編集長が語る!講義の見どころ
歴史の真髄~第12代将軍・徳川家慶と水戸藩・徳川斉昭/山内昌之先生【テンミニッツTV】
2023/12/05
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。
歴史は、どのようにして大きく動いていくのか。本日は、そのことをしみじみと考えさせてくれる講義を紹介いたします。江戸幕府の第12代将軍・徳川家慶、そして同時代に活躍した水戸藩主・徳川斉昭について、山内昌之先生(東京大学名誉教授)がご解説くださった講義です。
徳川家慶は、あまり知名度が高い将軍とはいえないかもしれません。一方、「烈公」とも称される徳川斉昭は、有名な藩校・弘道館を創立したり、藩政改革を成し遂げたり、尊皇攘夷で大きな影響力を発揮したりして、名君ともされる人物です。しかし、キャラクターが立った「名君」が、必ずしも歴史をうまく進ませるわけではなく……。
歴史はなぜ、どのように動いていくのかを、垣間見ることができる興味深い講義です。
◆山内昌之:徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(全4話)
(1)12代将軍・徳川家慶とはいかなる人物か
アヘン戦争の脅威…鎖国の限界が見えた徳川家慶の時代
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第12代将軍・徳川家慶は寛政5年(1793年)に生まれ、嘉永6年(1853年)に亡くなっています。将軍在職は天保8年(1837年)から没年までです。
第11代将軍は、家慶の父で、在位50年に及んだ徳川家斉です。晩年に徳川家慶に将軍職を譲ったものの、それから没する(天保12年=1841年)までの4年間、家斉が「大御所」として、大きな影響力を保ち続けました。
一方、水戸藩主・徳川斉昭は、寛政12年(1800年)に生まれ、万延元年(1860年)に亡くなっています。水戸藩の第9代藩主となったのは、文政12年(1829年)のことでした。
山内昌之先生は、父の家斉と水戸藩の斉昭が、家慶にとっては「自分の地位を脅かす、あるいは自分の地位を十分機能させなかった存在だった」と指摘します。
家慶は周りの人からも「庸常(凡庸)」と評される人物でした。一方、家斉も斉昭も非常に個性的な人物です。家慶にとってはやりづらいことこのうえありません。しかも、同時代にアヘン戦争が起きるなど、風雲急を告げていきます。
家慶にとって、どうやりづらいか。まずは、最初の4年間は家斉が大御所でいたために、思うようにできません。家斉の没後、将軍・家慶は水野忠邦を用いて、家斉の側近を粛清しつつ、天保の改革を進めさせます。この天保の改革では奢侈を取締り、緊縮財政を進めていきますが、父の家斉の治世下で爛熟した文化・文政の「化成文化」が花開いた後だけに、世間からは反発を受けます。その一方で、一足先に藩政改革を行なっていた水戸藩の徳川斉昭とも比べられることになります。
しかも、斉昭は「とても癖の強い」人物でした。山内先生は一例として、斉昭が打ち出した北海道開拓構想をご紹介くださいます。
ロシアの脅威が高まるなか、それまでの松前藩では国防を任せておけない、と斉昭は考えます。松前藩は、石高でいえば1万石程度に位置づけられた小藩だったからです。
そこで斉昭は「私が水戸徳川家35万石を率いて、直接、蝦夷地を開拓する。それからロシアと当たる。死ぬ覚悟で行く」と言い出すのです。水戸藩を明け渡して、南部藩(20万石)、津軽藩(10万石)、松前藩と領地を交換するのだと。
しかも、この構想を腹心の藤田東湖にも誰にもきちんと相談しない。北海道の気候条件をどこまで把握していたかもわからない。にもかかわらず、北海道開拓で「100万石くらいとれるのではないか」と理想を描いていく……。
まことに興味深いエピソードですので、ぜひ講義第2話をご参照ください。
とにもかくにも、やがて徳川斉昭は、家慶によって水戸藩主引退に追い込まれることになります。それは、斉昭が行なった水戸藩内での仏教弾圧や、幕府の人事への口出しが原因でした。
家慶には、「大変に疑い深い気質で、何か少し疑念を持つと、なかなかそれを許さなかった」という評も残っています。家斉や斉昭などといった個性的な人物に囲まれたゆえのことでしょうが、家慶の苦しみも伝わってきます。
一方で、家慶の子供は第13代将軍になる家定しか成長しませんでした。そのため、斉昭の7男を一橋家に養嗣子にとります。後の慶喜です。
しかも斉昭は、その強烈なキャラクターに加え、女性関係に乱脈であったこともあって、大奥から大いに嫌われていました。
このようなファクターがないまぜになって、幕末混乱期に突入していくことになるのですが……。その機微については、ぜひ第3話、第4話をご覧ください。
第12代将軍・徳川家慶が没してから、明治維新までは15年ほどのことです。なぜ明治維新が起こるのか。その淵源となる様々なことが、この時期に起きていたことがわかる講義です。ぜひご覧ください。
(※アドレス再掲)
◆山内昌之:徳川将軍と江戸幕府~家慶と烈公斉昭(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5099&referer=push_mm_rcm2
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編集部#tanka
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編集後記
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皆さま、今回のメルマガ、いかがでしたか。編集部の加藤です。
12月に入って今年もあと1か月足らずになりました。まだ少し早いですが、今年もたくさんのご視聴、まことにありがとうございます。
以下、プログラムガイド12月号でもお伝えしましたが、近日中に特集「令和5年下半期人気ランキングBest10」が発表となります。
(プログラムガイド=講義ガイド)
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