編集長が語る!講義の見どころ
《今を知る》春に「いのち」を考える/長谷川眞理子先生&特集【テンミニッツ・アカデミー】
2026/03/31
いつもありがとうございます。テンミニッツ・アカデミー編集長の川上達史です。
花が咲き、木々が芽吹く春。春は希望の季節であり、また生命の素晴らしさをつくづく痛感する季節でもあります。
東京でも桜が満開となり、爛漫の春を迎えています。
この春の日に、生命について科学的に学べたり、哲学的・芸術的に深く考えたりすることができる講義をピックアップしてみました。不思議な命、はかない命、わが体内のミクロな命、幾度も再生していく命、命を詠みあげる歌……。
さらに先日(3月25日)、「マウスでクローンを繰り返したところ、58世代目で限界が来た」という研究結果も報道されました。そのような研究を知ると、「命の有難さ」があらためて痛感されます。
ぜひこの季節に、さまざまな角度から生命の本質や、その循環に想いを巡らせてみてはいかがでしょうか?
■今を知る講義まとめ:春に「いのち」を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=284&referer=push_mm_feat
◆長谷川眞理子先生:なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4130&referer=push_mm_rcm1
◆水島昇先生:ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5283&referer=push_mm_rcm2
◆浅島誠先生:地球上におけるヒトの歴史と生命科学の発展
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=2449&referer=push_mm_rcm3
◆鎌田東二先生:がんの告知を受けて大国主神のケアと自己回復力に共感した
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5170&referer=push_mm_rcm4
◆渡部泰明先生:やまとうたは人の心を種として…「託す」表現の神秘的な力
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=5144&referer=push_mm_rcm5
■ピックアップ講義:性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(長谷川眞理子先生)
このメールの冒頭で触れた「マウスでクローンを繰り返したところ、58世代目で限界が来た」という研究結果は、山梨大学(若山照彦教授)や放射線影響研究所のチームが3月24日付で、英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に発表したものです。
これは、1匹の雌(メス)のマウスから「卵丘細胞」(卵子の成長を助ける体細胞)を採取し、それを核を抜いた別のマウスの卵子に移植。その卵子を仮親に受胎させてクローンマウスを誕生させることを繰り返していく研究です。2005年から20年にわたって続けられ、クローンマウスはすべて雌で合計1206匹が生まれましたが、58世代目で生まれた5匹は、すべて翌日に死んでしまったというのです。
最初のクローン成功率は7.4%でしたが、そこから26世代目(15.5%)まで成功率が上昇したものの、その後は低下してしまったそう。成功率が低下した27世代目以降は有害な突然変異が増えてしまいました。
男性と女性から生まれる自然交配では、精子や卵子の形成過程で遺伝子の組み換えが起き、さらに受精も行なわれます。それと比べると、明らかにクローン技術による有害な突然変異が増えて、生存できないほどに蓄積してしまったのです。
このような研究を知ると、あらためて「命とは何だろうか」という疑問や感慨が湧いてきます。
長谷川眞理子先生(総合研究大学院大学名誉教授)は「実は『性』があるのは不思議なことで、いくつもの謎がある」とおっしゃいます。本講義を学ぶだけで生命の不思議に次々と突き当たり、その謎についてどんどん知りたくなってきます。
◆長谷川眞理子先生:性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(全4話)
(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4130&referer=push_mm_rcm6
長谷川先生は、講義の冒頭でこうおっしゃいます。
《今は知識を力にいろいろと社会を変えていこうということで、知識が重要になった知識基盤社会ですから、こういう知識は皆さんが共有して、ただのヘンな話ということでは終わらせないようにしたいと思います》
まさにこの長谷川先生のご指摘どおり、本講義は「性」の複雑なメカニズムを知ることができる、まことに稀有な優れものです。
長谷川先生のお話は、「なぜ雄(オス)と雌(メス)という性があるのか」という問題提起から始まります。
生物には、「無性繁殖(分裂したり芽が出たりして、性を介さないで繁殖すること)」や「単為繁殖(雄がおらず雌だけで、受精しない卵を産んで繁殖すること)」などがあって、それはそれでうまくいっているのに、なぜ雄と雌という「性」が必要なのでしょうか。
しかも、数学的に解析すると、無性生殖にくらべて、有性生殖は効率が悪い。自分の繁殖相手を、個体のなかに半分しかいない別の性から探さなくてはならないからです。
にもかかわらず、なぜ有性生殖をするのか。
これについて、長谷川先生は「多様性の創出こそが大事だった」と指摘されます。自分の遺伝子をそのまま複製して増えていくのでは、遺伝子の状態が全く同じものがずっといるだけになってしまう。そうすると寄生者など外部のいろいろなリスクに対応できないからだというのです。
では、なぜ雄と雌が必要になるのか。
それについて長谷川先生は、「卵と精子では、求められるものが違うからだ」とおっしゃいます。また、「雌雄同体」であったり「性転換」をしたりする動物よりも、「雄は雄、雌は雌」という生物が多い理由についてもご解説くださいます。ここはぜひ講義の第1話をご覧ください。
さらに長谷川先生のお話は、どのようなメカニズムで「雄」「雌」に分かれていくのかに進んでいきます。哺乳類の場合は、もともとのデフォルトは「雌」です。それがY染色体上の「SRY遺伝子」によって「雄」に作り替えられていくのです。
SRY遺伝子がスイッチオンになると、テストステロンという男性ホルモンが分泌され、それがいろいろなところに働きかけて、身体や脳が「雄」化されます。このときに卵巣も精巣に作り替えられ、外性器も変わり、性自認も雄となり、性的指向も変化します。
これはとても複雑な過程ですが、長谷川先生の講座を受講すると、その流れがとてもよくわかります。そして、この複雑な過程のなかで、確率的には必ず「性の不一致」という問題も出てくることも理解できるようになります。
いわば「性の不一致」は、精妙で神秘的な性のあり方のなかで「必然」ともいえる出来事なのです。
これまで宗教的に同性愛に対して厳しい目を向ける文化も各地にありました。かつてキリスト教国の多くでもそうでしたし、イスラム教国の多くもそうでした。日本の場合、文化や風習的には同性愛に対する壁はそうとう低かったと思われますが、「家制度」の枠組みの表面にはなかなか組み入れられるものではありませんでした。
そのような宗教的、社会制度的な背景を重んじつつ、しかし、生物学的な知識も含めて考えていく必要があることが、長谷川先生の本講座を受講すると、とてもよくわかります。
長谷川先生がおっしゃるように、「正しい知識を力にして、考えていくこと」の大切さがよくわかる講座です。ぜひご覧ください。
(アドレス再掲)
■今を知る講義まとめ:春に「いのち」を考える
https://10mtv.jp/pc/feature/detail.php?id=284&referer=push_mm_feat
◆長谷川眞理子先生:性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)
https://10mtv.jp/pc/content/detail.php?movie_id=4130&referer=push_mm_rcm7
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テンミニッツ・アカデミー編集部