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副業や兼業がベンチャーの可能性を生む

「働き方改革」の課題と展望(6)働き方を成長につなげる

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
情報・テキスト
技術革新によって、時間と空間にとらわれない働き方が増えれば、副業や兼業も容易になる。それはやがて、転職のハードルを下げ、創造的なベンチャービジネスの可能性を拡げるだろう。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏がこのように展望する「働き方改革」は、どのように日本を変えていくだろうか。(全6話中第6話)
時間:06:31
収録日:2017/02/21
追加日:2017/04/01
≪全文≫

●副業の拡大は、転職のハードルを下げる


 やや中長期的な観点で考えると、副業とか兼業の重要性は何なのか。それは転職やスキルチェンジの良い橋渡しになってくれることだと思います。

 環境変化が激しいと、働く場所を変えていったり、自分のキャリアを変えていったりすることがどうしても必要になります。しかし、それが転職を伴うとなるとハードルが高くて、特に今、やっている仕事がそれなりに順調だとすると、それをやめて、やめて別のとこに移るのは、結構リスクが高い。場合によると失敗してしまうかもしれないですし、自分に本当に向いているかどうかも分からないという課題もあるので、どうしても躊躇してしまい、方向転換ができない、ということになります。

 そこを、例えば、自分は可能性があるのではないかと思っている領域から、兼業や副業という形でやってみるのです。そうすれば、「お試し」をすることができる、あるいはその仕事をするのに必要なスキルを学んでいくことができます。最初は少し軽く足を出してみて、うまくいってきたら、だんだんそちらに重心を移していき、やがて大きく伸びていくのであれば、そちらに転職をする。こうすれば、リスクを小さく会社を変えたり、仕事を変えたりすることができるでしょう。


●多様な副業で、真の「働きがい」を見つける


 今の日本でなかなか転職に踏み出せないのは、やはりそうしたときのリスクが怖いからです。しかし今、言ったような形でお試しができれば、もう少しスムーズにいろいろな職に変わっていけるのではないでしょうか。

 自分にとって働きがいのある場所を見つけていくことは、本当に大事なことです。とはいえ、人間はそんなにあちこちで働くことはできません。つまり、たいていは1社か2社ぐらいの経験しかないのです。そうすると、あらためて振り返ったときに、この場所が一番、自分にとって合った仕事だったのか、自分に合った会社だったのかということが分からないまま、一生を終わっていく人は圧倒的に多いと思います。もちろん10も20も仕事はできないかもしれませんが、いくつかの仕事をやるということであれば、副業を生かしていくことでそれが可能になってくるのではないかと思います。

 もう一つは、単に新たな会社や業種に移るだけではなく、大企業に勤めながらベンチャーをやってみるといったことも可能になってくるでしょう。いきなり大会社を辞めてベンチャーをやろうとすると、リスクはとても大きいのでなかなか踏み出せません。しかし、大会社に勤めながらベンチャーをやれば、リスクはかなり軽減されるでしょう。


●多様な副業がベンチャーを叢生させる


 日本で今、必要とされる生産性向上の話をずっとしてきました。生産性を上げていくには、働いている側(従業員)がスキルをアップさせていくことももちろん重要なのですが、新しいアイデアや新しい技術を持った会社が立ち上がってくることも、経済全体から考えるととても重要なことです。そういう会社がたくさん出てこないと、やはり経済は伸びていかないのです。もちろん全部が成功するわけではないですし、いろいろと失敗する会社も多いのですが、可能性のあるベンチャーがいっぱい出てくることが、広い意味での働き方、充実した働き方を実現させる上で、とても重要なことだと思います。

 そのようなベンチャーは、どうしたら出てくるのか。大会社の人も含めて、みんなが一斉に転職してベンチャーをやりましょうというのは現実的ではありません。大会社にいながら、少しずつベンチャーをやってみて、それがうまくいけばそのベンチャーを本業として回していく。こうすれば、より充実した働き方ができるだろうということです。

 今は副業といっても、本業に影響を与えない範囲でやろうという話になっていますが、例えば今まで週5日フルタイムで働いていたものを週3日にする。そこでの給料は5分の3になりますが、その5分の3の給料でいいから、残りの2日をベンチャーの開発に充てる。その分、給料は減ってしまいますが、それで最低限の生活ができるのであれば、それでも良いでしょうし、ベンチャーがうまくいけば、非常に高い報酬が得られるので、そういうリスクが取りやすくなるでしょう。こういう形で、ベンチャー企業を増やしていくことも、重要ではないかと思います。


●技術革新に合わせた法整備が必要だ


 技術革新が起こったことで可能になった、時間と空間にとらわれない働き方を進めていれば、今よりも充実した働き方がもっとできるようになるでしょう。ここで考えなければいけないのは、法律や制度の問題です。技術的には可能になっても、法律や制度が追いついていかないと、自由な働き方、時間と空間にとらわれない働き方はなかなかできません。

 つまり、せっかく可能になっ...
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