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「気付く」人材を育てる社内教育には、意地悪が必要だ

ヒューマンエラーと経営戦略(8)質疑応答編3

岡田有策
慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授
情報・テキスト
「気付く」人を育てる教育とは、どのようなものか? 職場の外国人に向けて、ヒューマンエラーをマネジメントする際のポイントとは? ヒューマンエラー・マネジメントにおいて、日本にはどのような特色があるか? 慶應義塾大学理工学部管理工学科教授の岡田有策氏が、講演後、会場からの質問に答える。(全10話中第10話)
時間:08:06
収録日:2017/09/01
追加日:2018/02/25
≪全文≫

●全員が「気付く」人になる必要はない


質問 「気付く」人を育てるためには、どうすればいいでしょうか。

岡田 「気付く」人を育てるには、教育も学習もしないことです。そのためのポイントは4つあります。第1に、「気付く」ことは才能です。全員が「気付く」人になる必要はありません。社員の2割が気付ければ十分です。気付ける人が1人いれば、後の人はそれに付いていくだけでいいでしょう。ただし、社長が気付く人でなければおしまいです。つまり、船頭となるような人が何人いればいいのか、計算すればいいのです。

 例えばアメリカのように、マネジメント層がヘッドハンティングで「気付く」人を取ってくるというのであれば、教育は全く必要ないでしょう。しかし、日本の場合には、ほとんどの会社が、ある程度、自社でマネジメント層を育てていきます。にもかかわらず、アメリカ式の「気付かせる」ためのチェックリストやマニュアルを持ち込みすぎたために、いびつなことが生じてきたのです。

 ただし、全員がマネジメント層になる必要はありません。自分たちの会社で将来の幹部候補がどれだけ必要なのかを考え、それに応じて「気付く」人を育てればいいのです。


●幹部候補生には、集団指導的にみんながちょっと意地悪になる


 第2のポイントは、フィルターです。将来の幹部候補なのかどうかは、最初からは分かりません。ある程度、少し意地悪に思われるようなこともしながら、フィルターを徐々にかけていかなければいけません。したがって、入社10年目になってはもう手遅れです。それまでに管理職の人たちが、「こいつは気付くポジションに行けばいい」とか、「もうちょっとでうまく育つな」と、見ていくのです。入社して4、5年もたてば、こうしたことは見えてくるでしょう。

 そこで、他の人には丁寧に教えるけれど、上に上げたい人については時間をかけさせたり、少し意地悪だと思われるようなことを通じて負荷をかけるというように、上の人たちで相談しておくのです。多少失敗しても、みんなでフォローすればいいから、失敗を経験させてあげよう、と。幹部候補生である2割の人には、集団指導的にみんながちょっと意地悪になるといいでしょう。もしその人がそれで腐っていくようであれば、そこで切ってしまえばいいし、乗り越えてくれば、また次のフィルターを掛けるということになります。こうして、他の人とは違う教育をして、育てていくのです。

 第3のポイントは、特に重要です。そうして育ててきた段階で、今度は中間管理職になる前に、本人に意思確認をしてください。昇進したい意思があるかどうかの確認です。最近では、今の給料をもらって自由に生きていく方が良い、という人も多くなっています。本人に最終判断を任せて、承諾されたのであれば、多少厳しく指導するし、突き放すこともあると告げることです。お互いに確認をした上でなければ、単にブラック企業になってしまいます。こうした挑戦に応えることができれば、何年後にどこどこのポジションに就けてやろうと約束するのです。このようにインセンティブを与えることも重要です。


●係長になってから気付くのは無理だ


 第4のポイントは、本当にそのポジションを与えて、独り立ちさせ、責任を持って仕事をさせることでしょう。10人なり、20人なりの部下を動かす、そうしたポジションに立つ人間を目標に育てていくのですから、「気付く」人は全体の10分の1程度でも構いません。

 ただし、こうしたセレクトを35歳くらいになってから始めようとするとおかしくなります。25歳ぐらいから準備をさせて、教育していくことです。「教育を公平に」などと言って、みんなに同じように教育をしようとするから、おかしなことになるわけです。フィルターを掛けて、セレクトしていく必要があります。こうすることで、本人も周りも、「あの人は係長になるべくしてなった」と分かります。係長になってから気付くようになれといっても、無理な話なのです。ちゃんと助走期間を設けて、その期間にふさわしい教育をすべきでしょう。



●社員が会社に残りたいと思うかどうかが重要だ


質問 外国人の方も働いている職場で、ヒューマンエラーをマネジメントしていく際のポイントは何でしょうか。

岡田 外国人かどうかはあまり関係ありません。社員がその会社に最後まで残りたいと思うかどうかが、重要です。国籍や文化は関係がないでしょう。ある技術を習得して、その経験を持って転職する、あるいは自国に帰るということになれば、これまで述べてきたようなことは、成り立たなくなります。

 もちろん、本当にずっとその会社にいる必要はありません。しかし、愛社精神を持っていて、帰国後にほぼ別会社を作るにしても、協力関係を構築しておきたいという人であれば、私の話は通じる...
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