編集長が語る!講義の見どころ
ChatGPT生みの親=サム・アルトマンの成功の秘密/桑原晃弥先生【テンミニッツTV】

2024/06/18

いつもありがとうございます。テンミニッツTV編集長の川上達史です。

「どうして、アメリカでは有望な企業が、どんどんスタートアップしていくのだろう? 日本と何が違うのだろう?」。そのような疑問を抱いたことがある方も多いのではないかと思います。

実は調べていくと、そこには色々な秘密があることが見えてきます。しかも、起業する人たちに求められる心構えは、案外、昭和の日本企業の精神に共通するところもあって……。

本日は、そのような観点をふまえつつ、OpenAIの最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマンについて、桑原晃弥先生にご解説いただいた講義を紹介いたします。

OpenAIといえば、皆さんご存知のように生成AIで世界に大衝撃を与えたChatGPTを開発し、展開している企業です。なぜ、このような企業が彗星のごとく現れたのでしょうか。そして、サム・アルトマンの実像とは?

◆桑原晃弥:サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(全8話)
(1)ChatGPT生みの親の半生
OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5342&referer=push_mm_rcm1

さて、サム・アルトマンの成功を語るうえ欠かせないのが、Yコンビネーターという「起業養成スクール」の存在です。単なる「スクール」ではなく、有望なプランにはスタートアップ資金を支援したり、様々な人脈・ベンチャーキャピタルとつないだりします。

このYコンビネーターから、DropboxやAirbnbをはじめ、様々な企業が育っていますが、実はサム・アルトマンはこのプログラムの1期生であり、しかも2014年~2019年まではその代表を務めていました。

このYコンビネーターでは、どのようなことが教えられていたのか……を見る前に、サム・アルトマンについて、生涯のあらましをおさらいしておきましょう。

サム・アルトマンは、1985年生まれ。8歳のときに初めてAppleのコンピュータを親から買ってもらい(マッキントッシュ)、それを使って、さまざまなサービスをつくって楽しんでいたといいます。

2004年にスタンフォード大学に入学しますが、大学2年のときにLooptという会社を起業し、中退します。これは位置情報を使ったサービスだったのですが、いろいろ苦労して、2012年に4000万ドルで売却しています。

そんなサム・アルトマンがYコンビネーターの第1期の夏季創業者プログラムを受講したのが2005年、Looptを創業した頃のことでした。ここで学んだことをLooptの起業経験で実地に試すことができたこともあり、2011年にはYコンビネーターの非常勤パートナーになります。

Yコンビネーターをつくったのは、ポール・グレアムでした。彼はコーネル大学を経て、ハーバード大学でコンピュータの博士号を取得し、1995年にヴィアウェブを創業します。これはスモール・ビジネス向けのオンラインストアの先駆けで、1998年にYahoo!が5000万ドルで買収し、ヤフー・ストアの原型となりました。

ポール・グレアムはこの3年間の経験を基にYコンビネーターを設立します。「Yコンビネーターに集まる創業者たちが、自分たちがおかしたような失敗の階段を飛ばして先に進めるなら、誰にとっても好都合なはずだ」というのが、設立の動機でした。

Yコンビネーターが創業者の卵たちに与える大きなものは、「多くの起業家が集結する場所」です。個々の起業家精神よりも、起業家たちが実際に集まって相談したり考えたりできるクラスタ的な場が重要だということです。

また創業のための少しの資金も与えます。見込みがあるプランには資金を提供しますが、スタート時点では必要な1万ドルや2万ドルといった微々たるお金とのこと。そのうえで実践的なアドバイスを与えていくのです。

では、どのようなことを教えているのか。桑原先生は次々に挙げていきます。

◎「何となく好きになってくれる」100万人より、「熱烈に愛してくれる」100人のファンを大切にする。

◎とにかく、ユーザーに聞く。考えるより、ユーザーに聞きに行け。

◎優秀な人間より、厚顔無恥で、好奇心旺盛で、ダメな奴が成功する。

これらを受けて、サム・アルトマンも「スタートアップの成功の秘訣」を次のように述べているといいます。

◎成功している企業は素晴らしいアイデアがあったからだが、それは誰も思いつかなかったアイデアとか、みんなが絶賛するアイデアとは限らない。既存サービスへの強い不満と、もっといいものをつくりたいという思いが大切。

◎成功するアイデアは「馬鹿げたアイデア」であることも多い。アイデアを否定されたら喜ぼう。競合が減る。

◎優れたプロダクトができるまでは他のことはすべて忘れて、ただひたすらにプロダクトづくりに邁進すること。

◎最も大切なのは、ユーザーに支持されるものをつくること。ユーザーと話しながら優れたプロダクトをつくりあげる。多くのユーザーから「まぁまぁ、いいな」といわれるものよりも、少ない人数に「心から愛されるもの」を。シンプル。細部へのこだわり。ユーザーの声を聞きながら改良しつづける。

◎Yコンビネーターは起業家が1人のときは出資しないことがほとんどです。仲間がいなければ、一緒に起業してくれる人を探すようにアドバイスするほどです。

◎クラスで最も成功するのは、最も頭の良い人間でも、人気者でもなく、実行力のある者です。
「アイデア×プロダクト×チーム×実行力×運=結果」。

◎単にお金持ちになりたいだけなら、スタートアップより楽な方法がある。最初はどんなに頑張っても「ラーメンが食える程度の収益」しか期待できない以上、「絶対にこれをやりたい」「絶対にこの問題を解決したい」という情熱が不可欠。

これらの詳細は、ぜひ講義本編での桑原先生のご解説をお聞きください。しかし、いずれもスマートということからは程遠いメッセージばかりです。ある意味では昭和以前の日本の創業者たちの熱意やひたむきさや泥臭さにも通じるものがあります。

本当に大切なことは共通しているということなのでしょう。逆にいえば、日本において「したり顔」で語られるアメリカ型経営なるものが、いかに一面的なものかも教えてくれます。

その後、サム・アルトマンはイーロン・マスクやピーター・ティール、リード・ホフマンらと共にOpenAIを設立するわけです。Yコンビネーターのような場を通じて、錚々たる経営者のインナーともいうべき人脈とつながり、相互の関連のなかで動いているかが伝わってきます。

しかもその後、イーロン・マスクとはケンカ別れをして、さらにそこにマイクロソフト社の中興の祖といわれるサティア・ナデラが登場し……と濃厚な人間模様が描かれますが、そこはぜひ講義本編をご覧ください。

起業の秘訣から、現在のアメリカのAIをめぐる人間関係まで、多くの知見を得られる講義です。


(※アドレス再掲)
◆桑原晃弥:サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5342&referer=push_mm_rcm2


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