「ホメロス叙事詩」を読むために
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ホメロスの『オデュッセイア』が描く苦難と誘惑の冒険譚
「ホメロス叙事詩」を読むために(5)オデュッセウスの冒険
納富信留(東京大学大学院人文社会系研究科教授)
ホメロスの二つ目の叙事詩『オデュッセイア』は、トロイア戦争終結後、10年間さまよい続ける英雄オデュッセウスの旅を描いている。前半では怪物や魔女の誘惑と闘争が語られ、後半は故郷に帰ってからの悶着が復讐劇をなす。喜劇も殺戮場面もある、よりエンターテインメント性に際立った作品といえよう。(全9話中第7話)
時間:14分48秒
収録日:2020年7月3日
追加日:2020年10月11日
≪全文≫

●『オデュッセイア』を読む


 ホメロスの叙事詩は『イリアス』『オデュッセイア』の二つがあります。『イリアス』は、アキレウスの怒りというものを歌う、トロイア戦争10年目の最後の場面に集中して、人間の生き死にを描いた悲劇でした。もう一つの『オデュッセイア』は、もう少し楽しい作品で、あえていえば喜劇のような要素を持っています。

 『イリアス』より少しサイズは小さいですが、全24巻からなる壮大な叙事詩『オデュッセイア』という作品を見れば、何よりも物語としてのエンターテインメント性が際立ちます。非常にさまざまな仕掛けと印象的な場面を連ねていて、どの場面をとっても非常に面白いと思います。

 また、全体の構成がかなり凝っていると私は思います。前半部と後半部では、場面がだいぶ違います。最初の12巻を中心にした前半部では、オデュッセウスという英雄のいわば冒険物語が繰り広げられます。未知の国を経めぐって、怪物や魔女などと渡り合うというおとぎ話のようなお話で、これはこれで非常に面白い。後半、オデュッセウスが自分の故郷に戻ってからは徐々に仕掛けを増やし、最後は自分を裏切った連中を一挙に殺してしまうという復讐劇になります。後半は、どちらかというとサスペンスもののような感じです。

 そういった意味でいうと長く大きな作品なのですが、少し趣向の違う場面があるのと、それらが織り合わされて一つの物語になるというのが特徴となっています。一番最後で前半と後半が全てまとまって、一つの大団円として決着につながるわけです。


●戦争には勝ったが幸せになれない英雄


 この話はトロイア戦争が終わった後のことです。トロイアが10年たって陥落します。アキレウスは、戦争終結の一歩手前で死んでしまい、最後にトロイアを陥落させるのはオデュッセウスという英雄の知恵によるものです。それが有名な「トロイアの木馬」です。

 「オデュッセウス(Odysseus)」が人の名前で、「オデュッセイア(Odysseia)」が作品の名前です。オデュッセウスはもちろん力も強いのですが、主に知恵で人々に貢献しました。「トロイアの木馬」では、木馬の中に人が潜み、内側から城を落とそうという策略が見事にはまり、最後トロイアは陥落します。

 プリアモスをはじめトロイア方の人たちは、死んだり、奴隷として連れ去られるなど、悲惨な運命を迎えます。戦争の常ですね...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
百人一首の和歌(1)謎の多い『百人一首』
『百人一首』の歌が選ばれた理由とは?今も残る3つの謎
渡部泰明
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子