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今行うべきは、AIの本格導入に備えたデータ整理

今後の技術革新と企業経営(4)AIを活用するために

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
情報・テキスト
AI(人工知能)によるデータ解析の精度は非常に高いが、AIはそれ自体単独で何もかもをやってくれるようなものではない。ではAIを活用するにはどうすればいいのか。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏がAIの活用方法を説く。(2018年4月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「今後の技術革新と企業経営」より、全8話中第4話)
時間:06:23
収録日:2018/04/25
追加日:2018/08/12
≪全文≫

●AIは融通の利かないエリート新入社員


 今回は、AI(人工知能)の活用に関するお話をします。

 まず重要なこととして、AIに関しても、前回のデータの話と同じように、単独で有効活用できることは本当にまれです。AIが何もかも全てやってくれるということは完全にSFの世界であって、そんなことはありません。AIを活用する際にも、経験の有効活用が必要となります。

 よく使う例で説明すると、融通の利かないエリート新入社員と、AIはよく似ています。新入社員には、とにかく指示待ちの人がいっぱいいると思います。こういった社員は、目的やゴールを決めてあげれば、しっかりと働いてくれます。しかし、こういった社員は、目的を決めてもらえず、とにかく「うまくやってみてください」「何かすごい経営をやってみてください」と言われても、ほとんどできないでしょう。AIも同じで、人間が、経営者が、正解を与えてあげる必要があります。これがAIの本質です。

 現在のAIは、データの解析の精度はすごく優れています。AIが扱えるデータは非常にリッチになっていて、さまざまな複雑なデータも扱えるようになっています。これを松尾豊氏(東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻特任准教授)は、「眼を獲得した」と表現しています。しかし、AIが行えるのはデータの解析であって、それを活用するのは人間です。


●人が先に正解を決めないと、AIは学習できない




 これを説明するために、よく使っている図があります。図の真ん中にAIの有効活用があります。ここで、AIは確かに「正解」を導くのですが、AIが「正解」を導くためには、先に人間が「正解」を決めてあげる必要があります。例えば、病気のレントゲン画像をAIに判断させるならば、病気のレントゲン画像と健康なレントゲン画像を、先に人間が決める必要があるということです。そうすれば、どちらが病気の画像であるか、AIは間違えることなく完璧に判断します。

 ですが、例えばAIが教師としていい指導ができるかとか、AIが立派な経営者になれるかというと、それは実は問いとして間違っています。なぜなら、いい経営とか優れた指導というものについて、人間が正解を先に定義しないといけないからです。正解を決めれば、AIはそれに向かって学習していくことができるのです。しかし、正解を決めないと、AIも学習のしようがありません。


●AIに全てを任せることはできない


 しかしながら、皆さんの仕事を考えてみれば分かるでしょうが、正解が決まりさえすれば、もうほとんど終わったも同然という仕事は多いと思います。ですからAIは、正解が決まっているものはうまくやれるという意味では優秀なエリート社員なのですが、正解が決まっていないとうまく働かないという意味では融通の利かない社員でもあります。

 そうなると、前回お話ししたような、AIを活用するための組織改革が必要となってきます。また、これも前回お話ししましたが、AIのデータ解析で分かるのは相関関係であり、因果関係を導くためには、やはり人がAIを活用して分析を行う必要があります。

 次に、先ほどの図の左側を見てください。AIがデータ解析を行うには、やはりデータが必要になります。そこで、コールセンターのお話を以前にしましたが、人による情報の整備が不可欠になります。ですから、AIは確かにとてもパワフルなツールなのですが、一部門の全てをAIに任せることができるというようなことは、現状ではほとんどあり得ません。少なくとも、現在分かっている技術革新の範囲ではできません。

 ですから、経営の全体像を全てAIに任せることはとてもできません。よって、AIを有効活用するためには、組織を変えていく必要があるということが技術革新への対応としていえることです。


●AIの早期導入は必要ない!?


 したがって今のところ、AIの早期導入を考える必要はほとんどありません。AIに結構なお金を投資してしまった中小企業も多いと思います。しかしおそらく、それはほとんど無駄だったといえるでしょう。AIはそのうち、タダでとても使いやすい形で提供されるようになるからです。ですから、今後はそれを使えばいいと思います。

 それは、例えば会計ソフトのようなケースと同じです。会計のシステムも、昔は自分たちで作っていたところもあるでしょうが、今はいろいろな会社がそのシステムを直接に提供してくれますので、それを使用したり、あるいは購入したりすればいいのです。AIに関しても、もうすでにGoogleがほとんどタダで提供し始めています(ただ、Googleはその裏側でデータを収集しているわけですが)。

 ですから、そういったものを使うことが正解といえるでしょうし、AIの導入に関しては、今はまだ静観していてもいい話だと思...
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