念ながら新型コロナの感染拡大防止のため中止でした。
今年は事前申込制で入場できるそうです(すでに申込受付は終了とのことですが)。
やはり桜を見て楽しむことができるというのは有難いことですね。機会があれば、いつか見に行きたいと思う今日この頃です。
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