編集長が語る!講義の見どころ
関東大震災から100年…地震から考える地球の謎/特集&沖野郷子先生【テンミニッツTV】

2023/09/01

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

本日(9月1日)は「防災の日」です。

最近、衝撃的なニュースが流れました。日本赤十字社がアンケート調査をしたところ、防災の日の由来を正しく答えられなかった人が「49.2%」にのぼったというのです。

もちろん、防災の日がこの日になったのは関東大震災にちなんだものです。関東大震災が起きたのは大正12年(1923年)9月1日。ちょうど100年前のことでした。死者・行方不明者あわせて約10万5000人という大災害です。

南海トラフ地震をはじめ、さまざまな地震の可能性が指摘されるいま、過去の地震の記憶をしっかりと留め、できうる対策を進めて行きたいものです。

併せて、地震は、人智を超えた大きな自然の力を痛感させるものでもあります。最新研究の成果をもとに地震、さらに火山噴火のメカニズムについて学ぶことで、現時点で地球の謎がどこまでわかっているかも知ることができます。

今回の特集では、「地震から考える地球の謎」や「防災のあり方」に迫る講義を集めてみました。

…と、その紹介の前に。

■プログラムガイドWeb化のお報せ

以前、毎月郵送させていただいておりました各月の「プログラムガイド」ですが、環境問題などの見地から「紙での送付をやめるべきでは?」などのお声を数多くいただき、郵送を取りやめてPDFでの発行としておりました。

いよいよ、このたびWeb化して、より見やすくなりました。ここから特集ページや講師ページにダイレクトに飛ぶこともできます。

テンミニッツTVサイトのいちばん上のトップメニューの「新着」をクリックいただき、そこにある「講義ガイド」をクリックしていただくと、いつでもお読みいただくことができます。

日々のご視聴の参考に、ぜひご活用ください。
(プログラムガイド=講義ガイド)
https://10mtv.jp/program_guide/?referer=push_mm_new_function

(新着ページ)
https://10mtv.jp/pc/content/search_list.php?referer=push_mm_new_function


■特集:地震から考える地球の謎

https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=75&referer=push_mm_feat

・沖野郷子:地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か

・纐纈一起:地震と地震動、マグニチュードと震度とは?

・藤井敏嗣:火山噴火が起こるメカニズムと日本の火山の特徴

・片田敏孝:東日本大震災の8年前から釜石で防災教育を行ってきた理由


■講座のみどころ:プレートテクトニクスの仕組みと地球のメカニズムの謎に迫る(沖野郷子先生)

地震大国日本。いくつものプレートが日本近海で沈み込んでいて、それが地震の原因になっているという話は、多くの方がお聞きになっていることでしょう。

しかし、プレートが生まれる場所について、どのくらいご存じでしょうか?

さらに、このようなプレートの動きで地震の仕組みなどを説明するプレートテクトニクスは、1960年代の半ばに生まれた考え方だといいますが、けっして万能ではなく、説明できていないこともいくつかあることを、どれほどの方がご存じでしょうか。実は、海底の話は、まだまだわかっていないことばかりなのです。

地震大国・日本で生きるわれわれとしては、ぜひプレートテクトニクスの仕組みや課題について知っておきたいところです。

本日は、そのような「海底と地球の不思議」をわかりやすくお話しいただいた沖野郷子先生(東京大学大気海洋研究所教授/理学博士)の講義を紹介いたします。知的好奇心を大いに刺激いただける内容で、地球に対する見方も変わること、うけあいです。

◆沖野郷子:海底の仕組みと地球のメカニズム(全8話)
(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4008&referer=push_mm_rcm1

プレートテクニクス理論によれば、日本列島の近くでは「太平洋プレート」「フィリピン海プレート」「ユーラシアプレート」「北米プレート」が接しています。「太平洋プレート」が東北日本沖の日本海溝で沈み込んでおり、「フィリピン海プレート」が南海トラフや琉球海溝(南西諸島海溝)で沈み込んでいます。

では、日本海溝で沈み込んでいく「太平洋プレート」は、どこからきたのでしょうか?

実は「太平洋プレート」は、南北アメリカ大陸の近くにある「中央海嶺」で生まれているといいます。つまり、新しい海底が、その中央海嶺で生まれているのです。

海底が動くスピードは、1年間に5センチから10センチ。日本沖合の太平洋の海底の年齢は1億年以上とのことで、1億年をかけてやってきたことになるのです。

では、なぜプレートが動くのか。それは、プレートが沈み込むから。沈み込むプレートの重みで、自分で落ちていく。テーブルの上のテーブルクロスが、いったん落ちはじめたら、自分の重力で落ちていくのと同じだと、沖野先生はおっしゃいます。

プレートが沈み込んでしまうので、それに引っ張られて中央海嶺の付近で、どんどん隙間ができてしまう。その隙間を埋めるためにマグマが地球の内部から噴き上がってくる……そのようなイメージだといいます。

ところで、地球の内部では「マントル対流」があるといわれますが、実はマントルは「固体」です。固体の石が対流しているといわれても、ちょっとイメージが掴みづらいですが、沖野先生によれば「タイムスケールを非常に長期的に考えたときには、鉄棒でも曲がるし、氷河だって動く。時間スケールを長くとってみると、ゆっくりと流動はしている」のだといいます。

では、その固体だったものが、液体になってマグマになるのは、どのような仕組みなのでしょうか? それについては、ぜひ講義をご覧ください。沖野先生が図表を用いつつ、とてもわかりやすくご解説くださいます。

沖野先生は続けて、いろいろなことを教えてくださいます。太平洋と大西洋では、海底の姿が大きく異なるが、それはなぜか。そもそも中央海嶺はどのような姿をしているのか。重金属類など資源的な見地では、どのようなことがいえるのか。そもそも小松左京がSFで書いたように日本が沈没することはありえるのか……。

このようなことも、沖野先生は興味深い動画や図表を数多く用いながらご解説くださいますので、まさに一目瞭然、よくわかります。

また、実際に海底を調べる手法や、日本近海の複雑なプレート事情、さらにプレートテクトニクスでは説明できない事柄についても、沖野先生はご解説くださいます。さらに、なぜ地球だけにプレートの動きがあって、火星や月にはないのか……。

プレートテクトニクスの「限界」について、沖野先生は次のようにおっしゃいます。

《プレートテクトニクスは、現在のスナップショットを見たとき(現在はかなり定常的な状態だと思われているのですが)、つまり定常状態を説明する枠組みとしては十分だし非常に良いけれども、地球の46億年の歴史を考えたとき、イベント的に起こるような地球史上の大きな事件とか、何か大きく物事が変わるような、定常ではないところは枠外なのです。その辺りが説明できていないというのが、プレートテクトニクスの限界でもある。今後、それを超えた枠組みをつくらないと、トータルには地球のシステムを説明できないのです。そこが難しいところです》

地球のことで、まだまだ解明されていないことが山ほどあることが伝わってきます。また、「動くシステム」としての地球の不思議さも感じることができます。ぜひご覧ください。


(※アドレス再掲)
◆特集:地震から考える地球の謎
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=75&referer=push_mm_feat

◆沖野郷子:海底の仕組みと地球のメカニズム(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4008&referer=push_mm_rcm2


----------------------------------------
編集部#tanka
----------------------------------------

この国で世界の地震の一割が起きていると知る九月一日

纐纈一起先生が地震のメカニズムを教えてくださる講義。日本の面積は地球の表面積の1%なのに世界の地震の約10%が起きている。防災の日、この数字も心にとめておきたいものです。(達)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=1194&referer=push_mm_tanka