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永田町の数合せの論理とは意味合いが違う

政界再編の異なる考え方

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
英国史上初の労働党出身の首相、ラムゼイ・マクドナルド
政界再編とは単なる政党の離合集散や数合わせではない。英米における政界再編の代表的事例も挙げながら、「風」の成行きではなく、持続性を持った支持基盤を政党が得るためには何が必要かを指摘する。
時間:07:10
収録日:2012/11/20
追加日:2014/02/24
カテゴリー:
キーワード:

●政界再編の本質は、政党による支持基盤の吸収


 「政界再編」という言葉は英語で言うと「party realignment」、つまり「政党再編」という言い方がされます。では、「party realignment」とは何か。

 これは、日本では永田町の政党が離合集散することを政界再編と言っていますが、世界で大きな政界再編というのは二つあります。

 一つはイギリスで起きた政界再編です。それはどのような政界再編かと言いますと、1920年代にそれまでは保守党と自由党、トーリー対ホイッグの戦いであったのが、選挙権が拡大されます。どのように拡大されたかと言うと、労働者階級に、つまり資産がない人にも選挙権が拡大され、普通選挙法が実行されました。

 そうすると、新たに参入してきた無産階級、あるいは労働者階級の有権者たちが、労働党支持にまわります。そこで保守党、自由党の対立に、労働党が間に入り込んで自由党を押しのけるという政界再編が起きたわけです。これが世界の政界再編の一つです。

 もう一つの大きな例は、アメリカにおいて起きた、ニューディール再編ということが言われています。アメリカの政治の歴史というのは、36年周期とか40年周期とか言われますけれども、特にニューディールで再編が起きたのは何かと言いますと、それまで民主党というものが支持基盤としてきた、北部や首都を中心に、移民層や移民の子弟、あるいは労働者層のところを固めていくわけです。

 ですから、このニューディール再編というのは、みなは社会保障政策のところしか見ていないのですが、ルーズベルトは同時に自分の支持基盤を固めたわけです。

 それを固める民主党の再編というのが1930年代に行われて、それが1970年頃まで約36年、40年近く続いて、民主党がアメリカ政治を動かすことができるようになりました。これがもう一つの政界再編の代表例なのです。

 そうすると、政界再編というのは何かと言うと、政党同士の離合集散ではなくて、自分の支持基盤を政党が吸収できるように再編をしていくということなのです。


●政界再編に重要な有権者の構造把握


 では、支持基盤とは何か。つまり日本における政党再編の基盤があるのか。ここが一番難しいところです。ところが、なかなかこの=cleavage=亀裂を見つけにくい。日本では特に見つけにくくて、国民のほうが星雲状態で、それが二つとか三つにまとまっていたら、その上に乗っかる政党というのはかなり安定的なのですが、有権者のほうがまだまだ風まかせ、あるいは星雲状態のままですから、党ができても持続しないのです。

 ですから、この政界再編論というのは、永田町の再編、つまり数合わせなのです。数で勝てる。数で勝てるけれども、次の選挙では勝てない。そうすると、この有権者とはどのような構造を持っているかということを、実は探り出さなければいけません。実はこの部分が、研究が進んでいるように見えてあまり進んでいないと思うのです。

 つまり、「日本の有権者とは、二つのグループに分かれるのですか、それとも三つに分かれるのですか」ということです。ここを十分研究した上で、その層に乗っかる政界再編を作る。それをしないと持続しません。


●克明な有権者分析が安定した政党基盤作りには必須


 今まで2005年、2009年と大きく政権が代わり、それから大量の議席を獲得して、同時に落選者も出したわけです。今度も大きく動くでしょう。

 それは単純に風と言われており、風というのは動く要素ですが、実は小選挙区などを見ていると、イギリスもアメリカも安定選挙区というのがあり、風があってもそうは動かない。そのために、政権は安定しているわけです。

 過去、むしろ小選挙区というのは、「新人が出にくい制度」と言われてきたのです。ところが、日本では郵政選挙政権交代選挙でどっと動いて、大量にチルドレンが当選した。今回も第3極というようなことで、どっと動くかもしれませんけれども、そこだけで政治を見ていたら、多分持続はしません。

 そのためには、「基盤である日本の有権者とは何なのか」ということの分析が必要です。アメリカでは社会学的な要因、人種、階層、宗教などを中心に分析し研究されていますが、日本ではなかなか社会学的な特徴がなく、みな同じような、せいぜい都市に住んでいるか、あるいは高所得者か、老人かどうかという程度しか分からないのです。

 もっとここを克明に調べるべきです。克明に調べた上で、持続性を持たせるためにはどうしたらいいか、それによって政党の基盤を作るべきです。そうでないと、頭でっかちな、つまり夢を語って、憲法を変えるとか教育を変えるとか、あるいは原発政策、そのイデオロギー的なところで政党の離合集散をすれば、国民はついてくるだろうということになってしまいます。

 それは、非常に...
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