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象徴天皇とは何か―ビデオメッセージの3つポイント

天皇陛下のおことば(2)国民への理解を求める

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/明治大学研究・知財戦略機構国際総合研究所特任教授
情報・テキスト
皇居
歴史学者で皇室制度に関する有識者ヒアリングのメンバーでもある山内昌之氏が、先般公開された「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」を緊急解説する。今回のおことばは、皇后陛下と共に「象徴天皇とは何か」を模索されてきた天皇陛下の歴史の集大成ともいえるものだ。そこで強調されたのは、象徴は国民と共にあり、だからこそご自身が抱えている危惧を、国民に理解してもらいたいということだった。(全3話中第2話)
時間:08:35
収録日:2016/08/09
追加日:2016/08/12
≪全文≫

●在世中に「天皇」を次代へ引き継ぐ


 皆さん、こんにちは。前回に引き続き、天皇陛下のおことばについて、私の感想あるいは考えを述べたいと思います。

 平成の時代がやがて終わること、すなわち天皇陛下のおことばを借りるならば「天皇の終焉」に向かい合うことは、歴史家であればいつか来る日として当然に予想されることでした。しかし、平成という時代をご自分のご在世中に次代に引き継いでもらうということを披瀝された点に、今回のおことばの意味があったかと思います。

 28年間にわたる、天皇としてのご在位の中でご経験されたご労苦については、ほとんどの国民がそこに共感しています。ご高齢をおして天皇陛下にお仕事をしていただいたことについては、「相申し訳ない」、あるいは「自分たちがもう少し、そうした問題についてきちんと向かい合い、天皇陛下にそのようなご苦労をかけさせるべきではなかった」という声も出てきています。


●「象徴とは何か」を長く模索されてきた天皇陛下


 私は、今回のおことばを、次のように捉えます。日本人が直面している普遍的な問題と結び付けると、これは誰でも迎える「老い」、もしくは人生の晩年、あるいは黄昏とも関わる問題です。そうした状況では、象徴天皇であることに伴う責任を誠実に、天皇陛下のおことばでは「全身全霊で果たす」ことが難しくなるのではないか、こうしたことを心境として誠実にお語りになったことが、今回のメッセージの主眼ではないかと思います。

 これはある意味で、皇后陛下と共に「象徴とは何か」について長く模索され、日々実践してこられた天皇陛下、ひいては皇后陛下の、歴史の集大成、もしくは完成ともいうべき地点でお話されたということになるのではないかと思います。


●ビデオメッセージのポイントは三つある


 大きくいうと、三つのポイントがあるのではないかと思います。第一は、代替わり、すなわちご退位もしくはご譲位につながることの可能性を、ご希望、あるいはご感想として、しかも憲法上の地位に留意しながら、個人的な意見として発表されたことです。第二は、「天皇の終焉」に関して、国民と家族に負担を背負わせたくない、煩わせたくないという「お気持ち」の表明でした。第三に、歴史や伝統に基づく天皇、そして日本国憲法に基づく象徴、この二つの象徴天皇としての務めが続くことを念じるお考え、そしてこのお考えに国民が理解することに対し、願いを持っていることをご披瀝されたことにあるかと思います。

 まず、あくまでも個人的なお考えとして発表されたのはなぜなのか。それは、憲法第四条で定められる、国事行為に関するお仕事以外を行ってはならない、すなわち他の政治的な行為に関わることをしてはならず、国政に関する権能を有しないと定めてある憲法の規定を、すこぶる厳格にお考えになられたことが、「個人的な考え」という表現を生んだのだと思います。

 象徴という存在は、憲法第七条における国事行為、すなわち法律などの公布、国会の招集、大臣の任免や大使の認証などの規定だけを守るべきだ、天皇は象徴として存在していればいいのだ、という法理論もあり得ます。象徴という存在は形式上の国事行為を行っていればいいという考えは、法理論では確かに当然あり得ると思います。

 しかし今、天皇が「象徴天皇」というものに魂や心を入れられて、「天皇というのはこういうものなのだ」「憲法で定められた象徴とはこういうものなのだ」ということを、実感として、そして具...
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