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日本的なるものと西洋的なるものの葛藤が立派な魂を生んだ

「壁」ありてこそ(1)作家との対話が当たり前だった時代

概要・テキスト
執行草舟が、三島由紀夫との対話などを紹介しつつ、日本における天皇の意味、芸術の意味、西洋と日本の狭間で揺れ動く葛藤の意味などについて語るシリーズ。第1話では、三島由紀夫と16歳から19歳までに7回会って文学論議をした話から、なぜ当時は、真に教養のある立派な人たちがいたかを説き起こす。執行草舟が注目するのは、当時のインテリたちが直面していた、「西洋的な科学技術や教養」と「日本人の魂」との板挟みの葛藤である。江戸期に武士の教育を受けて育った人々は、日露戦争の頃を境に、第一線からどんどんいなくなるが、その次に出てきたエリート層が抱えていたのがその「葛藤」だった。この葛藤があればこそ、立派な見識を磨きえたのではないか。(全8話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10:56
収録日:2021/01/14
追加日:2021/02/19
カテゴリー:
≪全文≫

●三島由紀夫に7回会って文学論を交わした若き日々


―― 先生、今日は本当にどうもありがとうございます。

執行 とんでもないです。

―― 私がまず最初に聞いてみたいのが、執行先生の三島由紀夫の没後50年の講演の話です(憂国忌 第50回 執行草舟追悼挨拶)。
http://shigyo-sosyu.jp/mishima/greetings.html

すごく感銘を受けました。三島由紀夫 に、執行先生は16歳から19歳までの間に7回会ったと。

執行 そう、文学論で。

―― しかも文学論で7回会って、短くて3、4時間、長くて5時間から7時間。

執行 本当、半日ですよね。

―― 普通、なかなかありえないですよね。

執行 ただ私の感覚だと、私は文学青年で、小学校、中学校から死ぬほど本を読んでいました。私は今70歳ですが、私の青年時代は「文学論」をする主流は高校生、大学生でした。かえって大人は、当時はしない。だから今となっては有名だった作家とか、いろんな人と文学論をさせていただきましたが、珍しいこととは思いませんでした。

―― 確かに。

執行 私の友達なども文学好きなやつは仲間で集まっていて、当時で言えば一流の作家や先生のところへ遊びに行っていました。大学生なら、酒を飲みながらみんなで文学論をするというのは、しょっちゅうでした。

―― 世の中自体も、そうだったのですね。

執行 絶対そうです。少なくとも私の友達は、高校生や大学生で付き合うのは文学好きだから、みんなそうです。私だけではありません。珍しいとは思っていませんでした。

―― 今から見ると、ものすごく恵まれている時代ですね。

執行 だって今の人は読まないですから。本も読まない。何も読まない。ちょっと桁が違います。もう日本社会から、一挙にいなくなりました。

 前にも話したことがありますが、私がこの会社で独立したのは33歳のときですが、私が独立した時点で、当時の偉い人で総合的な教養のある人は、日本社会からほとんどいなくなっていました。私は本を書いたりして、三島由紀夫も含めて、いろいろな思い出を書いていますが、結局、教養のある人といえば、20代の頃までにかわいがっていただいた、その当時の偉い人になってしまいます。

 そういう人は、私が30歳になるまでは、職人だろうが普通の企業の重役とかお偉方だろうが、いくらでも教養のある人はいました。三島由紀夫も、その一人です。もちろ...
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