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「徳」は江戸期の人間形成の基盤

『大学』に学ぶ江戸の人間教育(2)全ては「徳」に始まる

田口佳史
東洋思想研究家
概要・テキスト
江戸期の幼年教育で重視した四書五経の『大学』を、老荘思想研究者・田口佳史氏とともに読み解くシリーズ。『大学』では、「徳を明らかにする」ことに重きを置き、徳の修得は、「全てを得る」ことに通じると説く。「得る」に込められた真の意味を、『大学』のテキストをたどりつつ解き明かしていく。(全5話中第2話目)
時間:10:59
収録日:2014/12/17
追加日:2015/08/03
≪全文≫

●「明らか」とは精通していることで、社会人の第一歩として非常に重要


 『大学』の話に戻ります。

 「大學の道は、明徳を明かにするに在り。」

 「大學の道」、つまり、人間が真っ先に学ばなければいけない最大のポイントは、「明徳を明かにする」こと、すなわち、「徳」を明らかにするようにと言っているのです。

 「明徳を明かにする」の「明か」は、何を表現しているか。江戸時代、精通している人のことを「あの人は計数に明るいね」、その反対の人のことを「あの人は外国事情に暗いね」と、明るい、暗いという言葉で表現しました。

 そういう意味で、「明か」とは、精通していることで、もっと言えば、身の中にすでに入っていて忘れることができないほど修得されている状態を指しているのです。ですから、意識して「徳を振るうべきだ」と思わなくても、そういう人間になっていることが、実は、社会人の第一歩として、非常に重要なのです。

 江戸期には、今で言う小学校一年生の年になった時、これを四書の最初の文章として徹底的に教わります。ただ、申し上げたように、家庭教育の段階ですでに教わっているものですから、さらにここで正式に文章として学ぶため、「明徳を明らかにすることが重要なんだな」と、子どもたちは感じるのです。


●「明徳」修得の次ステップ-多くの親愛関係を築き、「至善」の状態を感得する


 そうするとどうなるか。こう続きます。

 「民に親しむに在り。至善に止まるに在り。」

 「民に親しむに在り」とは、いろいろな解釈がありますが、流れで言えば、これは、多くの方と親愛の関係になるという解釈でよろしいでしょう。

 子どもが家を出て外へ行くと、いろいろなところから「遊ぼう」「こっちおいでよ」「これしよう」と多くの親友が声をかけてくれるので、「いいものだな。自分は一人ではない。多くの人と心を通わせることができている。こんな気持ちのいい満足感はないな」と思う。それが「至善」、善の至りです。「至善に止まるに在り」とは、そういう状態をつくづく感じることなのです。

 たまに至善に行くのではありません。「止まる」と書いてあるのは、そういう至善の状態が自分の居るべきところだということで、それを子どもが感じ取るということです。


●徳を明らかにし、至善の状態に止まることを知って、人生の目標が定まる


 文章は...
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