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「原発」や「紙幣乱発」に共通する「希望」という名の驕慢

脱人間論(1)絶望の中からしか、人類は立ち直れない

概要・テキスト
今は乱世ですらない。これまでの文明史において、乱世とは、贅沢になり驕った民族を、質実剛健で精悍な民族が打ち負かし、取って替わる時代のことであった。だが、今の人類には取って替わるものがなく、これは人類が滅びることを意味する。希望のない話だが、そもそも希望があるからよくない。希望があるから「何とかなる」と原発をつくり、あらゆる消費文明をやめずにきた。紙幣の乱発も同じで、あり得ない経済成長を信じて「大丈夫」と言っている。実際は「大丈夫」なはずなどないのだ。まずは、そこを認識しなければならない。(全11話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:12:25
収録日:2021/03/18
追加日:2021/04/23
カテゴリー:
≪全文≫

●「希望」があるから人間は原発をつくり、消費文明をやめない


―― なんだか乱世に入ってきている感じですね。

執行 乱世なんていうレベルではありません。『脱人間論』という本にも軽く書きましたが、人類の文明史には波があります。何が乱世の定義かというと、驕って、バカで、贅沢で、滅びる民族がいる一方、それを打ち負かす精悍で、質実剛健で、強い民族がいる。これが取って替わるのが乱世です。ところが今の地球上の人類には、取って替わる者がいない。

―― なるほど。

執行 全部ダメです。日本もダメですが、欧米はもっとダメですから。中国も韓国もダメ。これから来るであろうアラビアやインドも全部ダメ。取って替わるものがいないのは、乱世にもならないということです。

―― 確かにそうですね。取って替わるものがないのですから。

執行 これは文明史を勉強すると、必ずわかってもらえます。文明史の第一人者、トィンビーの『歴史の研究』を見ると、文明史とはホモサピエンスができてからの歴史で、ホモサピエンスのうち贅沢な人間が落ちぶれて、精悍で真面目で信仰深い生活を送っている民族が取って替わる。文明史はこれの繰り返しで、トインビーは全部そうです。

 それが今はいない。例えば今のアメリカ文明は、消費文明です。この消費文明に替わる文明を立てられるホモサピエンスは存在していません。存在していないことが何を意味するかというと、「滅びる」ということです。

 だから私は、これまで何度も同じことを言っていますが、滅びたあとのわれわれホモサピエンスが、新しい人類と共にどう立ち上がっていくかしか考えていません。そのことを本にも書き、研究しているのです。

 だから希望はないといえば、希望はないのですが。ただし、いまの人はみんな希望を欲しがっていますが、そもそも希望があるからダメなのです。希望などを持っているから、原爆をつくり、水爆をつくり、プラスチックをつくり、石油文明をやめない。あらゆる消費文明をやめない。

 消費文明をやめない人たちと、よくよく語り合っていると、みんな「何とかなる」と思っているのです。つまり希望です。でも本当に人類が立ち直るなら、絶望の中からしか立ち直らないのです。「本当にダメだ」とわからなければならないのですから。だって、もうわれわれには、ゴミを捨てる場所もないのです。プラスチックもそ...
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