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アウグスティヌス:神は自分の外でなく内にあるという思想

西洋哲学史の10人~哲学入門(4)アウグスティヌス キリスト教の基礎

貫成人
専修大学文学部教授/文学博士
概要・テキスト
アウグスティヌス
無味乾燥になりがちな宗教や哲学を、中世の哲学者であるアウグスティヌスは人間味のある文体と赤裸々な心情から論じた。現代キリスト教における教義を確立する中で彼が見いだしたのは、「人間はいかに救われるか」に関するそれまでとは異なる考え方であった。専修大学文学部教授の貫成人氏が解説する。(全10話中第4話)
時間:11:25
収録日:2018/02/09
追加日:2018/05/18
カテゴリー:
≪全文≫

●アウグスティヌスは現代キリスト教の教義を確立した


 第4回はアウグスティヌスです。アウグスティヌスはこれまでの3名とは違い、いわゆる古代ギリシャの哲学者の範疇に入らない人です。むしろこの後に出てくる中世の人として、キリスト教を主なベースにし、その後のキリスト教の教義の基礎をつくったのがアウグスティヌスであるといわれています。

 生没年が354年から430年なのですが、ヨーロッパの中世が始まるのは彼が生まれた後なので、年代的には古代の哲学者です。しかし、やっていることは中世的であるといわれています。

 生まれた所もこれまでの人とは異なっていて、北アフリカです。現在のチュニジアあたりの生まれであり、初めはその地域の宗教であるマニ教を信仰していました。キリスト教徒に転向したのは大人になってからです。

 しかし、それ以前から彼は学問に大変志を立てており、キリスト教に転向してからはその研究を大成し、現代のキリスト教の教義を確立したといわれています。


●書いたものに人間味があり、非常に身近に感じられる


 アウグスティヌスは宗教的な哲学を確立したわけですが、現代でも非常に多くの人に愛されており、多くのファンがいます。どうしてかというと、書いた書物に人間味があるからです。

 『神の国』はまさに神の国の話をしていますが、もう1つ『告白』という書物があります。これはタイトルに表れているように、アウグスティヌス自身の、いわば知的な自叙伝になっていて、ここでは幼い頃からの自分がどういうことをして、どういうことを考えて、どんなことに気が付いたのかということを年代的に追っています。

 宗教は非常に無味乾燥なものになりがちです。また、哲学も非常に厳格で人間味がないものになりかねないものです。しかし、この本にはアウグスティヌス自身の赤裸々な心情が吐露されています。これが現代の私たちにとっても非常に身近に感じられるのです。

 その内容についてお話をするためには、まずキリスト教がそもそもどういうことなのかをあらかじめお話ししなければなりません。キリスト教がどういうものなのかということは、この後どのヨーロッパの哲学者にとっても重要になりますので、おさらいをします。


●キリスト教における天地創造と失楽園


 キリスト教の基本は、聖書の最初の部分にある創世記での、天地創造の話をみれ...
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