衰退途上国ニッポン~その急所と勝機
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
労働市場が硬直的な日本…転職率はアメリカの4分の1以下
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(5)3つの「メガトレンドの変化」
宮本弘曉(一橋大学経済研究所教授)
流動的な労働市場というと、日本では「解雇しやすくなる」「首を切られる」といったマイナス面として捉えられる。だが実は、流動的な労働市場のほうが労働者にとってプラスなのである。どういうことなのか。実は今、日本は3つの「メガトレンドの変化」の渦中にあり、もはや働き方や雇用形態が変わらざるを得ない事態に直面しているのだ。その「3つのメガトレンドの変化」とは何か。具体的に解説する。(全6話中5話)
時間:17分56秒
収録日:2023年6月30日
追加日:2023年11月28日
≪全文≫

●流動的な労働市場へ――「雇用は生産の派生需要である」


 ただ、「流動的な労働市場にしましょう」というと、いろいろと不安に思われる方、懸念を持たれる方もいらっしゃいます。どういうことかというと、「解雇がしやすくなるではないか」「クビ切りができるではないか」などと労働者にとって雇用が不安定になってしまうからよくないのではないか、といった懸念・不安がたくさんあるわけです。

 ところが、実はそんなことはありません。むしろ流動的な労働市場は、労働者にとってプラスなのです。そのことについて今から説明させていただきます。

 今、労働市場を流動化することが労働者にとってマイナスではない、むしろプラスになるという話をさせていただきました。これはなぜかということですが、雇用を考える際に、キーワードがあります。「雇用は生産の派生需要である」という言葉です。これは経済学の非常に頑迷な命題の1つです。私も大学で教鞭をとっていますが、大学1年生の経済学の授業の最初のほうに出てくるコンセプトです。

 端的に申し上げますと、「雇用は生産があって初めて生まれる」ということです。こういう話をすると、「えっ」と驚かれる方が多いと思います。「人がいるからモノもつくれるし、サービスも提供できる。だから雇用があって初めて生産ができるのではないか」と思われる方がいらっしゃると思います。ですが経済学の発想は逆で、そもそも企業は儲からなかったら人も雇わないわけで、やはり生産が最初に来るわけですね。

 では、この「(雇用は)生産の派生需要である」とは何を意味するのかというと、生産構造が変わると雇用も変わらざるを得ないということです。もう少し広い意味でいいますと、生産構造に影響する環境(経済、社会の環境)が変わったら、それは直接的、間接的に雇用に影響を及ぼすということです。雇用に影響を及ぼすということは、働き方であったり採用の仕方であったり、あるいは労働市場のあり方そのものにも影響することになるわけです。


●メガトレンドの変化1:人口構造の変化


 日本は今、「メガトレンドの変化」と呼ばれるような非常に大きな変化に直面しています。このメガトレンドの変化が、生産構造に影響し、結果として雇用にも影響するという形になっています。

 では「メガトレンドの変化」とは一体何かというと、3つあります。1つが、人口...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
生成AI「Round 2」への向き合い方(2)ハードで動くCopilot
Microsoft Copilotの革新性…想像がつかない世界に
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治