編集長が語る!講義の見どころ
銀河とブラックホールの秘密/岡朋治先生(テンミニッツTVメルマガ)
2020/10/20
いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上です。
10月22日(木)の夕方から宵にかけて、南から南西の空で、月(半月)と木星と土星が、接近して見えるそうです。月の左上に輝くひときわ明るい星が木星で、さらにその左上の明るい星が土星とのこと(20時から21時ごろには、かなり低くなってしまうので、早めが見頃だそうです)。
今は昔の話ではありますが、アメリカの無人宇宙探査機ボイジャーが送ってきた木星や土星の精細な写真には、大いに心を動かされたものです。あの美しき惑星が、月と並んで見えると聞くと、やはりロマンがかきたてられます。いずれにせよ、はるかな宇宙に思いを馳せると、日々押し寄せてくるさまざまな出来事が、あたかも些細なことであるかのように思えてくるものです。
本日は、岡朋治先生(慶應義塾大学理工学部物理学科教授)に銀河とブラックホールについてお話しいただいた講義を紹介いたしましょう。
◆岡朋治:ブラックホールとは何か(全8話)
(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2557&referer=push_mm_rcm1
岡先生の説明は、天の川銀河(私たちが住んでいる銀河)についての説明から始まります。地球は、天の川銀河の中心から2万7000光年離れたところに位置しています。
この宇宙には、2兆個~7兆個の銀河があるといわれているそうです。そして、その銀河のほとんどには、中心に超大質量のブラックホールがあると考えられているといいます。ブラックホールとは、あまりに重いために、光すら出てこられなくなった天体のことです。
もちろん、われわれが住む天の川銀河の中心にもブラックホールがあると考えられています。この天の川銀河の中で、「ブラックホール候補天体」と呼ばれるものは、約60個認識されているそうですが、理論計算からは、天の川銀河の中にあるブラックホールの総数は1億個から10億個であると評価されているそうです。
恒星は自分自身の核燃料を燃やしながらエネルギーを生成して光っている天体ですが、その恒星が一生を終えるとき、特に質量が重い星(太陽の30倍以上の質量を持った星)がブラックホールになると考えられています。天の川銀河にある恒星の総数は2000億から4000億個とのことですので、ブラックホールが1億~10億くらいあっても、何の不思議もないのです。
では、天の川銀河のブラックホールが1億~10億もあるとされるのに、なぜ、現時点で見つかっているのは60個ほどなのか。それは、ブラックホールが真っ暗な天体で、普通では見えないからです。2つの恒星が近接している近接連星系(ふたご星)の場合は、その星の1つがブラックホールになったときには伴星からの質量降着によって強いX線が放射されるのでブラックホールがあることがわかるそうですが、単独の星がブラックホールになった場合は観測が難しいのです。岡先生は、そのようなブラックホールを「野良ブラックホール」とおっしゃいますが、そんな野良ブラックホールを見つける方法についても、本講義で解説くださっています。
さらに岡先生は、なぜ銀河の中心には超大質量ブラックホールがあると考えられるのかについても、お話しくださいます。まだ、さまざまな説が唱えられていて確定できていない状況ですが、仮説に基づいて研究を進めていく姿を知ることができるお話です。
岡先生は最後に、宇宙を研究する学者の動機についても語っておられます。その答えは、何かを発見したときに、「これを知っているのは、今この地球上で自分だけなんじゃないか」という感覚を持てるから。それがたまらなく「胸熱」なのだそうです。
「知の地平線の拡大」が人間にとって大いなる喜びであることが伝わってくる講義です。多くの美しいビジュアル資料とともにご解説いただいていますので、最新の宇宙論への理解を深めつつ、星や銀河の世界へのロマンも感じていただけること、うけあいです。
(※アドレス再掲)
◆岡朋治:ブラックホールとは何か(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2557&referer=push_mm_rcm2
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☆今週のひと言メッセージ
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「『論語』の中に「徳は孤ならず必ず隣あり」という言葉があります。」
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3234&referer=push_mm_hitokoto
伊能忠敬が考えた「50歳からの目標」とは?
童門冬二(作家)
『論語』の中に「徳は孤ならず必ず隣あり」という言葉があります。
自分で「こういうようなことをしましたよ」と言わなくても、人のためになることをしていれば、黙っていても隣人というか慕う人が次々と出てくるということで、彼の場合はその典型じゃないですかね。
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今週の人気講義
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中西輝政(京都大学名誉教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3634&referer=push_mm_rank
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之(東洋大学文学部史学科非常勤講師/文学博士)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3477&referer=push_mm_rank
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頼住光子(東京大学大学院人文科学研究科・文学部心理学研究室教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3633&referer=push_mm_rank
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納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3570&referer=push_mm_rank
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https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3675&referer=push_mm_rank
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編集後記
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編集部の加藤です。今回のメルマガ、いかがでしたか。
さて本日、吉田正紀先生(元海上自衛隊佐世保地方総監)の「米国の対中政策~戦略の現状と課題」シリーズが配信開始となりました。
こちらは今月の特集「米中対立と2020年アメリカ大統領選の行方」でも取り上げている講義で、今週と来週(火曜日)で3話ずつ計6話を一気に配信となります。
吉田先生の講義は2018年6月以来、2年4か月ぶりの配信となりますが、これまで同様タイムリーで密度の濃い内容で、アメリカ大統領選挙を来月に控えた今こそ聞くべき講義です。ぜひシリーズを通してご視聴ください。
<ご紹介した講義シリーズはこちら>
吉田正紀:米国の対中政策~戦略の現状と課題(全6話)
(1)トランプ政権の政治構造の変遷
“トランプ党”が強固になった中間選挙後の政治構造に注目
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=3701&referer=push_mm_edt
<今月の特集はこちらからアクセスできます>
「米中対立と2020年アメリカ大統領選の行方」
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=102&referer=push_mm_edt
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