過去から未来へ、京都学派の役割
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
西田幾多郎と父・髙坂正顕の師弟エピソード
第2話へ進む
西田幾多郎の思想を求め京大哲学科に集まった弟子たち
過去から未来へ、京都学派の役割(1)京都学派とは
髙坂節三(公益財団法人 日本漢字能力検定協会 顧問)
京都には「哲学の道」がある。銀閣寺から若王子橋へ疎水に沿う小道で、西田幾多郎や田辺元らが散策したのが名の由来だ。西田門下に集まった京都学派の中枢をなした髙坂正顕氏の三男であり、戦後の国際政治学者・髙坂正堯氏を兄に持つ髙坂節三氏からうかがう話は、過去から未来に向かって日本哲学へ分け入る小道となろう。(全5話中第1話目)
時間:16分50秒
収録日:2014年7月18日
追加日:2014年9月1日
≪全文≫

●西田幾多郎を中心とする哲学グループ「京都学派」


髙坂 今日は「過去から未来へ、京都学派の役割」ということで、京都学派の一人であった私の父・髙坂正顕(こうさかまさあき)と、父に反発しながら国際政治学をやった兄・正堯(まさたか)。この二人の眼を通して、京都学派の役割と、それを元に未来をどう考えるかということをお話しさせていただきたいと思います。

 まず最初に、「京都学派」という言葉はよく新聞に出てきます。いい意味でも悪い意味でも出てきますし、非常に幅の狭いところと広く取られるところがあります。

 京都学派と最初に言われたのは、下村寅太郎さんです。彼は京都学派の中堅どころといいますか、西田幾多郎先生の元に集まってきた一人です。『西田幾多郎―人と思想』という本にその経緯を書いているので、それをまず読ませていただきます。

 「1910年、西田幾多郎は41歳で京都大学に招聘された。彼はここで始めて大学の教授として自由な学究生活を送ることができた。1928年、定年退職に至るまでこの大学の哲学の指導者として活躍し、名声と尊敬を集めた。大学の講壇を離れてから後も彼の学問的研究は不断に続けられた。寧ろ一層活発になった。これ以後に於て彼の最も深い思想が展開された。多くの秀れた弟子が彼の周囲に集まり、所謂世間はこれを<京都学派>と称した」

 というように、下村先生はお書きになっています。


●広い意味の京都学派は田辺元から山極寿一まで


髙坂 戦後、京都学派といわれるときには、例えば有名な桑原武夫さん、貝塚茂樹さん、今西錦司さん、梅棹忠夫さん、梅原猛さんなどが、京都学派と呼ばれることもあります。

 また、戦前、西田先生が招聘した、田辺元さん、和辻哲郎さん、九鬼周造さんなども京都学派に入れられていることもあります。

 京都大学で10月より総長になられる予定の、ゴリラの研究者・山極寿一さんも、流れとしてはこの京都学派になるのかもしれません。その意味では、兄も京都学派に入れてもいいのかもしれません。それは、あくまで広義の京都学派です。


●狭義の京都学派の人びと 1)大正9年入学まで


髙坂 ただ、狭義の京都学派として、下村さんがおっしゃっているような人としては、次の人たちが挙げられると思います。

 明治42(1909)年、つまり西田先生が来られる1年前に入学された天野貞佑さんは、後に文部大...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(5)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈下〉
『武功夜話』は偽書か?…疑われた理由と執筆動機の評価
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治