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東京パラリンピックまであと4年、支援体制の整備が急務

義肢装具士の世界と義足作り(2)リハビリと支援の充実

臼井二美男
義肢装具士/切断者スポーツクラブ「ヘルス・エンジェルス」代表
情報・テキスト
義足の製作で最も苦労するのは、義足と足をつなぐ連結部の調整だ。生身の足は、その特徴が千差万別だし、状態も変化する。その個性や変化を見越し、さらに知識の提供やリハビリの実施などを経て初めて、義足での歩行が可能になる。義肢製作の現場に立ち続けてきた義肢装具士・臼井二美男氏だからこそ語れる、義足歩行の難しさとは何か。(全2話中第2話)
時間:10:56
収録日:2016/07/19
追加日:2016/09/02
≪全文≫

●「痩せていく足」を見越して調整する苦労


 義足づくりで一番苦労するのは、ソケットの適合技術です。いくらシリコンを履いて、間にクッションがあるといっても、大切なのはやはりソケットです。それが合っていないと、ユルユルだったりきつかったりして、本当に使いにくい。また、ある程度合っていたとしても、例えば、腓骨という骨がありますが、その腓骨と骨の先端、脛骨が当たって、痛いのです。つまり体重をかけて痛ければ、一歩も歩けません。

 そういう意味で、ソケットの適合が一番大事です。体重が残された足に最初に伝わるところですから、そこが痛いと歩けません。一人一人の足の型を石膏で取り、その型をもとに、手作業でそこに形を出しています。

 石膏はちょうど、こちらにある義足と同じです。これは左の下腿切断ですが、骨の部分が当たらないように逃がしてあります。後から、骨の先や腓骨の部分を盛ります。これをもとに形を作ります。石膏の盛り方や削り方が合っていないと、中が緩かったり、ここ(腓骨)が当たってしまったりします。そのあたりをうまく作る技術がやはり難しいのです。

 特に義足は、履き始めると足が少しずつ痩せていきます。ですから、最初に履いたときはかなり良い感触でも、2カ月後、3カ月後のことも考えて作るということをしなければ、長く履いていられません。人間の足は変化しますので、義足を履き続けていると少しずつ痩せていくのです。ですから、ソケットの中が少し痩せていくことを前提に、数カ月後ないし半年後のことを考えて作るのです。そのように、一人一人に合わせた修正の仕方、作り方が難しいのです。

 見た目でいえば、世の中に似たような足を持つ人はいます。ここにある義足の形をした足の人も確かにいます。しかし見た目は似ているけれども、中の骨の太さや、残されている骨の長さなどは皆、違います。

 それから筋肉です。触った感じですごく柔らかい人もいますし、筋肉が張っている人もいます。見た目は似ていても、触るとそれぞれ皆さん違うことが分かります。そこまで含め、個人個人に合わせたソケットの作り方は、経験や想像力が不足しているとうまくできません。そうでなければ、なかなか長く履ける義足は作れないのです。


●義足だけあっても歩けるようにはならない


 例えば、100万円の義足だとしても、付けてすぐは痛くて一歩も歩けません。そこでもう一つ大事になってくるのは、リハビリテーションです。足を切断して最初に行うのがリハビリなのです。事故で入院した人が、3カ月や4カ月の間、ベッドで寝ていると、その間に全身の筋力は落ちてしまいます。筋力が落ちるのは足だけではありません。大腿部も落ちれば、股関節も落ちるし、腹筋も落ちます。そうなると、義足を制御するための筋力を、新たに作らなければいけません。そのためのリハビリテーションなのです。

 (義肢装具サポートセンターには)理学療法士とリハビリテーション医がいて、リハビリテーション医の指示の下、理学療法士がまず(一人一人に合った)義足の履き方から考えます。それから長さや角度、ソケットがきちんと合っているかどうか、その適合などを見ます。そうして、義足の履き方や取り方の練習方法に加え、全体的な各パーツの構成などから例えば、おじいさんやおばあさんにはできるだけ軽くて安定感のあるものにしようといったことを決定していきます。さらに今度は、股関節のストレッチです。硬くなった体のストレッチをしたり、立つときの平衡感覚を指導したりします。そういうことを総合的に教えて、やっと歩けるようになります。それがリハビリテーションです。

 当たり前のことですが、義足作りでは、そういうリハビリテーションがないと、せっかく作ってもしっかり履いて歩けるようになりません。義足だけ作って、「はい、どうぞ」と渡しても歩けないのです。義足を履くための筋力や知識が必要で、そのノウハウを知らなければなりません。さらに総合的な身体バランスも重要です。そういうことを指導して教えるのがリハビリテーションで、僕たち(義肢装具士)はそのうちのパラメディカルという部分のスタッフの一人として関わっています。


●切断者でもスポーツに取り組める体制整備を


 厚生労働省が定めた耐用年数があります。更生用の部品はソケットと足部、チューブなどですが、この中で一番長持ちするのがチューブで、耐用年数は5年間です。足部は2年といった基準が一応あり、2年たったら、ある程度劣化します。例えば、ここ(足の裏)にひびが入ってくるので、だいたい2年たったら交換してもいいですよ、パイプならば5年は持ちますよ、ということです。丸ごと作るとしたら、5年ほどで新たに作り変えることができるようになるのです。その間、例えば少し太ってしま...
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