編集長が語る!講義の見どころ
「危機の時代」に気候変動問題をどう考えるか/小原雅博先生【テンミニッツTV】

2022/05/17

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
5月12日(水)のメールでお報せしたように、現在、「編集部ラジオ」の投稿を大募集中です。今回のテーマは【誰かに教えたくなる、オススメ講義】。

もちろん、「いま、この講座がお気に入り」という軽い気持ちのご投稿、大歓迎です。下記のアドレスに、「ラジオネーム(本名も可)」「オススメ講座(講師名&講座名)」「オススメの理由」をお書きいただき、ぜひご一報いただければ幸甚です。
radio@10mtv.jp

さて、気候変動問題が、世界にとって重大な課題であることはいうまでもありません。しかしロシアによるウクライナ侵攻と、それによる天然ガス供給の混迷によって、現在、やや五里霧中の状況になっていることは否めません。

この気候変動問題は現在、国際政治的に見て、どのような状況になっているのか。本日はそのことを小原雅博先生(東京大学名誉教授)にお話しいただいた講義を紹介いたします。

この問題を考えるとき、各国がどのように動いているかを知ることは、きわめて重要です。小原先生はその点を的確に描き出してくださいます。一気に、現況に対する理解が進む講座です。

◆小原雅博:「危機の時代」の気候変動(全6話)
(1)3つの危機とCOP26の成果
世界が抱える「3つの危機」と気候変動の深刻な関係
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4433&referer=push_mm_rcm1

小原先生は、まさに現在、「パンデミックや気候変動などの『グローバルな危機』」、「ウクライナ侵略や台湾海峡問題などの『地政学の危機』」、そして「少子高齢化や格差拡大などの『国家の危機』」が相互に作用しあっている複雑さ、深刻さがあると喝破します。

気候変動問題も、もちろんこの影響を免れることはできません。ウクライナ侵略で、エネルギー資源問題がクローズアップされていることは、まさに象徴的です。

そのようななかで、気候変動問題をどう考えるべきなのか。

まず小原先生が強調するのは、COP26で確認された結論です。つまり、「気温上昇幅を1.5度以内に抑えないと大変なことになる」。そのために、「2030年までにCO2排出量を、2010年比で45パーセント減少させることが必要だ」ということです。

これが専門家たちの研究によって確定された「結論」と位置づけられました。もちろんこれまで気候変動問題について甲論乙駁がありましたが、上記の指摘が確定的に提示されたのです。

そしてCOP26の成果文書には「1.5度に抑える努力を追求することを決意する」という文章が入りました。

いわばこのことが「総論賛成」となった。では、それを実現するための「各論」をどうするのか。そこが大きくクローズアップされます。

まず、気候変動問題については、先進諸国と途上国のあいだに大きな基本的な立場の違いがある。途上国にとって経済成長は非常に重要な課題だからです。小原先生は、「先進国は途上国に相当支援をしなければいけないと思う」とおっしゃいますが、これは現実問題としては、かなり厳しい課題でしょう。

もう一つは、取り組み状況の違いによる「感覚の違い」です。再生可能エネルギーへの転換を早くから進め、さらにロシアからの天然ガス・パイプラインもあって、石炭廃絶を猛烈に主張した欧州諸国と、それに賛同しなかった日本、アメリカ、オーストラリア、中国、インドなどとは、明確に温度感の違いがありました。

ロシアのウクライナ侵攻によって欧州は難しい立場に立たされたともいえますが、しかし、それを乗り越えてどのような未来を追求するのか。ここはなお大きな問題です。

第2話以降で、小原先生は、具体的な取り組みを次々とご紹介くださいます。

まずはカーボン・オフセットの考え方。さらにエンジン車廃止の流れ。そして、再生可能エネルギーの導入です。

2019年の状況で、電源に占める再生可能エネルギー比率は、ドイツやイギリス、イタリア、スペインなどはおしなべて3割以上になっています(フランスは再エネは2割ですが、原子力が7割)。一方、日本やアメリカは17%弱、中国は25%です。

この比率は、現在、猛烈な勢いで変わっていますので、全体状況を理解しておくことはきわめて重要です。小原先生は、各国がどのように取り組んでいるのかを個別に指摘くださいます。それを知っておけば、今後の趨勢(すうせい)も予想しやすくなることは間違いありません。ぜひ講座本編をご覧ください。

さらに電気自動車(EV)や水素エネルギーについても、現況をご紹介くださいます。ここは日本の産業の今後を考えるうえでも死活的に重要な部分であることは、あらためていうまでもありません。

そして、CO2排出削減のために、どのような投資と途上国支援を行なっていくか。途上国支援については、「途上国内の問題」(腐敗や行政手続き、投資規制などの途上国の政治リスク)をどのようにクリアするかが課題になります。

政治リスクは、途上国に限りません。今般のウクライナ侵略のような「地政学上の危機」をどのように捉えるかも重要な課題です。そのことが、今後の資源価格の動向にも大きく関わってくることもいうまでもありません。

小原先生は、それぞれについて、講座の第4話、第5話、第6話でご指摘くださいます。

現在の問題が非常にクリアに把握できるようになる講座です。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆小原雅博:「危機の時代」の気候変動(1)&referer=push_mm_rcm2
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4433&referer=push_mm_rcm2


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☆今週のひと言メッセージ
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《日本の茶道は単なる作法の問題ではなく、世界観の問題である》

https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2217&referer=push_mm_hitokoto

『茶の本』の背景にあった激動と争いの時代
大久保喬樹(東京女子大学名誉教授)

茶道は普通、英語に訳すと「Tea Ceremony(茶の儀礼、儀式)」と言いますが、天心はあえて「Teaism」という言葉を使います。「-ism」とは何かというと、例えば「Christianism」「Buddhism」というように、宗教や思想を表す言葉です。つまり、日本の茶道は単なる作法の問題ではなく、世界観の問題であるということを、まずはっきりと述べているのです。


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今週の人気講義
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坐禅をすればわかる――なぜ禅は武士に向いているのか
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4444&referer=push_mm_rank

岸田政権に求められるのは強力な司令塔と日本産業の再生
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4389&referer=push_mm_rank

ジョブズの復帰で始まった「どん底からの逆転劇」の真相
桑原晃弥(経済・経営ジャーナリスト)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4449&referer=push_mm_rank

「開けるな」という玉手箱を渡した浦島伝説の不思議
鎌田東二(京都大学名誉教授/上智大学大学院実践宗教学研究科特任教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4405&referer=push_mm_rank

プーチンの核恫喝で生じた「エスカレーションのジレンマ」
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所特任教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4468&referer=push_mm_rank


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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。

さて、今回は田口佳史先生(東洋思想研究者)の新シリーズ講義を紹介いたします。

◆田口佳史:墨子に学ぶ「防衛」の神髄(全2話)
(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4471&referer=push_mm_edt

この講義は、中国・春秋戦国時代に活躍した諸子百家の中で儒家(儒教)とともに二大勢力ともいわれた墨家に焦点を当て、秦の始皇帝以来、歴史の影に隠れていた『墨子』の記述から、現在の国家防衛を考えるためのヒントを学ぶというものです。

ロシアのウクライナ侵攻で激変する現在の国際情勢をにらみながら、日本にも迫りくる有事の可能性を想定したうえで学べる貴重な講義といえるのではないでしょうか。

明日(5月18日)は2話目が配信予定です。ぜひ続けてご視聴ください。