10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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新興国に流れた資金が逆流し始めていることが懸念材料

BRICsの幻想・中国の勘違い

伊藤元重
東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授
情報・テキスト
東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏が、世界的金融不安をBRICsの観点から解説する。「これからはBRICsが世界経済を引っ張る」「中国経済は今後も成長し続ける」――多くの予想が浮かんでは消えてきた中、世界情勢と金融事情を俯瞰し続けてきた伊藤氏による必聴必見の経済論。
時間:12:32
収録日:2015/09/17
追加日:2015/11/05
東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏が、世界的金融不安をBRICsの観点から解説する。「これからはBRICsが世界経済を引っ張る」「中国経済は今後も成長し続ける」――多くの予想が浮かんでは消えてきた中、世界情勢と金融事情を俯瞰し続けてきた伊藤氏による必聴必見の経済論。
時間:12:32
収録日:2015/09/17
追加日:2015/11/05
≪全文≫

●中国から新興国全体へ-広がる金融危機


 中国発の今のこの金融の流れというものを、ある人は「グローバルな危機」と呼んでいるわけですが、これをどう見るかということを、前回は少し別の観点からお話ししたのですけれど、もう一つぜひ申し上げたいことがあるのです。

 何かというと、これは中国だけの問題ではないということを申し上げたいわけです。それは要するに、新興国経済全体に対するある種の信頼や、あるいはそのマーケットの見方がいま大きく転換しつつあって、ここをどう見るかということだろうと思うのです。


●BRICs注目のきっかけは9.11


 ご存知のように、2001年にゴールドマンサックスのジム・オニールという人が中心になって、「BRICs」という言葉をつくりました。これは、ブラジルのBと、ロシアのR、インドのIと、中国、チャイナのCなのです。そして、これはどういうメッセージかというと、これからはBRICsの時代だ。その4カ国だけではなくて、それに加えてアルゼンチンや、あるいはトルコや南アフリカ、インドネシアなども含めた新興国が世界経済を非常に引っ張っていく、というような議論だったと思います。

 実はオニールさんとは、ゴールドマンサックスの日本でのセミナーの時に一緒に対談をしたことがあるものですから、数年前に彼とお会いした時に、このBRICsとはどんな経緯でこういうことを言い出したのかという話を個人的に聞いたことがあります。その時に彼が言ったのは、2001年9月11日にアメリカのニューヨークとワシントンで大きなテロがあって、なんとなく世の中の雰囲気はテロだけではないけれど、グローバル経済、あるいはアメリカ経済というのは、やはりこれから非常に厳しいのではないだろうかという悲観論が非常に強かったが、彼らはそう考えなかった、ということです。

 彼らはどう考えたかというと、やはりこれからは新興国がガンガン伸びてきて、これが世界経済を引っ張っていくということでした。したがって、新興国に注目すべきだし、グローバル経済にとっても非常に楽観していいというメッセージを世の中に出してきたのです。それが、結果的にBRICsという言葉にもつながったのだろうと思います。


●BRICsの経済成長をスパンを変えて見る


 結果論から見ると、このBRICsという言い方は非常に成功しました。例えば、今の新興国が世界全体の経済に占めるシェアというのを見てみると、ある本に書いてあった数字をそのまま引用しますけれども、2000年には大体世界全体の20パーセントぐらいが新興国のシェアだったのが、その8年後の2007年には、約34パーセントまで膨れ上がっている。ものすごい勢いで新興国が膨れ上がっていて、そういう意味では、BRICsがこれから世界を引っ張るという、いわばキャッチフレーズは、非常に予想が当たったわけです。

 ただ、リーマンショックあたりからこのゴールドマンサックスが出してきたBRICsという読み方に対して、少し懐疑的な見方をする人がたくさん出てきました。特によく注目された議論は、モルガンスタンレーのやはり有名なアナリストで、ルチア・シャーマというインド系のエコノミストが書いた「ブレイクアウト・ネーションズ」というものです。ブレイクアウト・ネーションズとは、要するに、これから出てくる企業、国というものを指しています。そういう本がもちろん出ているし(注:『ブレイクアウト・ネーションズ』早川書房)私はその本だ...
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