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内閣府と経産省で進めているマルチマテリアル化

マテリアル革命(3)革新的構造材料研究開発プロジェクト

岸輝雄
新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長/東京大学名誉教授/外務省参与
情報・テキスト
東京大学名誉教授で新構造材料技術研究組合(ISMA) 理事長の岸輝雄氏によるシリーズレクチャー「マテリアル革命」第3弾。今回は、岸氏がリーダーとなって進めている政府の二大プロジェクトについて語る。プロジェクトではいずれも軽量化が大きなテーマになっているが、そこで注目されているのは「マルチマテリアル化」だという。(全5話中第3話)
時間:08:47
収録日:2017/11/30
追加日:2018/04/02
≪全文≫

●現行二つの構造材料研究について


 ここから絵芝居になります。構造材料で今、何をやっているかについて、ザーッと絵が走りますから、リラックスして見ていただきたいと思います。

 大きなプロジェクトが二つ走っていますが、両方とも私がプロジェクトリーダーとなって今、進めているところです。



 構造材料は電池の性能を2倍にするということと、軽量化、つまり半分の重量にするというのはほとんど等価だということを頭に入れていただきたいと思います。

 そういうわけで、日本では今、軽量化ということに大きな動きがあります。例えば、内閣府です。これはCFRPとSiC/SiC(炭化ケイ素)のセラミックス複合材料、それから各種の耐熱合金の開発を行っています。また、経産省はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトで新しい炭素繊維、それから1.5ギガパスカルという超ハイテン鋼、そしてCFRP、非鉄金属の非常に強いものの開発を行っています。

 内閣府プロジェクトの目標は航空機、NEDOの目標は自動車です。内閣府の方では年40億円で5年、経産省の方では年40億円で10年の開発を行っています。ただ、内閣府プロジェクトの方でもあと5年続きそうなので、10年の大きなプロジェクトが今、動いているところです。


●マルチマテリアル化と今後の注目材料




 大事なのは「マルチマテリアル化」というところで、そのことを頭に入れてほしいと思います。複合材料は一つの材料にいろんな材料が組み合わさって入っているのですが、材料としては独立したものをつないで使おうということで、鉄鋼、マグネシウム材料、アルミ、それからCFRP、熱可塑、熱効果の材料を自動車の中に適宜配置するというのがマルチマテリアルです。これは今後一般のあらゆる機械にもマルチマテリアル化の動きは出てくると思います。



 そのとき、各材料で大事な特性は密度を考慮した比強度と、密度を考慮した横衝突に対する抵抗の比剛性になります。素晴らしくいいのがCFRPです。ですから、これに対する期待は強いのです。金属はマグネシウムが非常にいい材料で、鉄は(比強度も比剛性も)あまりいいとは言えないのですが、このところ非常に強い鉄が使えるようになってきています。また、延性がある材料の開発という非常に大きな挑戦をしています。この1.5ギガパスカルの鉄鋼を圧延でつくれるのは、先進国の中ではドイツも大体ギブアップしていますから、おそらく日本だけに残された新しい超々ハイテンだとご理解いただきたいと思います。

 それからCFRPは飛行機で使われているのですが、今のボーイング787で使われているのはほとんどCFRPなのです。ただ、次のボーイング777Xはまたアルミに戻っています。そのアルミをアルミリチウムという合金でアメリカが開発しているのですが、日本は古い7075(アルミニウム合金)の大開発を始めようということで、そこに今、進出しようと考えている次第です。

 スライドには値段が書いてありますが、CFRPはキロ当たり3,000円、マグネシウムは2,000円です。鉄は100円ですが、実際には70円ぐらいかもしれません。このコストが非常に大きな意味があるということに加えて、LCA(ライフサイクルアセスメント)とリサイクルが大きな課題です。



 こうした材料開発の一番の基本は、強度が強ければ延性(伸び)が悪くなるという意味で、二律背反をどう克服するかということです。

 ここで先ほどお話しした、割とうまく壊れて大きな破壊につながらないフェイルセーフな材料を作るということが非常に重要になってきます。そして、接合、つまりものをくっつける技術が大きな役割を担っています。


●内閣府の一大プロジェクトSIPにおける革新的構造材料




 NEDOプロジェクトですが、内閣府自らお金を使って初めてSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)という大きなプロジェクトを始めています。大きなプロジェクトであるということの良さは飛行機材料を機体からエンジンまで一連に遂行できるということです。そういう点で大きいプロジェクトの意味はあります。ここでは主に機体材料のコストを下げるということと、今あるCFRPで考えられる最高の強度と破壊靱性を得るということにまず力を入れています。また、チタン合金、ニッケル合金は大体200度~700度前後くらいの温度で用いますが、その材料を鍛造でつくるということに今、日本は邁進しています。

 新しい材料としては、チタンアルミ合金、(金属間化合物)とセラミックスの複合材にチャレンジしています。すでにこの材料は...
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