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日本国民の約4分の1がこれで悩んでいる

“膝の痛みの名医”が語る(1)変形性膝関節症とは

黒澤尚
順天堂大学医学部整形外科学 特任教授
情報・テキスト
今や全国2800万人と言われる「変形性膝関節症」。痛み止めによる対症療法が一般的とされる中、根本的な改善や回復を目指す独自の運動療法を、30年にわたって提唱してきた医師がいる。順天堂大学医学部整形外科学特任教授・黒澤尚氏その人だ。“膝の痛みの名医”が語る「膝」の特効薬とは。(前編)
時間:10:17
収録日:2015/09/14
追加日:2015/11/19
≪全文≫

●要介護者の15~20パーセントは骨・関節が原因


 はじめまして。順天堂大学医学部の黒澤です。専門は整形外科で、関節の患者さんを主に治療しています。

 ご存知のように、現代は高齢社会になっており、日本人の平均寿命(2012年)は男性が79歳、女性が86歳と、たいへん長寿の国になっています。それは大変喜ばしいことですが、一方では、長寿のために体のあちこちの具合が悪くなって、せっかくの長寿の人生を享受できないという人が、実は大勢いるのです。厚生労働省の調べでは、男性で約7年、女性で約8年~9年、人生の終末期に思うように動けなくなり、せっかくの人生を享受できない人がいるとされています。

 そのように長寿になって体の調子が悪くなり、思うように生活ができなくなる原因にはいろいろありますが、そうした場合の一番の典型は「介護」になります。介護を必要とする人は非常に大勢いて、統計によると約400万人となっています。

 介護の原因となる疾患は、厚労省の調べによると、まず、皆さんよくご存知の認知症があります。次に、脳出血や脳梗塞など、いわゆる脳卒中の後遺症で動けなくなるケース、そしてその次に挙げられているのが、骨や関節の具合が悪くなって思うような生活ができなくなるケースです。そういう人が約15~20パーセント前後だと、統計ではなっています。


●全国2800万人が変形性膝関節症


 私が日々診療でお見受けするのは、そういう加齢のために背骨などの骨が弱くなって骨折した人や、あるいは60年、70年、80年と生きてきたため、関節にだんだん自然に故障が起きてきて、痛くて思うように動けなくなった、そういう人を見ています。

 その典型的なものが、関節に関して言えば、「変形性膝関節症」です。少し専門的になりますが、人間の膝関節の上の骨と下の骨のすり合わせ面には、軟骨があります。これが上下の骨のクッション役となり、また、表面が非常に滑らかで摩擦なく動けるようにしてくれています。こうした動物の軟骨同士の摩擦係数は、非常に低いです。氷の上を滑るスケートエッジの工学者が非常に工夫して、研究して、まねをしようと思ってもできないような、非常に低い摩擦係数になっています。軟骨はそういう大事なものです。

 軟骨のもう一つの特徴は、加齢とともにだんだんすり減ってきてしまうことです。なぜかというと、骨とは違って、再生能力がゼロだからです。そうすると、50歳くらいになると、人生50年を生きてきたために、表面から少しずつ物理的に破綻を来してすり減ってくることがあります。すると、関節の表面の摩擦係数が非常に増えて、ザラザラ、ゴツゴツとなってきて、そしてそれが原因で炎症が起きます。これが「変形性関節症」といわれるものです。

 わが国では、第二次世界大戦直後には50歳前後だった平均寿命(1947年男性50歳・女性53歳)が、現代では、先ほども話したように、急速に長寿化が進んでいます。こうした長寿社会化とともに変形性膝関節症の発生率は当然のこととして高くなり、現在わが国では2800万人の変形性膝関節症の人がいると言われています。


●原因療法はなく、痛み止めで一時しのぎ


 一般に言う病気の「治療」には、原因を治す治療法というものはほとんどありません。広く言って、患者さんは医学の進歩によって大きな恩恵を受けていますが、実は感染症以外の病気で原因を治す治療法はないのです。これを言うと皆さん驚かれるのですが、皆さん...
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