●野党再編に必要なのは、「何のために、いつまでにやるのか」という目的
―― 政権に道徳的緊張感がなくなってから久しいわけですが、やはり健全な野党がいないと政治というのは機能しないですよね。その中で、今日はぜひ先生に野党再編についてお聞かせいただければと。
曽根 野党再編やリーダーシップ論ということを聞きますと、二つのことがいつも出てくるのです。一つは「ないものねだり」、もう一つは「見果てぬ夢」です。そこで、今回は、二つに分けてお話します。一つは、再編というものはどういうものか。それからもう一つは、対立軸の話で、そちらはあとでします。
まず再編は必要なのか。これは簡単です。例えば今、自民党の一強多弱と言われています。そして、それに野党が対抗するためにはどうしたらいいのか。その文脈の中での野党再編だと思うのです。だから、政界再編や野党再編というのは、目的があるわけです。「何のために、しかも、それはいつぐらいまでにやるのですか」と。「次の選挙で勝つのですか、その次の選挙ですか」と。こういった時間的な目処などがないと、永遠にただただ野党として固まっていることになり、これは、55年体制時代の社会党のようなものです。政権をとれない野党、つまり、万年野党というわけです。
●野党再編の難しさは、存在感を示す野党と抜け駆けする野党の存在にある
曽根 そこで、政界再編、あるいは政権交代ですが、現実に今の選挙制度で野党が勝てるということは分かったわけです。むしろ過去3回の選挙では、1回ごとに揺れが大きいので、そちらのほうが問題になっています。
そうすると、選挙では勝てることは分かったけれども、実際に勝つにはどうしたらいいか、ここが一つ問題になってくるわけです。そこで、野党再編や政界再編を考えるときに、長期のシナリオを考える。考えた戦略の中で、今打つべき手を位置づける。それをやるためには、手持ちの材料はいったいどれだけの資源を持っているかが鍵になります。手持ちの材料というのは、政策のストック、それから候補者、組織、資金、その他です。
ということで、まず野党再編を考えるときの難しさを最初に述べます。一つ目は、存在感を示す目的の野党がいるということです。存在感を示す野党がいるという前提がある限りは、統一候補は出せません。ですから、「共産党は各選挙区に立候補者を出すのですか?」という問題があります。これが一つ目です。
もう一つは、野党再編と言っているけれども、連立に加わって、政権に1枚関与したいという野党がいるわけです。これは、言ってみれば、抜け駆けグループで、この抜け駆けがいると、野党再編はできません。
●今の選挙制度では2党プラスアルファしか生き残れない
曽根 そうすると、野党としてじっくりと作戦を練って、勝てるような形に仕組みをつくって臨むけれども、時期が来るまで待てますか、それだけ持続可能ですか、という問題があります。かろうじて民主党は政権交代しました。つまり、野党が選挙で勝って政権をとったのです。ただ、日本の歴史を見ても、戦前からそうですが、選挙で勝って野党が政権とったという例はほとんどありません。ほとんどの場合、与党が崩れるか、あるいは、選挙で組み合わせが変わるという程度だったのです。そういう意味では、堂々と選挙で勝って、多数を握ることによって政権を獲得するということが、今の制度では可能になったわけです。
そこで、制度的に可能になったものを、どうやって利用するかというと、小選挙区と比例代表ですが、基本的には小選挙区が利いている選挙制度です。小選挙区が利いている選挙制度の実質競争は二つです。過去の経験や、いろいろな国のデータを調べてみると、実質競争は二つくらいなのです。そうすると、党がいくつ必要なのかというよりも、2党プラスアルファぐらいしか生き残れないわけです。
●多弱なのに分裂していくところに野党再編の難しさがある
曽根 ところが今、野党はいくつありますか、ということです。しかも、多弱の弱が分裂しています。みんなの党が分裂し、維新の会が分裂し、民主党も分裂するかもしれません。この分裂の要素が非常に強いのです。求心力がありません。すなわち、野党再編が難しい理由の一つは、勝つことによって求心力を持つけれども、勝てないとどんどん分裂していくということです。
再編は、与党から仕掛けると簡単です。つまり、マージナルな部分を組み込んでいけばいいわけですから、政権はいつでも維持できるのです。
よって、野党から再編を仕掛けただけでは駄目なのです。仕掛けた上で議席を過半数とって、政権をとるということをしなければいけないわけです。これが一つです。
●選挙に勝つだけでなく、政権基盤がなければ持続できない
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